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第104話 大増殖

 周囲の生徒をふっ飛ばした悪役中の悪役(ヒール・ザ・ヒール)のギルドマスターは、プリズンタートルの背中で高笑いを続けている。


「はーっはっは! はーっはっは! はーっはっはっはっは!」


 よく見ると、可愛いんだが背が凄く小さく、小中学生に見えそうなほどのロリッ娘だったりする。

 で、その娘が精一杯胸を反らして高笑いしている。

 反らして反らして、背伸びして――あ、こけた!


「きゃんっ!?」


 プリズンタートルの背中は丸い。

 つるっと滑って、ころんころん滑り落ちて、ドンッ! と地面に尻もちをついていた。


「あたたた……あーんもう、いったーい……! ううう。カッコ悪いよぉ……!」


 涙目でお尻をさすりつつ、元の場所に戻っていく。


「萌え……!」

「萌えですな」

「さっきぶっ飛ばされたのはご褒美ですね。分かります」

「ありがてぇ、ありがてぇ」


 いきなりぶっ飛ばされたのに、その場に流れるほんわかムード。

 人生楽しそうだなー、君たちは。


 そんな中ギルドマスターの聖澤先輩は、高らかに宣言していた。


「ふっふふふ――我らが悪役中の悪役(ヒール・ザ・ヒール)。敵側への義理も無ければ、あなた達に恨みも無いけど、この場は敵対させてもらうから! 何故ならそれが趣味だから! 先に謝っておくわ、ごめんなさい!」


 そうか、趣味か。趣味なら仕方ないな。

 まあ大規模イベントであえて敵側に回りたがる奴って確かにいる。

 PKできないんならできないなりに、敵をわざと回復させて応援したりとかな。

 そういう、趣味で天邪鬼やってる奴らの集まりなんだな。


 ガチな揉め事に発展するのは避けるために、根回しは忘れないようだが。

 まあそうしないと、なかなかアレだもんな。

 敵に回りたい人用のタレントもあって、敵対行動が出来る代わりに倒した相手のデスペナ等の発生をナシにする効果みたいなのもある。他にもいろいろあったはず。

 だからその辺、学校公認といえば公認のプレイなわけだ。

 まあ、こういう横殴り可能な多対多のバトルイベントフィールドでの話だが。

 今、この辺りがそういう属性のマップになっているらしい。

 大がかりな話だなー。


「ちょ……ちょっと愛子さん! 僕聞いてませんよ!? 皆さんと戦うなんて――!」


 あ、アルフレッド君か。悪役中の悪役(ヒール・ザ・ヒール)所属だもんな。

 プリズンタートルの背中に登っていた。


「シャラーップ! これがうちのやり方! 活動方針ですっ! さぁ君もこのプリズンタートルを護るのよ! 言う事聞かないと育成放棄しまーすっ!」

「ええええぇぇ……!? うううう……」


 カワイソス。素直な感じで真面目そうだし、敵に回るとか辛いんだろうな。

 ドラフトで行った球団の起用方法がブラックだった! 的な――


「あのー先輩ー」


 と、俺ももう聖澤先輩とアルフレッド君の近くまで到着していたので、聞いてみる。


「んー何かな? おっと。一年の守護竜付き! さてはデキる子だね君!」

「あ、どーも。で、質問いいすか?」

「許可します。どうぞ」

「んじゃあ――結局こいつら何の目的なんです? どこ行くんですか?」


 俺達が会話している間にも、プリズンタートルはのっしのっしと歩を進めている。

 移動が遅いから、早歩きくらいで追いつけるが。

 俺達も早歩きで、付いて行っているのだった。


「フッ……それはね――」

「それは……?」

「――分からないわ!」


 マジかよ! さすがに俺もずっこけるぞ!


「ええええええ!? 知らないんですか?」

「いいのよ、悪い事が出来れば理由はどうでもいいの! それが私達! 私達は何か悪そうなNPCから、街にこっそり変な卵を置いてくれって言われたのよ。で、置いてそれが孵ったら守ってくれってね!」

「卵? あ……!」


 そういや最近、いろんな所で目に入ったような!?

 ほむら先輩の所のアイテム博物館とか、情報屋とか、学校の花壇とか――


「うわあああぁぁぁ!? いきなりモンスターが! 何だこいつ!?」


 後方から、叫び声。あ、学校の花壇だ!

 そこにいつの間にか、プリズンタートルがもう一体出現している!


「あ、増えてる!」


 あきらが花壇の方を指差している。


「俺さっきあそこで変な卵見たぜ! 他にもいろんな所で見た!」

「じゃあ、街中にあれが現れているの!?」

「あーっ! うちのギルドショップにもありますし! あれ! 商品だと思ってペイントしちゃったし!」

「それ、片岡が買って情報屋に飾ってたぞ!」

「何個かありましたし! まだ在庫ある!」

「てことは、うちのギルドショップでもアレが出てると……!」

「コ、ココール君……大丈夫かなあ」


 早くギルドショップに戻ってやらないと、まずいな!

 しかしプリズンタートルの目的はよく分からない。

 NPC捕まえて移動して何するつもりだ?


「先輩! 先輩にこれ頼んだNPCは何てやつなんですか? 何か分かることは――」

「俺だよ! 俺!」


 頭上から声がした。

 見上げると、そこには淡い水色の髪をした青年の姿が。

 近くの建物の屋上に陣取っている。


 フロイ・ヤシン レベル80 王冠アイコン(レアモンスター)


「あいつ――! フロイ!」


 しかも前に比べてレベル上がってるぞ、あいつ!

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