5月末の転校生は帰国子女で日米ハーフの女の子?
さて、中間テストも終わり、一息ついた五月末。
朝のショートホームルームで担任の秋山先生が言った。
「本日は転校生がわがクラスに転入することになりました」
その言葉にクラスが静まり返った。
こんな時期に転校生?
一般的には学期にあわせて転校が多いので5月の終わりに転校というのはかなり珍しい気がする。
「では、どうぞ入ってきてください」
「ア、ハイ」
ん? なんか発音が?
そして入ってきたのは女の子だった。
しかもポニーテールにまとめた赤毛で、猫の目のような黄土色で少し彫りの深い、でも美しくグラマラスな外見をした女の子だな。
「ええと、皆さま失礼シマス」
「あー彼女はアメリカの高校から日本にやってきたいわゆる帰国子女という枠になります」
「はい、九重・アリアンナ・シャーロットデス。
父が日本人で母がアメリカ人のハーフとナリマス。
どうぞよろしくお願いしまス」
ああ、なるほどな。
アメリカの学校は卒業が5月から6月で夏休みが3か月ほどあって、入学式は9月だからな。
アメリカの学校の卒業に合わせるなら5月末は転勤や転校に切りがいい時期だったんだろう。
「小さいころには日本にイタこともありましたが、10年ぶりに日本に帰ってきて、いろいろワカラナイこともあります」
「ということで皆、是非仲良くしてあげてほしいとおもいます。
席は……西海枝さんの前でいいでしょう」
あいうえおの順番的にいえば、まあ妥当かな?
でもそこの席って空いてたっけ?
「あ、はい、わかりました」
と西海枝さんが答えて九重さんが席までやってきた」
「ヨロシクオネガイシマス」
そういって、右手を差し出す九重さんに西海枝さんが戸惑っている。
なので俺は助け舟を出すことにした。
「あー、九重さん?
日本では挨拶で握手やハグをするのは一般的じゃないよ?」
九重さんはきょとんとしたあとで、さっと手を背中に隠して少し照れながら言った。
「エ、ア……そうでしたネ。
アハハハハ」
「ん、まあ、いろいろ生活習慣の違いがあって大変だと思うけど、徐々に慣れていけばいいと思うよ」
俺がそういうとコクコクうなずいて九重さんが言った。
「あ、ハイ、ソウデスネ」
はあ、なんかまた少し手がかかる女の子に出会ってしまった気がする。
春ももう終わりなのにな。
春は出会いの季節編 完
夏は急接近の季節編へ続く




