11 魔王様、ついに勇者君が本気をだしました
夜。
魔王は寝室でくつろいでいた。
「おい、入るぞ」
ルークが寝室の扉をノックした。
魔王が入れというと、ゆっくりと扉が開かれる。
「うん? どうしたその格好は」
「…………」
ルークはバスローブを着ていた。
顔を赤らめながら、恥ずかしそうに俯いている。
……どうも様子がおかしい。
「なんだ、どうした?
例のパジャマを着て来いと言っただろう」
「いや……その……」
扉を後ろ手でしめながら、ルークはぎこちない足取りで魔王の元へと向かう。
そして……ゆっくりと羽織っていたバスローブを脱いだ。
「そっ……それは!」
ルークの服装を見て驚愕する魔王。
彼が着ていたのはスクール水着!
しかも女性用!
旧スク!
なんてマニアックな!
「こっ……この格好をしたら……
お前が喜ぶからって……」
「誰が?」
「研究者? みたいな竜のおっさん」
「……ガルスタか」
魔王はその人物が誰なのか分かったらしい。
「あいつも味な真似を……」
「なぁ……なんなんだよ、この服。
ぴっちりしてるし、股が食い込むし……」
「深いことは気にするな。
とりあえず俺の隣に来い」
そう言ってベッドの端に座り、ポンポンと隣の個所を手でたたく魔王。
ルークは無言でそこへ腰を下ろす。
「えっと……」
「かわいいな、お前は。
瞳の輝きはまるで青天の空のようだ。
髪の色は太陽に焼かれた夕焼け。
本当に美しい」
「…………」
魔王はルークをじっと見つめながら言う。
褒められてもあんまり嬉しくない。
というか、緊張して身体がこわばる。
股が自然と内向きになってしまうのが分かる。
「その……俺……」
「身体は清めてきたのだな?」
ルークはその問いに、無言で頷いて答えた。
いよいよもって、覚悟の時だ。
今から彼は大切なものを失う。
「ルーク……余は……」
「あっ……」
ルークの両肩に手を置いて、自分の方を向かせる魔王。
その表情はいつになく真剣で、マジな様子が伝わってくる。
今夜彼は、本気で致すようだ。
「あっ……明かりを……」
「むっ。分かった」
魔王が指パッチンすると、部屋の証明が消える。
代わりにオレンジ色の淡い光が灯された。
魔王はそっとルークの顎に手を添え、上向かせる。
覚悟を決めた彼は目を閉じて受け入れる準備をした。
そのまま顔を近づけて……。
「うわっ! やっぱむり!」
ルークは顔を背けてしまった。
「……おい」
「だっ……だって仕方ないだろ⁉
無理なもんは無理なんだから!」
「そんな恰好までしておいて、今更むりだと?
笑わせるな……」
「だっ……だってぇ……」
涙目になるルークに、魔王はいっそう劣情をもよおした。
このまま無理やりにでも……。
「なぁ……後生だから。
余に手荒な真似をさせてくれるな。
素直に受けれいてはもらえぬか?」
「ううぅ……」
「なぁに、心配するな。
最初を乗り越えればすぐになれる。
余の時もそうだった」
「……え?」
ルークが視線を向けると、魔王はしまったといった様子で顔を背ける。
彼にも何か隠していることがあるようだ。
「まっ……まぁ。その話はおいておいて。
お前も並々ならぬ思いでここへ来たのだろう。
だったら……引いたりせずに最後まで……!」
「うぐぅ……わっ……分かったよぅ」
ついに観念したルーク。
魔王は再び口づけをしようと……。
「ぐっ!」
「え?」
顔を近づけようとした魔王は、胸を抑えながらそのまま前のめりに倒れてしまった。
「おい……どうしたんだよ⁉ おい!」
ルークが身体をさすっても彼は答えない。
苦しそうに呻いたままだ。
「誰か! 誰か来てくれ!
魔王が……魔王がっ!」
ルークは部屋を飛び出して助けを求めた。




