帰国子女も大変なんだな
さて、翌日の朝だが、いつものメンバーである俺、広瀬君、剛力君、西梅枝さん、東雲さんに加えて、中垣内や南木さんも今日は集まっている。
「そういえば西梅枝さんや、九重さんのほうは、球技大会のテニスのダブルス上手くやれそう?」
俺がそういうと西梅枝さんの前の席に座っている九重さんが振り向いて言う」
「大丈夫デース
エリーはテニス上手デスヨー」
「エリーって……誰だろう。
ああ、、西梅枝さんのことか。
下の名前が絵里だからエリーね」
俺がそういうと西梅枝さんは照れたように、はにかみながら言った。
「えっと、そう言われるとちょっと照れてしまいます。
私なんて九重さんについていくのが精一杯ですし……」
「いやあ、普通についていけるなら十分なんじゃないかな?
アメリカは女子のテニスも世界最強クラスだし、九重さんは凄く上手そうな気はしたけど」
俺がそういうと九重さんはふふんと胸を張って言った。
「まあ、それほどでもナイデスガネー。
むこうでやっていたのはラクロスデシタシ」
「ラクロスかぁ。
テニスほどメジャーじゃないけど、知名度は高いよな。
何か華やかだし」
俺がそういうと九重さんは苦笑して言った。
「男性はアイスホッケーなんかを目指す人が多くて、女子よりもっとマイナーデスケドネー」
「そういや男がラクロスやってるってのは、たしかにあんまり聞かないな」
「マア、もっともっとメジャーなのは、ベースボール、バスケットボール、アメリカンフットボールデスケドネー」
「野球とか意外と世界的にはマイナースポーツだったりするんだけどな」
「アハハ、実はそうなんデスヨネー」
苦笑する九重さんに次いでとばかり聞いてみた。
「そういえば、勉強とかはだいじょうぶそう?」
「ンー、日本の教科書、漢字がイッパイあって覚えるの大変デスネー」
「まあ、そもそも日本の文化自体が欧米とはだいぶ違うらしいからね。
世界の多くの国は夏休み明けの9月から新学期開始だし」
「ソウナンデスヨー。
本当なら今頃はナガイナガイ夏休みノはずダッタンデスヨー」
「アメリカの夏休みが三か月近くもあるのは、世界的に見えればむしろ例外らしいけどな。
ヨーロッパなんかは1月半から2か月くらいらしいし」
「アメリカではハイスクールまではそんなに授業も難しくナインデスケドネー」
「ああ、高校までは数学とか日本の方が難しいらしいね」
そんな事を話していたらHRの予鈴がなってしまった。
「九重さんが良ければ、これからは朝の駄弁り話にまざらない?」
「ア、ハイ!
私も混ぜてくれるとトテモウレシイデース」
ニパと笑う九重さんだが、実際に話にうまく混ざれなくて難儀していたのかもしれない。
アメリカと日本では日常的に使う言葉から文化的な違いも大きいらしいから、帰国子女も大変なんだな。




