騒がしい日常 1
新章です。ちょっと日常を見てみます。
「ああ、良い天気だ」
僕は学生寮のラウンジに設けられている窓際の小テーブルに陣取り、外の景色を眺めながら、朝食後のティータイムを楽しんでいた。
「なあにがティータイムだ。顔が死んでるぞ! 現実逃避するな!」
今の僕にとっては、不快でしかない男の言葉に。耳を傾けるなど、考えるだけで無駄である。
「何、外ばっか眺めてるんだ? ちゃんと周りを見ろよ?」
誰かが何か言っているけど、この暖かな陽気の前にはただの戯言にしか聞こえない。
「フェル、このままずーと一日こんなところに居るつもりか? みんなもどうなんだ?」
みんなだって? 僕は今一人さ。この時間を有意義に過ごす為に僕は一人の方が良いに決まっているよ。
「この状況で、よくそんな一人の世界を作れるな?」
「ふ、心頭滅却すれば火もまた涼し、と昔の人は言っていたのだよ。何事も精神力がものを言うのさ」
「それで、その精神力はもつのか?」
「・・・・・・・・・」
「ん?」
「ゴルド・・・」
「ん?」
「どうしたら良いと思う?」
「判んねえ」
親友のゴルドにも匙を投げられてしまった。
「ねぇ、お兄ちゃん、このジュース、美味しいね!」
「そうだね。クルル」
嬉しそうにガラスコップに入ったオレンジ色のジュースを飲んで見せる。
うん、可愛いし心休まる光景だ。
だが、何故だ、何故クルルは僕の膝の上に座っているんだ?
確かに背は僕より小さいけど、それほど極端な身長差じゃないので、僕の顔半分はクルルの頭に隠れていた。
「どうしてクルルはここに居るのかな?」
「え? お兄ちゃんが居るから?」
首を傾げないで欲しいんだけど。
「変?」
「いや、まあね」
「でも、ここじゃないとお兄ちゃんとくっ付いて座れないんだもん!」
唇を尖らせて、頬を膨らます。
そんな可愛い仕草見せられると何も言えなくなる。それならば・・
「ねぇ、アルーラ、もう少し離れて座らない?」
「な! フェル! フィアンセに離れろって言うの?!」
やはり怒られた。
「でもね、いくらフィアンセでも、これは近づき過ぎじゃない?」
うん、これはどう見ても近づき過ぎのはず!
なんで僕の左腕が、アルーラの巨大な二つの山の谷間に押さえ込まれているんだ? 公衆の面前でだぞ? いや、人目が無ければいいのかって問題でもないが、これはちょっと問題があると思うのは僕だけじゃないはずだ。
「だったら、ルーフィにも言いなさいよ」
そうきたか。
確かに、状況は右腕と左腕の違いだけで、シチュエーションは全く同じ!
「ルーフィ、君も少し離れた方が良いと思うのはおかしいかな?」
「おかしい」
即答ですか。
「いや、別にルーフィとはフィアンセっていう訳でもないしね、こういう事はちょっと・・」
「アルーラだけずるい。初キッスは私が先。優先権を主張」
「ルーフィが何を言おうとも、フィーレフューナス王国の貴族位を授ける事が決まっているフェルの優先権は私の方があるの!」
「ばあちゃんが、今回、私を助けた功績にフェルに帝国子爵位を授けると言っていた」
「はあ? サリダ様が?」
「その上で、私もフェルのフィアンセとして認めてもらう」
「そんなの破棄よ!」
「もう、無理。ばあちゃんが帝国議会に上申して、無理矢理、皇族承認をもらっている頃」
「なんて、手が早い・・でも、私のお婆様がそんな事お認めになる訳がないわ!」
「それも、大丈夫。ばあちゃん達、これで私達も姉妹だね、とか言って喜んでいた」
頭が痛い。
「はあ、お婆様達、絶対に面白がっているわね。まあ仕方ない。フェルを独り占めにしたいのは、あるけど、逆に考えれば、ルーフィが居れば、これ以上変な女が入る隙が少なくなるかも・・・」
「そう言う事。アルーラ、フェルを守るよ」
「分かったわ! これで私達も姉妹だね」
「じゃあ、私がお姉ちゃんという事で」
「は?! 第一夫人は私なんだから、お姉ちゃんは私でしょ?」
「誕生日は私の方が早い」
「ちょっと、向こうでじっくり話し合いましょうか?」
「望むところ」
ようやく、解放された。やれやれ、まさかこんな事になるとは・・
読んでいただきありがとうございます。
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