平穏な日 14
結婚?
僕は、自分の寝室に戻りソファーに座ってボーっと窓のから見える月を眺めていた。
時折流れてくる雲に隠れる三日月は、どこか寂しそうに見えてしまう。
あ~駄目だ。自分が思った以上に気になっているなぁ。
視線を戻し天井を見上げる。
アルーラ、悲しそうな顔していた・・やっぱり支援属性だけ、っていうのは考えてなかったんだろうな。
「これで、少し冷静に考えられる時間がアルーラにも出来たから丁度いいのかも・・・でも何だろうなぁ、この何とも言えない気持ちは? もしかしたらアルーラに嫌われるのを恐れている? まさかね」
前世の時もそうだった。支援属性しか持たないと判った時の友達の反応は皆同じだった。同情はしてくれるがそれだけだ。誰も僕をパートナーにしようとは考えない。それが普通なんだって分かっている。
でも、アルーラの顔を見た時、僕はもの凄く悪い事をした気持ちになった。初めて自分を情けないと思った。
「こんな事、ラリーアに会った時にも感じ無かったな・・・・」
まあ、支援属性しかないのは何となく分かっていたけど、まだこの体だからな、魔力制御も魔力量も小さすぎて、前世の力に遠く及ばない。今のままではアルーラ達に迷惑が掛かる。
推薦入学は断って、地道に入学試験で合格して、いつか必ずアルーラに認めてもらえるよう頑張れば大丈夫!
コン、コン。
扉をノックする音が静かな部屋の中を通り僕の耳に届いた。
誰だろう? こんな時間に?
「はい、どうぞ」
扉が開かれて、僕は少し驚く。
「ラリーア様、にアルーラ? それにサルーダ様? ルールディさんまで? どうしたのですか? 皆さん揃って」
僕は慌ててソファーから降りる。
「ああ、そのままで良いよ。ごめんね、こんな時間に全員で押しかけて」
「いえ、それは構いませんが、何分来られるとは思っていませんでしたから、お茶も何も用意しておりませんけど・・」
ラリーア様は、手で問題無いと振ってくれたので、僕は皆さんをソファーの方へと誘い座ってもらおうとしたのだけど・・・
「このままで構いません。それより大事なお話がありますので聞いてもらえますか?」
ラリーア様の何時になく真剣な顔に僕は息をのみ緊張してしまった。
「は、はい、どうぞ。やはり今日の属性の結果の事でしょうか?」
「そうね」
やはりそうか。さすがにゼロ持ちの魔導士を王家推薦で学校に入学させる訳にはいかないよな。ここは地道に試験を受けて、正規に入ればあとは僕の努力次第だし、その方が気が楽だ。
ただ、アルーラの事を思おうと・・・
「分かりました。大変無礼かとは思いますが、王家の推薦は辞退させていただき、入学試験を受ける事にします。そして必ず合格して、ゼロ持ち魔導士でも、頑張れば立派な魔導士になえるところをお見せいたします」
「? フェル君、何を言っているの?」
「え? ですから、支援属性しかない、ゼロ持ち魔導士ですから、育成学校への入学は推薦枠でなく、試験を受けてですね・・」
「フェル君の馬鹿!」
今まで黙っていたアルーラが、いきなり僕に向かって怒って来た。
「え? どうしたの? 馬鹿って、僕が?」
「そうよ! 何勝手に推薦を辞退だとか、入学試験をうけるとか言うのよ! それじゃまるで私がフェル君を見放したみたいじゃないの!」
え? アルーラ、泣いているの?
こんなに怒ったアルーラは今まで見たことが無かったので、自分でも可笑しくなるくらいに慌てた。
「ちょ、ちょっとアルーラ落ち着いて! 僕は何もアルーラが見放しただなんて言ってないよ? ただ支援属性しか持たない魔導士では王家の推薦を受けると対外的に問題があるだろうし、アルーラに迷惑が・・」
「だから、馬鹿だっていうのよ! なんで私に迷惑がかかるなんて勝手に思うのよ! 私は自分の感性に正直に生きたいの! フェル君は絶対に凄い魔導士になる! 私の感性がそう言っているの! フェル君自信が最弱だと思っているからそんな事言うのよ! 自分に自信を持って! 自分に正直になってよ! 私に絶対に凄い魔導士になるからパートナーになってと言ってよ! 人の事を考えるより、自分中心でもっと考えて良いんだよ!」
もの凄い勢いで捲し立てられた。
本当に情けない。アルーラに言われて初めて気づいた。僕は人の事を考え、僕以外の人が幸せならそれで良いと考えていた。でもそれは違うんだ。もっと自分を大切にしなきゃ他の人も大切に出来ない。せっかく神様に頂いた加護だもの、もっと自己中心的で良いのかもしれないな。
「フェル君、私じゃパートナーになる資格、無いかな?」
女の子のここまで言わせるなんて、本当に情けない。
僕は手を差し出す。アルーラに向かって差し出す。
「僕は、絶対に自分で納得できる魔導士になってみせる。誰にも負けない魔導士になってみせる。だからアルーラ、僕のパートナーになって。」
アルーラの涙が止まらない。でもその涙は先程までの涙とは違って見えた。怒りは消え、嬉しいような恥ずかしい様な色んな感情がつまった暖かい涙だ。
その涙を拭うこともせず、僕の手を両手でしっかりと握ってくれる。そのまま顔に僕の手を当て、うん、うん、と何度も頷きながら泣き続けるアルーラ。
それにしても、僕の方が身長が低いからどうしても僕の手がアルーラの顔の位置まで引き上げられて、締まらない恰好になってしまう。
男としては、身長も頑張って成長しなければいけないな。
「さて、ラリーア、なかなか良いものを見せてもらったが、結婚式は何時にするのじゃ?」
「何時でもいいわよ? 当の本人達の意思に任せましょう。それに母親の承諾もいるでしょうし?」
「そんなもの、ラリーアが一言いえば、あやつが嫌とは言わんよ?」
「そうね。サルーダとルールディさんの証人立ち会いもありますし、問題ないでしょ」
ちょっと、待て。何やら勝手に話が進んでないか?
「あのう、ラリーア様? 何やら不穏な話が聞こえたのですけど?」
「ああ、フェル君気にしなくていいわよ? それよりアルーラの事大切にしてやってね」
「ええ、それはもちろん・・・って何ですかそれは!?」
「え? アルーラをお嫁さんにもらうのでしょ? こう言ってはなんだけどアルーラは自慢の孫だからね。ちゃんと大切にしてほしいなと?」
「どこで、そういう話になるんですか!」
「え? もうそりゃあ、今の二人のやり取りを見たらねぇ」
「私も感動いたしました。若いって良いですね」
ルールディさんも涙を浮かべてしみじみと言わないで!
「フェル、二人で一緒に幸せな家庭を築きましょうね?」
アルーラ! いつの間にか呼び捨てになっているよ!
こうして賑やかな夜が更けていったのだが、今晩はそれだけでは終わらなかった。
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