平穏な日 16
フェルはグルフェル
「・・・・そんな・・・」
「やはり・・・そうじゃったか・・」
ラリーアとサリダは、呆然として僕を見ながら呟いていた。
そんな彼女達に、僕は一歩近づく。
「ラリーア、サリダ、隠していてごめん・・・」
「・・・・本当なのですね?」
「うん・・・」
「どうして? どうしてもっと早く教えて下さらなかったのですか!」
「ごめん、最初は自分もびっくりしていたし、こんな子供になっていたからね。信じてもらえるか分からなかったし、ラリーアとアルーラを見ていたら幸せそうだったから、今更、僕の事を話しても仕方ないと思ったんだ」
今にも何かが溢れ出しそうなのを、必死に我慢して言葉を紡ぐラリーアに僕は正直に話す。
「フェル君? 何がどうなったの? 今の何? なんでお婆様やサリダ様の最強攻撃が消えて無くなったの?! あれはお婆様達が消したのではないよね?」
矢継ぎ早に質問をしてくるアルーラに、何と言って答えればいいのか、悩んでしまう。
「主様、やはり主様じゃの。不甲斐無いところは変わっておらんの?」
「はは、そうかな?」
「褒めてなどおらんぞ?」
「ご、ごめん」
ああ、この感じサリダは昔と変わらないな。
「さて、ラリーアよ、御主人のご帰還じゃぞ? つもる話は後にせんか?」
「は、はい! そうですね」
サリダの言葉に、ラリーアが頷くと、改めて二人が僕の正面向き直した。
「え? お婆様?」
「サリダ様?」
アルーラとルールディさんが、揃って驚く。
そりゃそうだろう。いきなり僕を前にして二人が膝を付き頭を垂れたのだから。
「ちょ、ちょっと! ラリーア! サリダ! な、何をしているの!?」
二人は無言のまま顔を俯かせ僕に見せない。ただ二人とも床に付く手が小刻みに震えているのがわかった。
「やっと、やっと、お会いすることができました・・・」
「ほんに、この日がくるとは・・長生きしたかいがあったというものじゃ」
僕は、何も言えなかったけど、二人のすぐ前まで行くと膝を付き、頭に手を置いた。
「黙っていてごめん。さっきも言ったけど、こんな子供の僕じゃ言っても判ってもらえないと思ったし、それに特に言うつもりは無かったんだ」
「・・・どうしてですか?」
ラリーアが俯いたまま聞き返してきた。
「う~ん、そうだね。君達が幸せに見えたからかな? 君にはアルーラという家族が居て、サリダにはルールディさんが居た。今のこの時間を僕が出てきて混ぜ繰り返す必要もないと思ったのかもしれない、かな?」
「主様は、相変わらず人の事ばかり考えておるのじゃ」
「え?」
「あたい達は、確かに今は幸せな時間を過ごしておるやもしれん。じゃがの主様はどうなのじゃ? 幸せだったと言えるのか?」
「幸せも何も、あの瞬間から、今この時代に転生したのは、ほんの一瞬の出来事にしか思えないから・・」
「つまり、あの死の体現をつい先ほどまで感じておられたのじゃろ?」
「・・・・・・・・」
「その上、ラリーアから聞いた話では、また死を垣間見る程の仕打ちに合われたと聞いたのじゃが?」
「・・・・・・・・うん」
サリダが頭に乗せていた手を取って、握り返してくると、ラリーアも同じように僕の手を握り、顔を上げ僕の目をじっと見つめて来た。
「早くに、気付けずにいて申し訳なかったのじゃ」
「サリダ・・・」
「私こそ、もっと早くに気付いておりましたら・・もっと早くにあの地を訪れていれば、もっと早くにお救い出来たやもしれません」
「ラリーア・・・」
「どうか、これからは、あなた様がお救いになったこの平和な世で、誰の為でもなく、あなた自信の為にお過ごしください」
「そうじゃぞ、もっと自己中心で良いのじゃ。それぐらいでないと、あたい達がつらいのじゃ」
「そうです、もっと我儘を私達に言って下さい! いっぱい甘えさせてあげますから!」
「いや、ラリーアよ、あまり甘えさせ過ぎもどうかと思うのじゃが? アルーラの事もある。主様は、女の子にモテルからのぉ」
「そ、それもそうですね。では、程々に甘えさせてあげますね?」
「ふっ」
「「ん?」」
「アハ、ハハハハハハハハハハハハハハ!!」
「どうされました?」
「主様、どうされたのじゃ?」
相変わらずだな、二人は。
「何かね、やっと戻って来たって感じがしたんだ。ラリーア」
「はい?」
「サリダ」
「なんじゃ?」
「ただいま」
「「!!」」
「う、うう、グルフェル、様」
「ぬ、主様・・・」
「「う、うっ、うわぁああああああああ!」」
二人は僕の手を自分の顔に押し当てながら、大粒の涙を流しながら大声で泣き出し始めた。
「フェル君! いったいどうしたのよ!」
「フェル殿! サリダ様は一体?」
アルーラとルールディさんにとっては異常に見えるのだろうな? 大の大人が、あ、サリダは見た目は少女にしか見えないか。まぁ大人が、5歳児の子供の手を握って大泣きしてれば変だよね?
「えっと~これはね、う~ん、つまりだね・・・実は僕、グルフェルって言う名前なんだ」
「グルフェル?・・・・」
「? どこかでお聞きした様な?・・・・」
「ば、ばきゃもの~!! 主しゃまは、ルールにょあこぎゃれの人じゃあ!!」
あ、サリダ、大泣きしているから言葉が変になっている。
「憧れですか?・・・グ、グルフェル・・・え? え?! ええ?! えぇええええ!! あ、あの、ファルナザードの救世主、唯一無二の大賢者、聖戦姫を独り占め! のグルフェル様ですかぁ?!」
最後のは、何?
あ、アルーラが睨んでる・・・
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