第109話 持つべきものは頭脳担当
英雄候補の襲撃イベントがあって、一週間以上が過ぎた。
学校的にはの襲撃イベントの後は、すぐに定期テストに突入だった。
学年トップの景品であるマイ飛空艇と、出来る限りのMEPの獲得を目指し、俺達もガチンコで臨んだ結果が――今日これから分かる!
俺達は朝ログインして学園に移動すると、廊下に張り出された試験結果を早速チェックに向かった。
このゲームの世界でわざわざ廊下に紙で結果を張り出す意味は無いだろうが、これも風情ってやつだ。
ちなみに後からゲームのシステム情報画面で試験結果は確認できるそうだ。
今回のテストは八教科あったから、八百点満点。
学年末だったり学年が上がれば強化も増える。
そしてそれが喜ばれる。MEPが多くもらえるからな。
抜き打ちテストとかも発生すればそりゃ歓喜ものだ。
イコールMEPが貰えるレアイベントだからだ。
さて結果だが――
1位 前田琴美 784点
……
11位 赤羽希美 744点
……
28位 青柳あきら 704点
……
168位 高代蓮 567点
169位 片岡真一 566点
……
377位 矢野優奈 271点
「「「おおおおおおー!」」」
結果を見て俺とあきらと矢野さんは叫んでいた。
ナイスだ! これはもう流石の一言!
「ナイスことみー!」
「ありがてぇ……! やっぱ持つべきものは頭脳担当だな!」
「わたしダメだったから、助かったよー!」
あきらは風邪ひいて本調子じゃなかったんだよな。
何はともあれ、ギルドとして非常に助かる! マイ飛空艇を貰えるぜ!
「ええ――やったわ!」
前田さんも、満足そうにうなずいていた。
珍しく興奮気味に軽いガッツポーズまで出ている。
「きゅ~! しゅごい~! しゅごい~!」
リューも喜んで前田さんの周りをぐるぐるしていた。
「よし、胴上げしますし! 胴上げ!」
「えっ!? い、いいわよ恥ずかしいし――」
「いや! 優勝したら胴上げは基本だ!」
「たぶん野球界の基本の話だよね……まあいいけど!」
というわけで俺達三人で前田さんを胴上げだ!
俺も密かに目標としていた500点を突破していたし、言う事なしだ。
「「「バンザーイ! バンザーイ! バンザーイ!」」」
そして、放課後――
俺達はココールも誘って、マイ飛空艇の引き渡しにやって来た。
浮遊都市ティルーナの港には、飛空艇用の桟橋がある。
そこに前田さんに贈呈されるマイ飛空艇が泊めてあるそうなのだ。
「は~いっぱい飛空艇が泊まってるコケな~。おいら、こんなにたくさんの飛空艇を見るのは初めてコケ~」
仲田先生に呼び出されたティルーナ港の第三桟橋を歩いていると、ココールが感心したようにため息をついてた。
「ああ、飛空艇ってティルーナでしか作れないんだっけか」
そう、飛空艇の製造技術はこの世界で唯一、浮遊都市ティルーナだけのものらしい。
そういう世界観設定なのだ。
だからココールのような他国の出身者にとっては、かなり珍しいし憧れるものなのだ。
「そうコケ。それを学校の試験のご褒美でくれるなんて、太っ腹コケな~」
などと話しながら、桟橋を進んでいくと――
「おーい! 前田さーん。待ってたわよ~!」
仲田先生がぶんぶん手を振って、俺達に呼び掛けて来る。
先生のすぐ近くには一隻の飛空艇が泊まっていた。
「先生!」
「やっほ~! ギルドメンバーが勢揃いねー! うんうん仲良しなのはいい事よ!」
相変わらずノリが軽い先生である。
先生は俺達と一緒にいるココールに目をやって――
「相変わらずギルド対抗ミッションでもやらかしてるみたいね~君達。聞いてるわよ~真っ先に最弱キャラ選んだって? 確かに強そうにはみえないわね――ニワトリだし……」
「コケーッ! いいコケ! 弱者には弱者の戦い方があるんだコケ!」
お、そう言えるのは開き直れている証拠だ。
結構結構。
「大丈夫っす! 本番では面白いものを見せますから!」
「うんうん! 琴美ちゃんの活躍で育成計画も順調な気がするし!」
「ほうほう。なるほど悪魔の仕業は自信満々――と。ほら、ミッションの〆のバトルロイヤル大会で私実況やるからね。公式イベントだし張り切って取材しとかないとね~」
「ん!? 〆の大会ってバトルロイヤルなんですか!?」
最後に大会があると聞いていたが、その形式は未発表だった。
そうか、バトルロイヤルか――!
「あ! あははは……! わ、私は君達のためを思ってわざとかる~く情報漏洩してあげただけよ!? ミスったわけじゃないから! わざとだから!」
「……」
まあどっちでもいいが――
最終的にバトルロイヤルで決着っていうのはいい情報だな。
それを見越して対策出来る所はやっておくとしよう。
「さぁほら! お待ちかねの飛空艇よ! 乗った乗った!」
誤魔化そうとする先生に背中を押されて、俺達は飛空艇に乗り込んだ。




