入学 2
デートを満喫?
「で、この塔の向こう、城壁が見えるでしょ、あそこから奥が帝国の城、ウィルフィス城の敷地ね」
アルーラが指さす先を見ると、白く大きな壁が左右に広がるのが見えた。
あまり高い建物は無いのだろう、城壁からは少し屋根が見えるだけだ。それにしてもどれだけの広さなんだ? 見る限り先がはっきり分からない。
「それじゃあ、行きましょう」
「え?」
アルーラがスタスタと城壁のある方へと歩き出した。僕は慌てて追いつき並んで歩く。そのまま暫く広場を突っ切る形で歩いていたので、城壁のしかも正門へとたどり着いてしまった。
で、でかい! 正門の扉、どれだけの高さなんだ? 普通に3階建ての家よりも高くないか?
「お、大きいねぇアルーラ」
「ほんと、いつ見ても無駄に大きいわ」
サリダってこんなところに住んでるんだ。やっぱり皇族なんだな。こういうの見ると前世もそうだったけど、平民出の僕なんかちょっと考えにくい世界に思えてしまうよ。
正門には数人の衛士が直立で守っているし、城壁にも等間隔で衛士が配置されている。
これだけでもどれだけの数の衛士が居るのか想像もつかなかった。
「これだけ迫力があるから、観光客の人も多いのよ」
確かに正門前には結構な人が集まっているな。
ん? でも大人よりも子供の方が多くないか?
「ねぇ、僕達くらいの子が多い気がするんだけど?」
「ん? あぁ、たぶん育成学校の生徒、たぶん新入生だとか、じゃないかな?」
「え? そうなの?」
「うん、だって、この城の敷地内に学校も併設されているし、寮もこの中だもの」
え? ええ?! 城の敷地内に学校があるの?
まあ、正門から見える奥の方、異常に広い。あれ林? いや森があるのか? 中の状況がまるっきり分かりません。
「それじゃあ、入るわよ」
「はい?」
僕の返事を聞くよりも早く、手を繋いだままアルーラが正門を通ろうと歩き出したので、つられて僕も歩き出してしまった。
ガシャン!!
「待て!!!」
僕とアルーラが正門に入ろうと動き出した瞬間、正門を守るように立っていた衛士の内の二人が、手に持っていた大槍を僕達の目の前で交差させ、行く手を塞いできた。
「なんだ、きさまらは! 勝手に入ろうとするんじゃない!」
「なんでよ? 私達は育成学校ラグスウィル校に入学が決まっている生徒よ? どうして入ったら駄目なの?」
フードで顔を隠し、何も言わずいきなり入ろうとすれば、不審者扱いされてもおかしくないよ? アルーラ。
「生徒かどうか、入学証明書の提示もない、怪しげな服装の者を簡単に入らせる訳がなかろう!」
あ、少し衛士さん怒ってないか? そんな事常識だろ! と言っている気がする。
「それにだ、ここはウィルフィス城の正門で、皇族の方々や貴族院様や、各国の要人の方くらいしか通してはならない場所なのだぞ? ラグスウィル校の生徒なら東門の方から入れと通達文がまわっていたはずだ!」
ああ、そう言えばそんな事書いてあった。
僕達の騒ぎを聞きつけたのか、周辺に居た、たぶん同じ新入生の集団がこちらを見ながらヒソヒソと話し出していた。
「なら、何でこんなに正門前に学生が集まっているの?」
「それは、たぶん下見と観光よ。実際にここから入ろうなんて人はいないと思うわ」
「簡単に言ってますけど、アルーラは入ろうとしてたじゃないですか?」
「あら、私達は良いのよ?」
衛士を睨みつけ、頭に被っていたフードを脱ぐアルーラ。
「これでも、分からない?」
衛士は、アルーラの素顔をジロジロと見ながら考え込む。
「それがなんだ? エルフ族なぞ珍しくもないしな」
「はあ、私を知らないの?」
「知るわけがなかろう?」
この衛士さん、本当にアルーラの事を知らないようだぞ? これでは埒が明かないな。
「・・・・アルーラああああ~!!」
その時遠くからアルーラの名を呼び近づいてくる人影があった。どうも女性? あれ? 誰だ?
「げ、まずい!」
「何が、まずいの? やっぱりここから入るのよくなかったんじゃ?」
物凄い勢いでこちらに向かってくる女性が、一人? いやもう一人いるのかな?
皇城の奥から駆けて来てるって事は関係者だとは思うのだけど?
そう言えば、アルーラの名を呼んでいたような? 誰だろ?
「フェル、どんな事になっても、君の事は守るからね!」
え? ええ? 何? 絶体絶命のピンチなの? いきなりの展開過ぎない?!
読んでいただきありがとうございます。




