模擬戦 5
ルーフィがピンチ! フェルは助けられるか?
「ねえ! ルーフィ、あれ見て!」
「何? 私の気を反らそうとでも?」
「違う、違う。あの結界よ」
アルーラは自分達の周囲を取り囲む様に起動している、2重の結界を指差して言った。
「凄い、何あれ? 結界?」
「そうよ、フェルがしてくれたんだ。私達に思いっきりやれって」
「なるほど、あれなら大丈夫?」
「うん! だから行くよ!」
「分かった」
何か、二人が動きを止め話し合っているように見えたと思った瞬間、一気に二人に纏う魔力の本流が膨れ上がった。
「行くわよ! 私の最強の精霊魔法! 水の精霊王、アクアールエレメン様! 顕現!」
「それじゃ、私も、来い、幻想剣ファントムバラシュ」
先程までの荒れ狂った暴風が一気に止み、静かな世界がいきなりやって来た。
これは、二人の顕現させた最大最強の力が、この周辺に重い圧力を生じさせているためだ。
本当に物音一つしない。
あれに、僕が支援強化して、本気でぶつかり合ったら、この訓練場どころか、この学校の大半が塵に変わるぞ?
「じ、時間でしゅ、し、しえんひょうかを・・・」
お、この状況でもなんとか、己の仕事は全うしようとする、ルーデフィスタ先生。へたりこみながらも、時間経過を伝えられた。
ちょっとは根性あるじゃないですか。それに引き換え、レバイティ君はその場に力なく尻をつき、項垂れているだけだった。
一応、ルールだから、アルーラに支援強化掛けるけど、大丈夫だろうか?
「アルーラ、いくよ!」
「うん! 来て!」
アルーラの返事を確認すると、僕は両の掌をかざし、魔力の流れをアルーラに向けて送り出す。
「ん! あ、あん!」
「アルーラ、変な声出さないでよ」
「だ、だって、フェルが私の身体を丁寧に撫で回すような、気持ちいい感覚が走るんだもん!」
慣れるまでは仕方ないか。でもこの時の表情は僕以外には見せたくないな。後で何か方法を考えないとな。
「よし、準備整ったよ!」
「・・・・凄い、身体が暖かい、それに軽い。私自信を感じないくらいだよ。その反面身体の奥底から力が溢れ出てくる・・これがフェルの支援強化」
「どう? 何か変な所は無い?」
「・・・・・・・・・・・・」
「ど、どうしたの!? 何か不味い事でもあった!?」
「・・・癖になりそう・・・」
さいですか。
一方、ルーフィとレバイティ君は・・・・まだ支援強化出来てないのか?
「おい」
「・・・・・・・・・」
「おい!」
「は・・・え? な、何だ?!」
「何だじゃない。 早く私に支援強化を掛けろ」
「え? な、何で?」
あれは、駄目だ。レバイティ君、完全に自分を見失っている。
「何が、何でだ。 お前が模擬戦をするの、私が手伝っている。 忘れた?」
「そ、そうだ! 私はあのくそ生意気なガキに私の力を示す為に・・・」
「ごたくはいい! 早くしろ!」
相当、ルーフィ様苛立っているようだな。
「あ~あ、ルーフィがあんなに怒るなんて珍しい。この後模擬戦終わったら、ただじゃ済まないわよ?」
アルーラが残酷な事を言っている。でもたぶんそうなるのだろう。
「はは! お任せを! このレバイティが真の魔導士たる支援強化をお見せしましょうぞ!」
あ、ルーフィ様、あんなに大きくため息をされて、なんだか今にもハルバートに顕現しているファントムバラシュをそのまま、レバイティ君に叩き込みそうな雰囲気だ。
ようやく、レバイティ君が両の掌をルーフィ様に向け、魔力操作を開始した。
「行きます!」
え? ちょ、ちょっと!
「ま、待て! レバイティ!! そんな相手の魔力を見ずにいきなり強化なんか掛けるな!!!」
僕は、自分の心臓が大きく跳ね上がるのが分かった。それぐらい今の状況はやばい! 吸血鬼族に伝わる、最強の攻撃魔法ファントムバラシュを顕現させている状況で、その魔力の流れも把握せずに、単に支援強化なんかすれば・・
「ぎゃああ!!」
可愛らしい容姿のルーフィからは想像もつかない悲鳴が、訓練場に木霊する。
「アルーラ! 支援強化解除するよ!」
「う、うん! フェル! ルーフィが!」
「分かっている! 僕がなんとかする! アルーラはあの馬鹿野郎が他に何もしないようにぶっ叩いておいて!」
「わ、分かった! フェル!」
「ん?」
「ルーフィをお願い!」
僕は無言でアルーラに親指を立ててみせると、ルーフィの側に駆け寄った。
「き、貴様! 今は模擬戦中だぞ! な、何を・・!」
ドン!
「ぐっはあ!!」
レバイティはアルーラの一撃を腹にもろに貰い、涎を撒き散らしながら、地面につっぷした。
「レ、レバイティ! お前達何を!?」
面倒くさいな! このルーデフィスタの一族は!
「今の状況が分からないのか!」
「は?」
駄目だこいつら。
「ルーフィ様を見ろ! 完全に正気が失せて、魔力が暴走しかかっているのが分からないのか!!」
「フェル様!」
「ルールディ先生? ちょうど良かった。レバイティの馬鹿が失敗しやがった。このままじゃルーフィの命が消え、ファントムバラシュの力が一気に解放されてしまう!」
一瞬ルールディ先生の顔から血の気が引いた様に見えたが、すぐに正気に戻り、冷静な顔つきになってくれた。
「分かりました。ルーフィ様の事はフェル様に任せれば良いですね?」
「ああ、なんとかしてみる」
「では、私は他の教員にも頼んで生徒の避難と、防御結界の多重展開を指揮してきます!」
「お願いします! それとこのルーデフィスタ先生もどっかに連れていって下さい!」
ヴォオオオ!!
「うわああああああ!」
あ、いきなり魔力そのものを球形に圧縮して砲弾のように飛ばすと、ルーデフィスタ先生にもろに当たり、その勢いで訓練場の外に飛ばしてしまったルールディ先生。
「さすがです! ルールディ先生!」
「えへ、褒められましたね。それでは、後はお願いしますね」
そう言い残し、先生は外で慌てふためく生徒達の方へと向かわれた。
「アルーラも避難を」
「私はここに居るよ」
「でも、」
「フェルのところが一番安全」
う、か、可愛いじゃないか。ここまで信頼されたらやるしかないな。
「ルーフィ! 今助けるからな!」
読んでいただきありがとうございます。
続きを楽しみしていただける物語が書けると嬉しです。




