騒がしい日常 7
お約束? でも急展開。
階段を上がり、2階のフロア―に立った僕は、目の前の光景に息をのんだ。
老若男女問わず、そのフロアーに居るのは僕とゴルド以外は全て女性。しかも僕達が入って来た事で、一気に視線を集めてしまったようだ。
そりゃそうだろう。ここは男は来ちゃいけない。
「フェ、フェりゅ!」
声が裏返っているぞ、ゴルド。
お店にいる女性の視線が・・・・あ、ゴルドに集中してる? その痛い者を見る視線に晒されてゴルドの顔色が一気に青ざめる。
「す、すまん。さすがに俺はむりだ。さ、先に店を出てるぞ!!」
と、言葉を残し脱兎の如く階段を駆け下りていった。
ゴン! バタン、ドン! ガラガラ! バタン!
一体何がどうなったらそんな擬音を残して走れるんだ?
「どうしましたの? ゴルドの馬鹿が急いで店を出ていったようですわね?」
「それわね? ここに居る事は男にとって天国と地獄を一度に味わえる禁断の場所だからだよ」
「そうですの? でしたらフェル様は大丈夫なのですか?」
「大丈夫に見える?」
「ねえ、ねえ! お兄ちゃん! これどうかな?!」
状況関係なく、クルルが僕の目の前に物凄く薄い生地に小さなフリルで飾られた、ピンク色の小さな物体を、両手で広げながら突き付けてきた。
「え~と、その、これって何かな?」
一応、とぼけてみる。
「え? 知らないの? パンツだけど?」
「そ、そうだね。で、これクルルが穿くつもりなのかな?」
「似合わない?」
「い、いや、似合ってると思うけど、僕に見せても大丈夫なの?」
いや、そこで不思議そうに僕を見ないで欲しいんだけど?
「お兄ちゃんなら、大丈夫だよ?」
「な、何故かな?」
「う~ん、お兄ちゃんだから?」
うん、答えになってないぞ。
「クルル、ごめん。よく分からないんだけど、教えてくれない?」
「う~ん、ひ・み・つ」
なんか、ここに小悪魔がいるんですけど・・
パンツ握りしめて、嬉しそうに僕を見ないで! 周りのおば様やお姉さま方が好奇心丸出しって顔でこっちを見ているんですけど!
「じゃあ、そういう事で他の下着も持ってくるから一緒に選んでね♪」
僕が手を伸ばし止めようとしたけど、間に合わずクルルは、店の奥の、勝負仕様、とか書かれている案内板の方へと駆け出して行ってしまった。
だいたい、何だ!? その勝負仕様というのは!
「クルル様も子供、子供と思っておりましたが、ここまで成長されているとは、このレノア、感激いたしました!」
うお! 何故か僕の後ろで涙を流しながら、うん、うん、頷いているレノアがいた。
「レノア、頷いてないで、ちょっとクルルを止めて下さい! いくら何でも嫁入り前の女の子が男に下着を見せびらかすのはどうかと思うんだけど?!」
「問題、ありません!」
「どこが問題無いって言うんだよ!!」
「あれは、商品の下着です。実際に穿いていた物ではありませんので」
そういう問題か?!
「それは、おかしいですわよ。レノアさん」
お! さすがファーナ! 歩く常識者!
「穿いている、穿いていない、なんて関係ないのですわ!」
うん、うん。
「こんな人の目があるところでは、まずいに決まっているのですわ!」
うん、うん。
「もっと奥のフィッティングルームとかでして欲しいですわ!」
うん、うん・・・・・そこじゃな――い!!
なんで、不思議そうな顔をするのかな?
なんだか、僕の周りにいる女の子達って、僕に対して異性というハードルが低すぎないか?
それとも、僕を男としてみていないとか?
どちらにしても、身が持たない。
ここは、クルルが戻ってくるまでにこの店から脱出しないと・・・?
あれ? 遅いなクルル。
そんなに広い店でもないし、選ぶにしてもちょっと時間が掛かり過ぎるような?
「レノア、クルルちょっと遅くないかな?」
「・・・そうですね。気配もしません・・・ね。ちょっと奥の方を見てきます」
僕の言葉に少し不安な顔になったレノアが店の奥に消えて行く。
その時だった。
ドオッゴオオオン!!
ビリ、ビリ、ビリ、ビリ!
店を震わす轟音と振動が襲って来た。
「きゃぁあ!!」
「な、なんですの!?」
「お母さま!」
「み、皆様! お、落ち着いて下さい!」
店の中にいた客も店員も突然の出来事に、慌てふためき、騒然となる。その殆どがパニックになりかけ一斉に階段の方に集まって我先に逃げようと混雑していた。
く、な、何があった?
「フェル様、いったい?!」
「分からない! でも外で何かが爆発したんじゃないかと」
「フェル殿!」
レノアが、階段に向かう集団を掻き分け僕の所に駆け寄ってきた。
「クルル様、見当たりません!」
「?!」
嫌な予感がする。
僕は、外の方が気になり、降りようとするけど、階段は人でごった返していて直ぐに降りれそうにない。
「フェル殿! お任せを!」
僕の考えている事が分かったのか、レノアがいきなり叫ぶと、僕をお姫様抱っこで抱え上げてきた。
「え?!」
「危ないですので、私の胸に顔を埋めておいてください!」
「え、ええ?!」
言われるがままに、僕はレノアの胸に顔を埋めた。
あ、結構レノアって胸があるんだ。
などと思っていたら、一瞬身体が後ろに持って行かれ、次の瞬間、浮遊感を体験した。
ガシャアァアァアンン!!
たぶん、ガラスが割れる音だ。
窓を突き破ったのか? ここ2階だぞ!?
僕は衝撃が来ると思って身を強張らすが、次に感じたのは真綿の上にでも乗っかった気持ちにさせられた。
「大丈夫ですか? フェル殿?」
「え? あ、うん。僕は大丈夫・・・・じゃなくて! レノアの方こそ大丈夫なの?!」
「はい、問題ありません。いつも鍛えてますから」
あまりにも普通に言うものだから、それ以上、言う言葉が無かった。
と、とにかく今は、外の現状が気になる。
僕は、顔を横に向け周りを見渡す。
店から少し離れた所で石畳の道から、炎と煙が上がっているのが見えたので、そこへ急ごうと体に力を入れた。
「あ、ん! その、フェル、殿」
「え?」
「あ、あまり手に力を入れられると、その、胸が、う、ん」
レノアの甘ったるい声がした。胸? ん? 僕はレノアの胸の方に視線を向けると、僕の手がレノアの膨らみの上を完全に覆っていた。
「お、お前ら、人が、た、大変な時に、何、やってんだ?」
ゴルド?
声の方に視線を移す。
そこには、全身あちこちを焼け焦げた跡が残り、呆れた顔で横たわるゴルドの姿があった。
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