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平穏な日 12

最弱のレッテル

「ハア、ハア、ハア・・・・す、すみません。お、遅れました」


教会の前で僕とアルーラは、膝に手を付きながら肩で息をするほどに、疲れきっていた。

あの後、調子にのったアルーラに連れられ、幾つかの洋服店や、宝石店、雑貨屋に露天にと、遊び回り、教会でラリーア様と会う約束の時間を30分程過ぎてしまい、全速力で教会へと

走り込んだのが今の状態だった。


あ、ラリーア様のこめかみに青筋が見える・・・


「アルーラ、後でお仕置きですよ?」

「ひっ!!」


物凄くにこやかに微笑むその顔には、何故か恐怖しか感じられなかったと、アルーラの後日談。


「フェル君も同罪です。別宅に帰ったら、個別にお話ししましょう。ね?」

「は、はい!!」


本当に怖かった。うん、昔も今も変わらずだな、いや今の方が迫力あるかも。


「ごめんね。フェル君」

「ん? 別にいいよ。僕も楽しかったし」

「!」

いきなりアルーラが僕の事をギュッと抱き締めてきた。

案外なれるもんだな。


「こら! そこ! 教会ではしたないですよ!」

「「すみません・・・」」


また怒られてしまった。これは駄目だな。アルーラの奇行に慣れすぎるとラリーア様に気苦労が増えてしまう。ここは僕がしっかりしないと!


などと新たな決意を心の内でしていると、建物の奥、礼拝堂が有るだろう入り口の扉から、一人の老司祭様が出てこられた。

白の貫頭衣の様な服装に金糸や銀糸で縁取られた袈裟を肩から掛けた、温和な顔つきの初老の男性だ。


「賑やかでごさいますな、ラリーア様」


顔と同じように穏やかな喋り方で、ラリーア様に近づいてくると、僕達の方を見ながら、お辞儀をされた。


「賑やかですまないな大司祭様」

「いえいえ、聖戦姫様と王女様にわざわざお越しいただけるとは、光栄に存じ上げればこそ、騒がしい事など些細な事でございます」


お、この大司祭様、温和な顔をされているわりには、軽く嫌味を言うあたりは結構油断できない人かもしれないぞ? 注意しておくか・・・、


「さて、準備は整っておりますので、奥の私の執務室へまいりましょうか?」

「さっそくで申し訳ない。フェル君、問題ないな?」

「はい、僕は全然問題ありません」

「では、こちらに」


大司教様はそう言って、礼拝堂の扉を開け、そのまま中へと入っていかれた。その後に続いてラリーア様が、そして僕とアルーラが並んでついて行った。


大司教はそのまま礼拝堂の中央の通路を正面に向かって歩む。するとそれほどの時間を掛けずに祭壇の前にと着いた。


「それでは、フェル殿でしたかな? このまま前にお進みになって祭壇前にあります神玉を触っていただけますかな?」


大司祭様の言葉の通りに僕は2歩程前に出て、祭壇の直ぐ下に鎮座している透明な球体の前に立った。

懐かしいな、昔僕が小さい頃に属性判定の為に使った神玉だ。

まさか、またこれに触る時が来るとはね。まあ前回は生まれ変わる前だけどね。


触る前にアルーラの方を見ると、物凄く期待に満ちた目で僕の事を見つめていた。

う~ん、そんなに期待されると気が重いな。

それで、気になったのか何気にラリーア様の方も確かめると、静かにでも何かを期待している様にみえた。

あれ? 期待? いや願っているのか? アルーラとは違う感じで僕を見つめていた。

余計に緊張してしまう・・・


「フェル殿、どうぞ手を」


大司祭様の促す声が聞こえたので、僕はそっと両手を神玉にそっと当てた。


「我が親愛なる神、アマラス神よ。かの者に良き力の道筋を示し給え」


大司祭様が神玉に向かって祈りの言葉を捧げると、神玉が淡く光り始めた。

始めは白い靄の様な物が球体の中に広がり始める。それと同時に発光も次第に強くなり始める。すると白い靄の中に色とりどりの同じような靄が現れては消え、現れては消えを繰り返し、常に変化し続けていた。

やがてその色の出現が納まり、光の光量も次第に納まっていった。


「はい、もう手を離してもよろしいですよ」


大司教の言葉通りに僕は手を離すと、その神玉に大司祭様は顔を近づけた。


「ん?」


小さな声で疑問を呟く大司祭様。

やっぱり、変わらないか。

僕は心の中で、予定通りの結果だった事に呟いた。


「これは・・・なんと言いますか・・・」


何故か、その結果を口にするのをためらっているようだ。

ああ、そうか。普通に考えれば魔導士の属性についての常識はこれでは駄目なのだ。

魔導士が実行する魔法は己の持つ属性が大きく関わる。自分の持つ属性が多ければ多い程汎用性が高い。

高位の戦士のパートナーになるには最低条件の支援属性、以外にどれだけの属性を持つかで決まると言われている。それは自分の持つ属性を戦士い支援付与出来るからであり、支援だけでなく、自らも戦える戦力となり得るからだ。

だから、魔導士の称号の様な言葉に、何個持ちと俗称される。属性を3つ持つ者は、三持と、

5つ持つ者は、五つ持ち、と。

そして、僕の属性は・・・・・


「大司祭様、そのまま仰っていただけますか?」


ラリーア様が、未だに答えない大司祭様に声をかけると、決意したかのように顔を引き締め真っ直ぐに僕の方を見ると、はっきりと仰ってくださった。


「フェル殿、あなたの属性は、支援属性のみです・・・」


只でさえ静かな教会が、音の存在しない世界では無いかと思える程の静けさが支配していた。


「フェル、君? 大丈夫?」


僕はいたって問題ないのだが、アルーラの方が心配そうな、悲しそうな、そんな複雑な顔を僕に向けていた。


「僕は大丈夫だよ。それよりアルーラの方が顔色が良くないよ?」

「え、だ、だって・・属性が・・・・無、だなんて」


お、失礼な、ちゃんと支援属性があるじゃないか。と、言いたいところだけど、支援属性は魔導士なら必ず持っている属性であり、属性持ちとは、支援以外の属性をどれだけ持つかを言うのでアルーラの言う通り、属性無、ゼロ持ち魔導士という事になる。

つまり最弱魔導士のレッテルを貼られるわけだ。


アルーラには悪い事したな。これで僕に幻滅するだろうか?

そんな心配が脳裏を過ったが、こればかりは仕方ない事なので諦めるしかなかった。


それにしても、これからどうするかだけど、女神様は前世の頃の力は取り戻せるとは言っていたけど・・・あれ? ラリーア様、僕の方をじっと見つめている? なんだろう? 嬉しそうにも見える?


まさか、この結果を望んでいた?


読んでいただきありがとうございます。

続きもまた読んでください。

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