第99話 情報漏洩
翌朝――
俺はギルドショップ奥の工房で、ショップ用のアイテム作成に勤しんでいた。
授業前のちょっとした労働だな。
ココールも手伝ってくれるので、仕込が早く終わって助かる。
バトルを離れて店の手伝いをしてくれていると、やはりココールは有能だ。
だが、これはあくまでギルド対抗ミッションの本筋には関係がないわけで。
ちなみにココールのレベル1のままだ。
何とかPLでフォローしようとしたが、攻撃が一発も当てられずに……
『ノミの心臓』の効果と思われるが、武器攻撃が全く当たらないのだ。
短剣や槍などの他の武器を試したが全部ダメ。
ステータスを大幅にドーピングするとか、魔法に頼ってみるとか、何かしら打開策を考えてやらないと――『ノミの心臓』を打ち消す効果のスキルとかあればなあ。
その辺ちょっと調べてみないと。
今の状態でココールのレベルを上げるなら、ソロ状態でレベリングは無理だ。
PLじゃなくて俺達のPT内に組み込んで、俺達のレベル基準で経験値を貰える敵を倒さないといけない。
PT戦の場合、経験値の計算の基準はメンバー内の最高レベルになる。
敵レベルがこちらより低すぎると、経験値は入らない。
だからトリニスティ島では駄目だ。レベルが低すぎる。
今俺達は40前半だから、敵レベル50ちょい位の狩場がいい。
しかし、他ギルドの妨害がハンパない。
これからどうココールを魔改造してモノにするか――
それに、育成のための狩場も他ギルドに荒らされてる――
考えることは多いな。
まあそこを試行錯誤するのが楽しいんだけどな!
「しっかし、どうしたもんかねー」
「コケー……昨日はごめんコケー……」
俺の呟きが聞こえてしまったか、ココールが肩を落とす。
「ああいや悪りぃ。別にお前のテンションを下げようと思ったわけじゃなくてだな」
「でも、おいらの事で困ってたコケ?」
「いいんだよ。そんなもん分かってた事だし、そこを何とかしてお前が輝いてくれたら最高に気持ちいからな! 『ココールはワシが育てた』がしたいんだよ俺は!」
「コケー……蓮は悪趣味だコケな~?」
「ふっ、それは俺にとっては誉め言葉です。それにホラ、上手く行けばお前の事馬鹿にしてた鳥人種の奴等も見返してやれるぜ? お前もそうしたいだろ?」
「そりゃそうだコケが……実際あいつらが怒るのも無理ないコケよ。おいらだって何でおいらが英雄候補に選ばれたか分からんコケ。父ちゃんが賄賂でもやってないか心配してるくらいだコケ」
「ま、あきらもお前が周りの奴を見返せるようにって燃えてるしさ、諦めるなんて全然早いぜ。もうちょっと付き合ってくれよ。俺達がなんとかしてやるからさ」
俺はココールの背中をバンバン叩いて激励する。
「みんな優しいコケな~……だけどおいらは自分に自信が持てないんだコケよ。自分がどれだけチキンかはよく分かってるコケ……」
まあ、ニワトリだけにチキンだってね。
メンタル面もちょっと改善が必要かもなあ。
「今からでも遅くないから、候補の変更とかしてくれてもいいコケよ? どうしてもってお願いしたら、変えてくれるかもしれんコケー」
「そんなことしねえよ。もしダメでもそれならそれで店手伝ってくれりゃ十分ありがたいしな。じゃあ、授業行ってくるわ。店よろしくな」
「うん――行ってらっしゃいコケ~」
と、俺はココールに店を託し学校へ。
で、最後のホームルーム――仲田先生が相変わらずの軽ーいノリで俺達に告げる。
「ギルド対抗ミッションも継続中だけど、テストも近くなって参りました。みんなちゃんと準備してるかなー? まあ言うまでもなくテストの点がMEPになるわけだし、ゲームバカとしてはやらざるを得ないわよねー? 欲しいタレントとか装備とかアイテムとか、沢山あるもんね?」
はい、ちょくちょくやってますよ!
今度のテストでは劇的に点を引き上げて見せる!
「でももっとゲームバカどものやる気を煽るために、先生かるーく情報漏洩したいと思いまーす」
おお? 何だ何だ?
「実は定期テストでは、テストの点がMEPになるだけじゃありませーん。総合順位に応じて商品も貰えまーす」
おおおおおおお! と教室が盛り上がる。
何だろ、何くれんだろーなー。
「はい、学年一位の景品はこちら――!」
先生が黒板をコンコン、とやるとそこに映像が映し出される。
そこにあるのは――おお飛空艇かー!
「プライベート用の飛空艇でーす! 高速艇だから定期船より早いし、好きに操縦できるわよ!」
「おいおいおい、これはいいな――」
前に、雪乃先輩のギルドで所有している飛空艇に乗せてもらったが事ある。
快適だったし楽しかった。
いつか俺達も欲しいなとは思っていた。飛空艇同士の艦隊戦も実装されているらしい。
それを楽しむにも必要なのだ。
MEPや金で手に入れようと思ったら、コストが膨大になる。
これで取れたらありがたいな。
しかもこれ結構取れる可能性あるぞ。ウチにはあきらと前田さんがいるからな。
「あきら、これ行けるんじゃね?」
「うん頑張る! あれ貰って世界中の絶景を探すの! うへへへぇ……」
あきらの目がキラッキラに輝いている。
物欲にまみれた美少女の素敵な笑顔ですねー。
少し離れた席にいる前田さんも、きりっと表情を引き締めていた。
おおやる気だ。頼もしいな!
俺はまあそこまでは無理だろうが、稼げるだけ稼ぐぞ!
まだまだ欲しいタレントがある!




