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第102話 悪役中の悪役《ヒール・ザ・ヒール》

「いやー高代、悪いがこりゃすぐには厳しいんじゃねーか」

「マジか? どういう事だ?」


 俺は店番の片岡にそう尋ねる。

 俺は次の日の朝、早出で情報屋に足を運んでいた。

 気になることはすぐに確かめたい派なので!

 欲しい情報は、勿論『ハンドシェーク』の入手方法だった。

 ギルド対抗ミッションに置いて、俺的にはこれが必須だと判断したから。


「いやな、これ宝箱じゃなくレアモンスターのドロップオンリーっぽいんだよ」

「ああ」

「で――これを落とすヤツはユーヘイム大陸航路の飛空艇襲撃イベントで出る系と」

「うっ……『スカイフォール』クラスか……」


 入手確率数千分の一の奇跡再び――か?

 そりゃきついなー。


「ああ。しかもユーヘイム大陸航路は、レベル70以上で解禁のクエストをクリアしないと許可されないと来た」

「えええぇぇ~マジかよ。こりゃギルド対抗ミッション中には厳しいか――」

「だろうな。レベル70まで上げるだけでも、余裕で一月以上はかかるしな」

「ぐぬぬぬぬ……」


 この難易度は想定外!

 やっぱあれだな。攻略サイトとか攻略本とかでアイテムスペック見てさ、それで欲しいと思ったものほど、メチャ入手難易度高かったりするんだよなー。

 今回もそれですか……また何か考えないとだ。

 ちいいいいぃぃっ! せっかく閃いたと思ったのにまた振り出しか!

 だが俺は諦めんぞ――!

 超高速でレベル上げればひと月で70まで行けるか……?

 いやしかしその先でも数千分の一の確率の洗礼を受けなければならない。

 期待値として、ひと月では厳しいと言わざるを得ない。


「ちくしょー、これさえあればと思ったんだが……」


 ここに来る前に、ココールに何とかなりそうだって大見得切っちまったぞ!

 可哀想に、ぬか喜びさせちまうじゃねーか!


 俺はつい、店のカウンターに置いてあるオブジェをツンツンと突っついた。

 でっかい卵型で、表面にはいらっしゃいませと笑顔の美少女がプリントされていた。


「ん――? これあれか、うちの商品か?」


 デザイン自体は見覚えがあるが、ベースのアイテムにこんな卵あったっけか?


「おー。希美様のお供で、お前んとこの店にはよく行くからな。買った時お前はいなかったなー、確か。まあ飾るにはいいかなってさ」

「ふーん……ココールか誰かが作って並べといたのかな」


 まあ、いいか。


「余計な世話かも知れぬが――ココールには才能も、強き意思も無い。私は今からでも、貴公らの候補の差し替えを願い出る事を薦めるが……」


 片岡と共に店に詰めていたクジャクの鳥人種(バードマン)が、口を開いた。

 クジャ族のクジャータさんだ。ココールと違い、身長が高くシュッとして等身も高い。

 レベルや成長率、所持スキル的に結構な優遇キャラである。

 鳥人種(バードマン)の候補の中では一番この人が強いっぽかった。

 片岡達の知識の泉(ナリッジレイク)の候補ってこの人なんだよなー。

 ドラフトで競合してたが、見事引き当てていた。

 育成は順調なようで、既にドラフト時よりいくつかレベルが上がっている。


「ふっふふふ。いいねぇ、そう皆に思われるやつを鍛え上げて『ワシが育てた』するのが気持ちいいんだよ! 俺は諦めねー!」

「……どうも貴公は、変わった趣味をお持ちのようだ」

「まあほらさ、こいつ馬鹿だし。気にするだけ無駄だぜ、クジャータさん」

「ああ――そのようだ」

「うわ片岡。お前には言われたくねーぞ」


 お前は俺以上に大馬鹿のHimechanマニアだろうが、片岡よ。


「だが……もしモノになるのならば、同じ鳥人種(バードマン)として恥をかかずに済むというもの。あいつを頼む」


 この間見た感じ、ココールには無関心っぽかったが――

 実はいい人なのかも知れない。クジャータさん。


「ま、別の方法を検討してみるわ。じゃあまた来るぜ」


 と、情報屋を出て直接学校へと向かう事にした。

 のんびり歩いてたら何か思いつくかもな――


 で、暫く歩いて校門が見えて来た所で声をかけられた。


「やあ蓮! おはよう!」

「あ、雪乃先輩。こんちゃーっす」

「どうした何か考え事か? 浮かない顔だな?」

「いやー。ちょっとがっかりする事があっただけっす」

「ふむ――ギルド対抗ミッションがらみか?」

「はい。ココールを魔改造できそうな武器見つけたんですけど、ちょっと取れそうにないんですよね……別の方法探さないとって、さっきなった所で――」

「あんな無茶な指名をするから苦労するんだぞ。せっかくの優先権で最弱の候補を選ぶとは――私は止めたのに」

「まあ――ついそうしてしまうのがダメジョブマイスターの性ってやつで」

「はははは。まあ蓮らしいと言えば実に蓮らしかったがな」

「何とかしますよ。まだ慌てるような時間じゃないんで」


 話しながら校門を通り抜けようとする。

 と、そこに何やら小袋を配っている集団が。

 手分けして律儀に全員にそれを配っているのだった。

 所属ギルドがみんな悪役中の悪役(ヒール・ザ・ヒール)になっている。


「おはようございます! どうぞこれ、受け取ってください!」


 俺達の所に小袋を持ってきたのは、NPCの少年だった。

 名前はアルフレッド・ブリーズ。

 ああ、ドラフト会議で見た最強キャラ候補の子だ!

 レベル1だったけど、ステータスの成長率が凄いんだよな。

 育成は順調なのか、もうレベル20まで上がっていた。

 凄い人の好さそうな感じだが、ギルドが悪役中の悪役(ヒール・ザ・ヒール)って。

 まあとりあえず、差し出された小袋を受け取った。

 中にはクッキーとかキャンディとか携帯ティッシュとかが詰め合わせになっている。

 その中に一枚の紙も入っていて――


 毎度ご迷惑をおかけしてしまいますが、どうかご理解のほどよろしくお願いします。

 本来なら皆様一人一人に直接お詫びさせて頂く所ですが――

 このような形となります事をご容赦ください。

 悪役中の悪役(ヒール・ザ・ヒール)一同。


 ――と書いてある。

 何だこりゃ? めっちゃ謝られてるけど――?

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