表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/41

33 魔王様、死ぬ

「いたぞ! アレだ!」


 魔王はドラゴンを発見した。

 洞窟に潜り始めてから10分後のことだった。


「いや、早いだろ」

「途中で魔物に出くわさないように魔法を使ったのだ」

「虫よけのあれな」

「落石も全て魔法で防いだ」

「そもそも魔族ってトラップ無効だもんな」


 魔王はルークをお姫様抱っこしてここまで連れて来た。

 そのため、いくらトラップを踏もうが発動しない。


「余にはあらゆる耐性が付いているからな。

 毒だろうが麻痺だろうが睡眠だろうが、

 全ての罠が無効になるのだ!」

「ラスボスが状態異常になったら笑えるもんな」

「と言うことで、さっそく竜を倒していく。

 ふはははははははは!」

「お料理するみたいに気軽に言うな」


 目標の竜は巨大な穴の中で丸まって眠っている。

 寝首をかけば簡単に首を取れるだろう。


「それではルーク、さっそく行ってこい。

 戦う前にバフをかけてやろう。

 ほーれほれ」

「…………」

「準備は整った。

 勇者と魔王の力を手にした上に、

 バフを限界までかけた貴様に敵う者はいない。

 さぁ、奴の首を取って来い」

「……分かったよ」


 ルークは剣を両手で構え、穴の中へ飛び込んでいく。

 真下には竜の首。

 アレを切断すれば……。



 ぎょろっ!



 そうは問屋が卸さない。

 竜はすでに目覚めていたのだ。



 がきいいいいいいん!



「なっ⁉ バリアだと⁉」


 剣を振り下ろして首を切断しようとすると、どこかで見たことのある六角形の文様のバリアが現れた。この障壁を破らない限り敵を倒すことはできない。


「くっくっく、俺が気づいていないと思ったか?!

 人の家に勝手に上がり込んでぎゃあぎゃあうるさ――

「えいっ!」

「ぎゃああああああああ! 何してんの⁉」


 ルークは好きをついてバリアをの隙間から竜の身体をつつく。

 爪と爪の間のデリケートなところを狙ったのだ。


「いや、バリアに隙間があったから……」

「お前本当に空気読めないな!

 こういうのは名乗りを上げるまでまっ――ぎゃあああああ!」


 何度もバリアの隙間を塗って攻撃するルーク。

 竜もたまらず悶え苦しむ。


「ほっんとなんなの⁉

 名乗りすら上げさせないって空気読めなくない⁉」

「詠唱中にも普通に攻撃するけど?」

「え? 何それ! こわい!

 詠唱中は攻撃しちゃダメってルールでしょぉぉぉ⁉

 もう怒った! 本気で怒った! 今から前を――

「えいっ!」

「ぎゃああああああああ! やめろって言ってんだろ!

 あれ⁉ いつの間にかバリア消えてるし!

 なんで⁉ どうし……あっ」


 竜は上を見あえげる。

 魔王がひそかに呪文を詠唱し、バリアを消したのだ。


「ふざけんな! マジふざけんな!

 お前らずる過ぎるだろ!

 本来このバリアは100万ダメージ与えないと――

「えいっ!」

「ぎゃあああああああああ! 目があああああああ!

 え? 何したの⁉ お目目がじゃりじゃりするぅ!」

「砂投げた」

「え? 砂⁉ 勇者が砂投げるの⁉

 まるで子供の喧嘩じゃん!

 なにこれ⁉ ホントなにこれ⁉ マジなにこれ⁉」


 ルークの繰り出す攻撃に混乱する竜。

 かつてこんな汚い手を使う勇者がいただろうか?


「いいぞ! 俺の教えた攻撃方法が効いているな!」


 高みの見物を決め込む魔王。

 にやにやと意地悪い笑みを浮かべている。


「お前かっ! こんな汚い手を教えたのは!」

「はっはっは! その通りだ!

 今のルークは地上最強。

 その最強の存在に必勝法を教えれば、

 貴様のような竜であってもイチコロよぉ!」

「いくら何でも酷すぎるだろ!

 ラスボス戦で砂投げる勇者が何処にいるんだよ!」

「何を言っている。

 戦いに卑怯もくそもない。

 勝てばよかろうなのだぁ!」

「くっそ! こいつっ!」


 さすがの竜も激怒り。

 このままでは頭の血管が切れそうだ。


「なぁ、もう首落としてもいいか?」

「構わん、さっさとやれ」

「分かった」

「ねぇ! さっきから何なの⁉

 まるでお魚の首を落とすみたいに言わないでくれない⁉

 そんなにあっさり殺さないでよ!

 俺、この話のラスボスだよ⁉」

「「さっきから何言ってるか分からない」」

「分かれええええええええええええええ!」


 渾身のメタ発言を一蹴され、もはや打つ手なしの竜。

 このままでは単なるギャグシーンで終わってしまう。


 何としてもラスボスとしての矜持を保ちたい。

 そう思った竜は……。


「畜生……こうなったら最後の手段だ!

 竜の宝玉を使った――

「えいっ!」

「ぎゃああああああ! 今度はなんだ⁉

 辛い! お口が辛いよぉ!」

「タバスコとからしとワサビ混ぜた瓶を口に入れた」

「ほんっと最後まで酷いなお前ら!

 ごほっ! がはっ! もういい!

 説明とか全部カット! くたばれクズども!

 異界門イビルゲート!」


 竜が叫ぶと、どこかで何かがはじける音がした。

 きっと竜の宝玉とやらが砕け散ったのだろう。


「おい! どうなるんだ魔王!」

「大丈夫だ、きっと何も起こらない。

 どうせ最後の悪あがき――ぬわああああああああああ!」


 突然、竜の頭の上に黒い球体が発生したかと思うと、あたりの物を勢いよく吸い込み始めた。

 気を抜いていた魔王はうっかりその中へ吸い込まれてしまう。


「まおおおおおおおおおおおおおおお!」


 ルークの叫び声が洞窟内にこだまする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ドラゴンが不遇で笑える。 さあて魔王様はどうなってしまうんだ!?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ