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第117話 朱に交われば赤くなる

「よし、じゃあ皆のMEP(メリットポイント)のパワーを結集してニトロチャージャーを7個だな」


 俺も欲しいタレントはあったが、ここはチーム戦術を優先するという事で。


「ありがとう、みんな!」

「あははは。まあ琴美ちゃんにはお世話になってるしねー」

「まま。たまにはことみーもはっちゃけるといいですし」


 という事で方針は決まったのだが、ニトロチャージャーの引き換えレートはどうだろうか。

 俺達は引き換えリストでニトロチャージャーの項目を確認し――


 ニトロチャージャー: 500ポイント


 む――これは……

 俺達のMEP(メリットポイント)については、元々ほぼ空だったのが今回のテストで補充されていた。

 前田さん784点、あきら704点、俺567点、矢野さん271点。

 合計で2300ちょい。

 一個500のニトロチャージャーを7個は3500必要。うん、足らん!


「足りねえし! 高いなこいつ――!」

「そんなあ……楽しみにしていたのに――」


 前田さんが肩を落とす。


「あら。でしたらわたくしのMEP(メリットポイント)もお使いになればよろしいのでは?」


 と、横から赤羽さんが言って来た。


「「「「えええええっ!?」」」」


 俺達の声が揃った。おおおおお! 天の助け! ありがてぇ、ありがてぇ!


「希美さん、本当にいいんですか!?」

「構いませんわ。その代わり交換条件ですわ。わたくし達のNPCもレベル上げに参加させて下さらないかしら? こちらもプライベートダンジョンは持っておりませんので、頭を悩ませておりましたの」


 ああ、赤羽さんの所もそんなに大きくないのか。

 まあ、あのお兄様がギルドマスターな以上、大手になりようもないか――みんなドン引きだもんな。

 赤羽さんの場合、単にそれだけじゃなくてあきらと一緒にやりたいって言うのもある気がするけどな。

 自分から言い出せないので、取引にかこつけて一緒に遊ぼうとしているな、これは。


「と言いつつ、半分はあきらと一緒に遊びたかった――と?」

「そうそ――って違いますわよ、馬鹿を仰らないで!」


 ああ赤くなった。今日もツンデレだわなー。思わず突っついてみたくなる。


「で、どうしますの!? やりますのやりませんの!?」

「わたしはやりたい! はいやる人挙手っ!」

「やるやる!」


 あきらに促されて俺は手を挙げる。


「はいっはいっはいっ!」


 前田さんが断るはずがなかった。


「やるけど一つだけ条件がありますし!」


 と、矢野さんだけ条件付き賛成だった。


「あら? 何ですの?」

「一緒にレベル上げはいいんだけど、その――申し訳ないけど兄貴同伴は勘弁して欲しいですし。ちょっと耐えられませんし」


 ああ、矢野さんダメそうだったもんなー。一番怯えてたよな。


「ああ――それは分かりました。問題ありませんわ」

「だったら全然オッケーですし!」


 話は纏まったな。これでレベル上げも上手く行くだろうか。

 と、俺はちょっと気にかかる事があり、小声で片岡に聞いてみた。

 さっきから黙って様子を見ているのだ。


「なあ片岡、お前はいいのか? きっとお前のMEP(メリットポイント)も入ってんだろ?」


 MEP(メリットポイント)を出す代わりにレベル上げを一緒にと赤羽さんは言うが、片岡のギルドは大手情報屋ギルドの知識の泉(ナリッジレイク)であって赤羽さんとは別だ。

 片岡のギルドのNPCはクジャータさんで、ギルドのプライベートダンジョンで修行しているだろう。

 つまり片岡には何のメリットも無いんだが……?


「ふっ。俺のものは希美様のもの。希美様のものは希美様のもの。俺の意志など必要ないんだぜ」

「いやまあお前がそれでいいならそれでいいけどさ」


 こいつに何言っても無駄だな! 放っておこう!

 俺達は全員分のMEP(メリットポイント)で、ニトロチャージャー7個をゲットした!

 これで8連装の常時ニトロが実現したわけだが――さてさてどうなるか楽しみだな。


「よし、じゃあ今日の放課後から合同レベル上げな!」


 俺達はそう約束し、学校の授業へと向かった。


 授業はつつがなく終了し、そして放課後――俺達はココールを連れて集合場所の飛空艇の桟橋に向かい、赤羽さんを待った。


「合同でレベル上げだコケな? 向こうの英雄候補は誰だコケ?」

「ああ。セルフィ・ミューズだぞ」


 英雄ドラフト会議では一番人気だったドラフト候補だ。

 確か初期でレベル60オーバーで、魔法も多数所持。

 設定的には、ミシュリア国に住むエルフ族長の娘だったか。

 金髪美少女エルフちゃんだった。

 俺達がココールを指名した後で引いたんだよなあ、お兄様が。

 使命がめっちゃ競合する中で見事に――あの時何とも言えない空気になったなあ。

 ココールも現場で見ていた。今回の合同レベル上げの相手がお兄様のギルドだとは言ってなかったから、分らなかったようだが。


「セルフィだったコケか!? 確か変な奴のギルドだったコケ。大丈夫コケか……?」

「ああ。ヤツはこないから大丈夫だ」

「だったら安心だコケな」


 ピーチサンダー号の甲板で俺達が話している背後から、赤羽さんの声がかかった。


「お待たせしましたわ。参りましょう」


 そして彼女が連れているのは――

 フルフェイスの鉄仮面に、クリムゾンレッドの小さなスカーフマフラーに――

 で、ででで出たー! ヤ、ヤツがやって来たんだ……!

 来ないって言ってたのにな――!


「うぎゃあああぁぁ! で、出たあああぁぁぁっ! ダメだった言いましたしぃぃぃぃっ!?」


 矢野さんが怯えて物陰に隠れてしまった。


「あ! お待ちになって――こちらはお兄様ではございませんわ。よく御覧になって!」


 そう言われて、その人物のキャラ名を見る――

 セルフィ・ミューズ。となっていた。


「……どうしてこうなった!?」


 俺は思わず声を上げていた。

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