32 魔王様、勇者に剣を返す
森の中で好きなだけいちゃいちゃした二人は、ついにドラゴンが住む山の奥までやって来た。
そこは岩がゴロゴロ転がる場所。
草木は一本も生えていない。ところどころから黒い煙が噴き出し、大きくあいた穴の奥ではマグマが煮えたぎっている。
まさにラストダンジョンと言った様子の光景だ。
そんな場所を二人で進む魔王とルークだが、目的のドラゴンは一向に見えてこない。
果たして本当にいるのだろうか?
「なぁ……本当にドラゴンなんているのかよ?」
「ああ、間違いない。
ドラゴンサーチがそう言っている」
魔王は懐中時計のような形の魔道具に映し出された点滅する光を見つめながら言う。
「なんだよ、それ」
「ドラゴンサーチ」
「いや、それは聞いたよ。
どういう道具なのか教えてくれよ」
「ドラゴンを探す道具だ」
「……そうかよ」
ドラゴンの居場所を教えてくれる魔道具。
それ以上でも、それ以下でもない。
ドラゴンサーチはすぐ近くに竜がいることを示している。
標的のすぐ近くまで近づいてきているようだが……。
「ふむ、あの洞窟の中にいるようだな」
「へぇ……」
ごつごつした山肌に大きな口を開いた洞窟。
あの中に竜が潜んでいるらしい。
「さて……あそこへ行く前に一つ、やっておくべきことがある。
ルーク、貴様にかけた制限を全て解くぞ。
それと……」
魔王は宙に魔法陣を錬成。
その中に手を突っ込むと彼の腕がその中に飲み込まれる。
右腕の肘辺りまで消えたように見える。
「あった、あった。
ほら――貴様の剣だ」
魔王が魔法陣から手を引き抜くと、かつてルークが装備していた剣がその手に握られていた。
「今から竜と戦うのは貴様だ。
剣と勇者の力がなかったら話にならん」
「なぁ……」
「なんだ?」
「俺が勇者と魔王の力を手に入れたら、
竜なんて簡単に倒せるんだろ?」
「まぁ……そうだろうな。
限定解除した時の力は普通の勇者の何倍にもなる。
敵う者などおるまい」
「なら……邪神も殺せたりするのか?」
急に妙なことを聞く。
「なぜ、そのようなことを?」
「俺が邪神を殺せば、お前も助かるのかなって」
「我が力の源である邪神様を屠れば、
世の肉体はたちまち灰となって消えるだろう。
あまり妙なことを考えるな」
「……分かった。
最後まで一緒にいてくれるよな?」
懇願するような表情でこちらを見るルーク。
その視線に思わずクラっとする。
「もちろんだ、貴様が望むのなら」
「んっ、ありがとう」
ルークに口づけをする魔王。
彼はもうすっかりキスをするのに慣れたようで、自分から求めるように顔を上向かせる。
「帰ったら続きをするぞ」
「そうしたらすぐにお別れなのか?」
「ああ……そうだ。
約束通り死んでやろう。
お前の腕の中でな」
「…………」
少しだけ寂しそうにするルークだったが、すぐに表情を切り替えて真剣な顔つきになった。
そして……。
「よこせ」
右手を前に出して剣を求める。
すっかり勇者の顔に戻った。
「うむ、貴様の剣を返そう」
魔王は彼の手に剣を渡す。
力強く鞘を手に取った彼は、勢いよく剣を引き抜いた。
ギラリと輝く刀身がその鋭さを表している。
「ではそろそろ行くぞ。
その前に限定解除をせねばならん」
「どうやって解除するんだ」
「余が注いだ魔力を吸い取ればいい。
文様を出せ」
「……分かった」
体操着をたくし上げ、文様を露出させるルーク。
魔王は膝真づいて、へその下に刻まれたハート形のマークに顔を近づける。
そして……優しく何度も口づけした。
「んっ……んあっ……はぁ」
魔王が口づけをするたびに、ルークは甘い声を漏らす。
声を上げるのを必死にこらえ、左手で裾をつかみながら、右手はグーにして口元に当てていた。へその下から下腹部の少し上あたりまで、まんべんなく唇を這わせ、彼の身体から注ぎ込んだ魔力を吸い取っていく。
「もっ……もうだめぇ……」
足を震わせ、ヘロヘロになるルーク。
泣きそうな声を上げながらも、彼の弱弱しい態度とは裏腹に、ブルマの下にあるそれが力強く自己主張している。
これ以上やると色々と危ない。
「ふぅ……終わったぞ」
「え? もう?」
「まだ続きがしたいのか?」
「いや……そうじゃなくて……」
消化不良なのか、ルークは物足りなさそうにしている。
本音を言えばスッキリしたかったのだろう。
別にしてやっても構わないが……。
「さすがに戦いに臨む前に、それをするのはなぁ」
「それって……なんだよ?」
「帰ったらたくさんしてやる。
楽しみにしていろ」
「…………」
ルークの目がすわる。
何をされるのかと想像しているようだ。
「さて、悪名高き竜を討伐しに行こうか」
「ああ……」
魔王と勇者は洞窟の最新部を目指す。
竜の首を求めて……。




