放課後に南木さんと二人でアンダーパスの練習をしようとしたら中垣内にずるいといわれたよ
さて、放課後は今までは基本的にユアチューブの動画投稿のための動画撮影に時間を費やしていた。
だが、今は正直バレーボールの練習のための時間が欲しい。
中間テストの前にもテスト勉強に時間を費やしたしな。
なので俺は中垣内にその旨を伝えることにした。
「悪いんだが、しばらく放課後の動画撮影はなしにさせてくれないかな」
俺の言葉を聞いた中垣内の反応だがおおよそ予想通りよくはない。
「ええっ、なんでよ?
やっとテスト勉強も終わって再開できると思ってたのに」
「いやお前さんも見てわかってるだろうけど、バレーボールの練習をする時間が欲しいんだよ。
南木さんと一緒にさ」
俺の言葉を聞いた中垣内はなんだかむくれたような表情で言う。
「何それ、ずるい!」
「え、ずるい?」
「そうよ!
二人だけで練習して上手になろうなんて」
その中垣内の言葉に俺は思わず苦笑する。
「いや、俺たちの下手さはどう考えてもチームのみんなの足を引っ張るだろうからなんだけどさ。
せめて、本番でそうならないようにしたいっていうだけなんだがな……」
「そうやって自分だけすっごくうまくなっていい所見せるつもりなんでしょ?」
「おいおい、いい所見せるって、いったい誰にだよ?」
「え、それはよくわからないけどさ。
テスト勉強の時はそうだったじゃない」
「ああ、テストの結果が俺がやけによかったからそう思ったのか……。
まあ言いたいことはわからないでもないけどもな」
あれはふみちゃんのテスト対策に特化した勉強の教え方がめちゃくちゃ上手だからできたことなんだがな。
だから仮にふみちゃんにバレーボールの上達が早い練習の仕方を教わろうとしても難しいんじゃないかな……ふみちゃんなら何とかしてくれそうな気もするが。
まあそれはそれとして俺は中垣内に答えた。
「要領の良いテスト勉強の仕方をすればテストでよい点を取るのはそこまで難しくないんだよ。
それを考えると運動は上達するのって大変なんだよな。
だからむしろある程度何でもそつなくこなせるっぽい中垣内の方が俺から見ればうらやましいぞ」
俺がそういうと中垣内が表情を曇らせた。
「確かに私は何でもそこそこはできるけどね。
でもとびぬけてすごくうまくできるものは何もないの」
「何でもそこそこはできるって、それだけでも大したものだと思うけどな」
俺がそういうと中垣内がさらに表情を曇らせた。
「でも、それじゃママは褒めてくれないわ……」
「ああ、なるほど。
そういうことか」
中垣内の行動から親などにあまり褒められたことがなく自己評価が低くなっているのだろうなとは思っていたんだが、やっぱり当たっていたようだ。
「お前は何にも一番になれないって思ってるようだけど、少なくとも俺たちの投稿した動画に出てくる女の子の中で一番かわいいって言われてるのはお前だぞ?
そして一番ぼろくそにいわれてるのは俺だ」
俺がそういうと中垣内は一転して笑顔になった。
「え、そうなの?
私が一番かわいいって言われてるの?
そんであんたが一番ぼろくそって、それは当たり前でしょ」
「ああ、まあ今のところはお前が一番出番も多いってのもあるんだろうけどな。
なんで俺がぼろくそなのが当たり前なんだよ」
俺はそういうが中垣内には聞こえてるのやら。
「そっか、あたしが一番かわいいって言われてるのかぁ、そうなのかぁ……」
さっきまでの落ち込んだ様子が何だったのかと思うくらい上機嫌になったぞ……。
「まあ、別に人数が増えても問題もないし中垣内も一緒に練習するか?」
俺がそういうと中垣内は上機嫌でうなずいた。
「うん、私も練習に混ぜて。
あんたってなんだかんだで教えるのうまいから私もバレーボールがもっと上手になれるかもしれないし」
そういうわけで中垣内も一緒に練習をするとしようか。
俺は南木さんのもとへ向かう。
「南木さん、この後に特に用事とかなければまた一緒にバレーボールの練習しない?
今度は中垣内さんも一緒だけど」
俺がそういうと南木さんはうなずいて答えた。
「あ、はい、私は大丈夫です。
一緒に頑張りましょう」
南木さんがにこやかに中垣内に言うと中垣内もにこやかにうなずいた。
「頑張って練習して上位を目指そうね」
二人の表情はにこやかなんだけど微妙に目が笑ってない気もするが……きっと気のせいだな。
そういうことにしておかないと俺の胃にダイレクトアタックが来そうな気がするぞ。




