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第100話 狩場潰しの秘密

 授業を終え放課後、あきら達と情報屋に行ってみる事にした。


「えーとNPCの『ノミの心臓』を打ち消すスキルや装備について――と」


 店番の担当の片岡が、情報用閲覧用の『ディールの魔卓』を操作する。


「んー……ないな! 有効な情報がない!」

「マジかよ!?」

「ああ――NPC育成ってあんま前例のないイベントだからな。守護竜の育成ともまた違うだろ? テイマー系ジョブが連れてるペットも、装備とかスキルはいじれねーし。まだまだこっち側の方は発展途上なわけだ」

「そりゃ困ったなー。うーむ……じゃあもう一つ」

「あいよ。追加料金3000ミラね」

「ん」


 と、俺は片岡に情報料を払う。


「で、何だ?」

「今さ、ギルド対抗ミッションでほぼ全部の狩場が荒らされまくってるだろ?」

「ああ。他ギルドへの妨害工作として、経験値の入手を遮断するのは基本中の基本だからな。GM的にもOKらしいし、ウチも特別班がやってるぞ」

「それで狩り場を潰し合うだろ? じゃあ自分のNPCの育成はどこでやるんだ? そこが疑問でさ」

「あーそれな。各ギルドが持ってるプライベートダンジョンがある。そこはギルドメンバーか招待を受けた奴しか入れねえから、そこで育成してんだよ」

「! なるほど――だから他のギルドのNPCは見ないのね……」


 前田さんが表情を鋭くする。


「えー! ずっこいし! 自分達は荒らされない狩り場を持ちつつ他妨害すんなし!」

「まあ効果的だけど――ホント容赦ないというか、みんな本気も本気だね」

「遊びだからこそ真剣に遊ぶわけだろ。気持ちは分かるぜ。基本みんなネトゲ廃人だし、この学校」


 楽しい遊びだからこそ、真剣になる。

 突き詰めて極めて、競い合って勝つのが喜びになる。

 まぁスポーツだって似たようなもんだろ。

 そこに金が発生するかしないかが、社会的価値や地位を決めるんだ――

 あ、うちの親の受け売りです。俺もそう思うけどな。


「プライベートダンジョンは自分達の人工浮島(ラグーン)を所有した上でそこに作るモンだから、そこまでの設備がある大手ギルドじゃないと、厳しくなっちまうな」

「実質、大手ギルドが中堅以下を振り落とすための作戦だと言う事ね」


 前田さんの言う通りだろう。


「うーん。うちみたいなちっこいギルドは不利ですし……」

「いいじゃねーか。そこを覆してこそのジャイアントキリングなわけですよ!」

「はいはい。高代はいつもそれですしー」

「ねえ片岡君、プライベートダンジョン以外で妨害を受けずにレベル上げが出来そうな場所は無いの?」


 とのあきらの問いに、片岡は右手を差し出す。


「ではでは追加料金3000ミラね」


 ちゃりーん。


「『空の裂け目』ってのがあるぞ」


 聞いたことのない単語である。

 少なくともUWアンリミテッド・ワールドガイドブックには載っていない。


「何だそれ?」

「その名の通り空に現れる裂け目でな。それが内容ランダムのインスタンスダンジョンの入り口になってるんだ。入り口は複数出るし移動するし、入り口毎にそれぞれ別ダンジョン扱いだから、常に張り込んでの狩場潰しは無理だ。ここなら使えるんじゃねーか」


 あきらがふんふん、と頷く。


「いいかも知れないね。どうやって行くの?」

「空にあるから勿論飛空艇で行くんだが――定期船じゃムリだぜ。買っても借りてもいいけど、自分達で動かせる飛空艇がいる。それで入り口を捜して入るんだ」


 マイ飛空艇か――!


「んー……他のギルドから借りれるし? ゆっきーの先輩とかほむほむ先輩とか――」


 うーん。ゆっきーの先輩はいいとしても、ほむほむ先輩は怒られるんじゃねーか?

 響きはちょっと可愛いから俺は嫌いじゃないが。


「でも頼み辛いわなー。先輩達は貸してくれるかも知れんけど、先輩達のギルドのメンバーは納得しないだろうしな。そこを無理に押し通してもらうのは気が引けるぞ」


 二人ともギルドマスターだから、ごり押そうとすれば出来てしまうだろう。

 それでギルド内の関係が険悪になるのは悪い。


「んー確かに、そこんとこ空気読んだ方がいいかもですし――」


 こう見えて人間関係においては気遣いする派だからなー、矢野さんは。


「それに、だ。もっと重要な事がある――」

「借りるのは甘え! 甘えたらジャイアントキリングにならない! でしょ?」

「はい、あきら君正解!」


 俺はあきらに拍手する。


「ふふふっ。高代くんらしいわね」


 と、前田さんも笑っていた。


「俺も賛成だな。従者はHimechanに与えられてはならない! 許されるのは奉仕する事のみ! そうだろ、なぁ高代!」

「いや知らん知らん!」


 お前もブレない奴だな!

 もうこいつの中で女性プレイヤーは全員Himechanなんだな!

 んで男は全員従者と。んーシンプルな世の中ですなー。


「じゃあ飛空艇はどうやって確保しますし?」

「大丈夫。アテはある。他力本願だけどな――さっきホームルームで仲田先生が言ってただろ? テストの学年一位のご褒美――」

「あ、そっかあ飛空艇でしたし! じゃあ、ことみーとあっきーに任せたし!」

「ええ――任せておいて。元々欲しかったから頑張るつもりだったわ」

「うん。ますます負けられない理由が出来たね!」


 あきらも前田さんも頼もしい限り!

 レベル上げの方は、何とか道筋は見えて来たかもな。

 となると、後はココールをどうモノにするかになる。

 渾身の魔改造を炸裂させてやりたいわけだが――!

 まだちょっとカタチが見えて来ないな。

 こいつは引き続き、検討っと。

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