1年E組 6
アルーラさんに気をつけて?
朝、目が覚めると、カーテンの隙間から弱い太陽の光が差し込んでいるのに気付いて、起き上がると見慣れない部屋に一瞬戸惑ってしまった。
「ああ、そうか。ここ学生寮なんだ」
まだ働かない頭のまま、ベッドから抜け出し、洗面室に向かい、昨晩にメイドの方が用意してくれていた水差しに入っている水を洗面器にあけ、顔を洗う。
この水、毎晩、毎朝、この寮をきりもりするメイドさんが準備をしてくれるのだ。元素属性や無形属性を持つ魔導士なら、水をその場で出せれるんだろうけど、僕は出来ないからね。メイドさんに感謝だよ。
「ふう、気持ちいい」
顔をタオルで拭いて洗面所を出る。
それにしても至れり尽くせりだね。ラリーアの別宅に住まわせてもらっていたから、多少は慣れたけど、ほんの半年前は、人としての最低限の生活さえしてなかった僕が、こんなに恵まれた生活が出来るようになった事がちょっと不思議な感じがしていた。
その上、前世の記憶まであるんだから、たまに混乱することもあった。だけど、最近この子供の身体に会わせるような言動や行動が出てくるし、それに違和感を覚えなくなってきていた。
たぶん精神安定の為には必要な事なのかもしれない。
「さて、歯を磨いて、制服に着替えたら朝食に行こうかな」
僕はもう一度洗面所に入ると、植物の茎で繊維質の多い部分を解した歯ブラシで、これも植物から取りだした磨き粉を使用して歯を磨く。
これ一つとっても結構高級品だ。庶民はもっと固い木の枝を解したものを使っているし、前の僕は殺菌性のある植物を森で見つけ、それを噛んで濯ぐくらいだ。
でも案外、それもキレイにはなるんだよ?
昔の事を考えながらしていると直ぐに歯磨きが終わってしまった。
ちなみに、お風呂は部屋には無い。共同の大浴場が数ヵ所あり、それを生徒は使用しているんだけど、なんと天然温泉なんだ。凄いよね。
「えっと、着替え、着替え、と」
僕はクローゼットに用意されてあった、白のシャツや制服を確認してからパジャマを脱ぎ始めた。
バタン!!!
「フェル! お! はようー!!」
「うわ! ア、アルーラ?!」
あまりの突然の事に、何の防御態勢も出来ないまま、アルーラの激しいジャンピングタックルをもろに受け、その勢いのままベッドまで飛ばされてしまった。
「フェル~」 ぐりぐりぐり 「フェル~」 ぐりぐりぐり
「こ、こらー! アルーラ! 駄目だって! いきなりノックもしないで入って飛び付くなんて、王女ならもっとおしと・・・ちょっと待って?」
僕は物凄い違和感を覚えてしまった。
「ここ、男子寮だぞ? それに扉、鍵がかかっていたはずじゃあ」
そうだよ。この寮は男子と女子で建物が別で、簡単には行き来出来ないように申告し許可がないと入れないようになっているはず。しかも完全個室制で、鍵を掛けられるようになっているのに?
「大丈夫! 寮官のお婆様に男子寮入室フリーパスもらってるし、フェルの部屋の合鍵もちゃんともらってるから!」
ラリーア! なんて事すんだ! 自分の孫に何かあっても良いのかよ!
「あ、お婆様がフェルに伝言だって。何かあっても許す、だって。なんだろうね? そうそうサリダ学校長も、伝言があったんだ。フェル頑張れ! だって」
あいつら~! 楽しんでやがるな?!
「と、とにかく疑問は解けたから、上から退いてくれ! それに着替え中で上半身裸なんだぞ!」
「うん、フェル可愛い!」
「じゃなくて、こんなところ誰かに見られたら大変だろ!?」
「大丈夫、大丈夫。優しくするから」
話が合ってない!!
と、とにかく早く退いてもらって着替えなきゃ・・・
「お~い、フェル。準備出来たかあ? 朝飯行く・・ぞ?・・!」
運が良いのか悪いのか。
アルーラが扉を開けっ放しにしていた所に、ゴルドランが朝の誘いに来てくれてしまっていた。
「ゴルド!、こ、これには訳が!」
「・・・・・すまん、俺の勘違いだった。お前は良いやつだと思ったんだが、それは違ったようだ。いきなり部屋に女を連れ込むとは、男の風上にも置けねえやつだ!!」
捨て台詞を吐いて、その場を立ち去ろうとするゴルドラン。
「ちょ、ちょっと待って! アルーラ退いて!」
「どうして?」
ああ! 今日も平和な一日にはほど遠い日になりそうな気がする・・・
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