1年E組 4
カルファーナ嬢は良い子だった?
「しかし、学校側がそんな事考えているとは思わなかったよ」
「え? 何の事?」
「いやね、E組でクラスメイトの紹介があった後、ルールディ先生が言った話なんだけどね・・」
僕は今、E組のクラス紹介が終わり、一日目の学校生活が終わったので、学生寮の共有フリールームでアルーラと今日あった事を話していた。
ここは、一年生専用の学生寮の中に在って、戦士課棟と魔導士課棟に挟まれる共有棟に設けられた、皆が自由に使える大きなスペースになっていた。
ここには、いくつかのソファーセットがあったり、衝立で仕切られただけの5、6人が打ち合わせできるミーティングルームがあったり、玉突きや、カード、ボードゲームが出来るテーブルも幾つかが並べられていた。これらは就寝までの自由時間には、誰でも使え、戦士課と魔導士課の生徒が共同で使う事できる場所になっていた。
ここで、同じクラスや同課の生徒、そして違うクラスや違う課の情報交換や親睦の場所として使われる事になるのだろう。
僕は、ここのソファーの一角にアルーラと一緒に座って話をしていたのだが、何故か僕達の廻りのソファーは誰も使わず、遠巻きにされながら見られているという状況になっていた。
「そういうことね。それってお婆様も言っていたけど、今、この世界はグルフェル様のお陰で平和にはなったけど、その神竜教団の事もあるし、いつ300年前のような有事が発生しないとも限らないからって、グルフェル様のような魔導士の育成、発掘は必要な事なんだって」
「うん、ルールディ先生もそう言っていた」
「でも、なかなかそういう魔導士は見つからないとか言っていたけど、今回、E組を新設したのは、それだけの逸材が複数人見つかったからなんだと思うの」
そうなんだ。ルールディ先生にも聞いたけど、僕が死んで300年間、そういう魔導士は一度も見つからなかったらしい。それなにの今回、僕以外に4人も見つかった。
学校側としてはこの4人、僕もいれて5人には、賢者以上の魔導士に育てる必要があったので、今回E組を急遽新設したらしい。
でも、今までいなかったのに、僕が転生し覚醒した年に、これだけの有力な人材が出てきたのは偶然なんだろうか?
もし、女神アマラス様に会うことが可能なら聞いてみてもいいかもしれないな。
「だから、E組は時別クラスらしいんだけど、その事は極力内密にしたいんだって」
「どうして?」
まあ、これだけ人が遠巻きにしてくれていたら、聞こえないよね?
僕は、アルーラの耳元に近づき囁くように話した。
「さっき言っていた神竜教団の事もあるし、あまりそういう情報は出回らない方が得策らしいんだ。だからアルーラもあまり喋らないようにね?」
「・・・・・・・・・」
あれ、アルーラふるふる震えながら、身体が固まったように動かなくなったぞ?
「どうしたの? どこか具合が悪いの?!」
「フェ、フェル君・・・」
「な、なに!?」
「い、今のもっと~、気持ち良かった~」
耳元を僕の口の方に近づけてきたアルーラ。
「ちょ、ちょっと! アルーラ! ち、近いって!」
僕はジリジリと迫ってくるアルーラに押されて身体を仰け反りながら下がるけど、ソファーは延々の長さがあるわけじゃない。
「だ、駄目だよ! お、落ちる!」
「あん! フェル、可愛いい!!」
だあ! むんずと抱きついて来た!
アルーラのスキンシップには慣れたつもりだったけど、この状況はちょっと恥ずかしすぎる! こうなると精神年齢関係ない!
「あなた方! 公衆の面前で、なんてはしたない真似をされているの!」
突然、大きな怒鳴り声が僕の直ぐ横で聞こえた。
動けない身体はそのままに、顔だけ横に向けると、綺麗な太ももが見えた。
「な! どこを見ているのよ! このスケベフェル!!」
僕は慌てて上の方に視線を向き直すと、スカートの裾を両手で防ぎながら、顔を真っ赤にした、カルファーナ嬢が写った。
「ご、ごめんなさい! そのワザとじゃないから」
本当にワザとじゃないけど、ちょっと福眼だったのは内緒にしておこう。
「ま、まあいいわ。それより、ちょっと話があるのですけどいいかしら?」
「は、はい。ど、どうぞ」
僕はソファーに座り直して姿勢を正すと、アルーラも一緒に座り直すのだけど、何故か体を摺り寄せてきた。
そんなアルーラが気になるのかチラチラ視線を向けているけど、特に何も言わないようだ。
「えっと、その・・良いかしら?」
「え? あ、はい、どうぞ」
「その、先程は失礼して申し訳、あ、ありませんでしたわ」
「え?」
今、何て言ったんだ? 囁くような声だったので、よく聞こえなかった。
「で、ですから! 申し訳なかったと言っているのですわ!」
「は? はい。いえどういたしまして」
つい、変な受け答えしてしまった。
だって、何か謝られる事されたのか、ピンとこないんだもん。
「そ、その返事は、な、何ですの?」
「いえ、何故カルファーナさんが謝っておられるのか、よく分からないので?」
「はあ? あなた本当にお馬鹿なのですか? 私があれほど、あなたの事を無能なのに推薦を貰って、のほほんとして坊ちゃまだと罵った事を覚えていらっしゃらないの?!」
う~ん、どうだったかな?
僕は、先程、カルファーナ嬢と会った時の事を思い出してみる。
「あ、あああ! そう言えばその様な言葉、言っておられた・・・様な?」
確かに言っていたな。でも別段何か問題があるわけじゃないし、忘れていたよ。
「はあぁ、何だか拍子抜けですわ。あの後、あの強面の男子と一緒にルールディ先生にあなたの事を少し聞きましたの。平民出だという事や、親に虐待されて死にかけていたとか・・・ごめんなさい。てっきり温室育ちで世間知らずの坊ちゃんかと思って、つい罵ってしまいまして、本当に申しありませんでしたわ」
カルファーナ嬢が僕を正面にして深々と頭を下げられた。
どんなに下級でも貴族のお嬢様が平民での僕に頭を下げるなんて、なかなか出来ない事だよ。それだけでもこの女の子が良い子だという事が分かる。
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