龍神教団 1
新章に入ります。
「何があった?!」
僕が駆け寄ると、ゴルドがゆっくりと上半身を起こそうとするが、どこか痛めている様で、顔を歪めて、必死に痛みに耐えていた。
「痛っー! あんのやろう手加減無しでぶっ放しやがて」
「一体、何があったんだ?!」
「分からん、ただ、白いマントと装束に身を包んだ男が二人、女の子らしい子を布に包んで馬車に乗ろうとしていたんで、不審に思って声をかけたら、いきなり火球魔法をぶっ放してきやがったんだ」
「こんな街中で?」
「あぁ、いきなりだったんで、対処も殆ど出来なかった。まぁ普通なら死んでいるところだったぜ」
そう、言いながら懐から、掌大の紙を取り出して僕に見せてくれた。
「そうか、それ役にたったんだな」
僕が呟くと、その紙は何の干渉もなく一気に燃え出し跡形も無く消えていった。
これは、僕が魔力紙という魔力が込められた紙に、魔法陣を書いた術式魔術の起動魔法具だ。
これに、魔力を入れ発動させると、簡易の術式が一瞬で起動する防御アイテムで、E組のみんなや、アルーラやルーフィに護身用として持たせていたんだ。
「取り敢えず、ゴルドが無事で良かったけど・・レノア!」
「はい、たぶんその女の子はクルル様ではないかと」
「え? あれクルルちゃんだったのか?!」
「ああ、今、店の中もファーナに探してもらっているんだが、まず間違いない」
ゴルドの顔が強張った。
「くそ! 俺がちゃんと対応出来たいたら・・」
悔しがる、ゴルドだけど、これは仕方がないと思う。
「こんな事に対応できる人なんて、だれも居ないよ」
「でも・・・」
落ち込むゴルドの肩を叩いて、しっかりしろと促す。
さて、クルルが攫われたとして、レノアが思ったより取り乱していないのが気になる。
「レノア・・・・!」
いや、前言撤回。表情を見る限り、冷静に保っている様に見えるけど、目が血走っている! 気力と魔力がどんどん上がっている。見た目と違って暴走しかけている?
「レノア!」
「は、はい!」
「一回、気を静めて! 下手に動くとクルルに危険が及んでしまうかもしれないぞ!」
「! ・・・す、すみません」
よし、少し落ち着いたかな?
「フェル様!」
ファーナが店の中から出て来た。
「クルルちゃん、何処を探しても見当たりません!」
「確定だな」
「はい・・・」
「レノア、大丈夫?」
「は、はい・・いえ・・・」
相当、気は立っているみたいだけど・・・
「レノア、何かクルルの行き先に心当たりでも?」
「・・・・・思い当たる事は、有り過ぎてかえって分かりません」
有り過ぎるのか。クルルとレノアって、そうとう複雑な状況なのかもね。
「ただ」
「ただ?」
「クルル様の跡を追う事は可能です」
そう言って、僕に右手の人差し指に嵌めてある指輪を見せてくれた。
「これは、私とクルル様の魔力だけに反応する、魔術石が嵌め込まれています」
「ああ、登録してある魔力が引き合う魔道具だね」
「? はい。ご存じでしたか。 結構レアな魔道具のはずですが」
ああ、そうか。あまりにも見慣れていたから、どこにでもある気がした。
これ、300年前の僕が作った魔道具に一つなんだよね。
「まぁ、それはまた説明するよ。で、その魔道具でクルルの痕跡をたどるんだね」
「はい。でもあまり間が離されると効果が消えてしまいますが」
当時で、1000フィーダくらいだったかな? この帝都内を把握するには小さ過ぎるか?
「よし! 直ぐに追いかけるよ!」
「レノア、案内頼む」
「宜しいのですか?」
「何が?」
「・・・この件は、私共の関係の事かもしれません。フェル殿が関わる必要がありませんし、それにご迷惑が・・」
「? おかしな事言うね? 友達でしょ? 十分に関りがあるじゃない? 僕を慕ってくれるクルルのピンチなんだから、助けに行くのは当然だと思うけどね」
「・・・・ありがとうございます」
「ファーナ!」
「はい!」
「ゴルドの事頼む。で、直ぐに学校に戻って、サリダ学校長に報告をお願い」
「わ、分かりましたわ。この馬鹿をほっとく訳にもいきませんし、確かに承りましたわ」
「よろしくね」
僕とファーナは頷く。
「それでは、私が先行します。フェル殿は後を付いて来てください」
「了解!」
店屋の前は、逃げ出してきた人や、野次馬連中でごった返していた。
遠くでは、衛士の様な者が近づいて来る気配もある。
ここの収拾はその人達に任せておこう。ここで衛士に捕まったら、解放させるまでに時間が掛かり過ぎてしまう。
僕と、レノアはお互いが確認する様に首を縦に振ると、レノアが先ず街中の方へと駆け出していった。
僕はファーナに再度ゴルドの事を頼んでから、レノアの後を追って、騒然とする現場から遠ざかる。
それにしても白装束の二人の男。
同じ服装に身を包む者なんて、良い者か、悪の集団かどっちかというのが相場何だよな。
嫌な予感がする中、レノアの後を追って行く。
読んでいただきありがとうございます。




