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平穏な日 11

街中へ場所が変わります。

「嬉しいなったら、嬉しいな!」


僕の前を歩くアルーラが、スキップをしながら街中を進んでいた。

喜ぶのは良いのだけど、こう、人通りの多いところで歌いながらスキップする女の子、しかも外套のフードを目深に被って、顔をあまり見せないようにしているのだから、怪しさこの上なく見えるはずだ。

僕は、ゆっくりとアルーラから、距離を取ろうと、進む歩幅を縮めるのだが・・


「フェル君! そんなにゆっくり歩いていたら私と離れちゃうから手を繋ぐわよ」


そう言って強引に手を繋がれ、むやみに上下するアルーラの手に引っ張られ、街中を引きずられる羽目になってしまっていた。

僕も外套のフードで顔が見えないようにしていたので、怪しい子供二人が変に楽しそうに歩いているという、嫌でも目立つ状態だった。

なら、外套を脱げばとなるが、一応アルーラはこの国のお姫様であり、次期戦姫の最有力候補の一人でもあるので、もし正体がばれたら、町中はパニックになるとラリーア様が言っておられた。

だから顔を隠す必要があるのだが・・


「アルーラ、もう少し静かに歩こうよ。変に目立ってるよ?」

「え? そう? ん~・・やっぱり無理! フェル君とのデートだものつい嬉しくて、ね?」


ね? と言われても、デートではないはずなんだけどな?

そう、今日はこのコルドバの街のアマラス教会に用事があってやって来ていた。

僕の修練が始まってから、3ヶ月が過ぎ、魔力操作もかなり上達し、魔力魂の成長も順調だった。それに体の方がほぼ完治し、筋力も戻って来ていたので、ラリーア様が教会に行くことを薦めてこられたのだ。

理由は簡単。僕の魔導属性を確認するためだった。

あと、三ヶ月後、僕とアルーラは戦士・魔導士育成学校に通う事になっていた。将来を担う若人の学舎は世界各国に幾つか点在していたが、どの学校も優秀な人材を育てる立派な学校だそうだ。

僕が前生きてた頃は、戦争ばかりしていたから、学生をゆっくり教える場所なんかが存在しなかった。そう思えば、平和になったんだと改めて実感できる。


話しはそれたけど、その学校に行くにあたって、教会で属性チェックをし、入学時に申告しなければいけないからだ。

それと、後で聞いたんだけど、その学校に入学するのに平民出や下級貴族は試験を受ける必要があるらしい。

僕は、平民の子だから、試験を受けて入ると言ったのだけれど、アルーラとラリーアに反対されたんだ。

なんでも平民出でも試験で能力が高い事が証明されると、有力貴族の奪い合いが始まるらしいんだ。だからもし僕が試験を受けて好成績だったら、目をつけられてしまい、公平性を保つ為に王族といえど占有権を主張できなくなるそうだ。

ただし、初めから有力貴族や王族の推薦で入った場合はその限りではないらしいみたい。


「だから! フェル君はフィーレフューナス王家の推薦枠で入ってもらうからね!」


と、アルーラに強く念押しされてしまったのだ。

う~ん、ちょっとずるするみたいで気が引けるんだけどな。

でも、最終的には一人の魔導士に2、3人の戦士がパートナーになる事もあるそうだ。でもそれって相当優秀な魔導士じゃないと、複数人を一緒に支援なんか出来ないから大抵は戦士一人に魔導士一人というのが現実で、その上、専属パートナーを持つのは貴族とか王族に限られるらしい。

でも戦士で有能な場合は地位とか関係なしでパートナーを申し出る魔導士もいる。

つまるところ、必死に修練しお互いのパートナーを探すための争奪戦が繰り広げられるのが戦士・魔導士育成学校だという事だ。


「ねえ、ねえフェル君! あそこ! 可愛い洋服が売ってる店があるよ! 行ってみよう!」


考え事をしていたら、いつの間にかアルーラに連れられて街の商業街区にやってきていた。

色々な店屋が並ぶ大通りには、色々な人種の人が行き交っていた。

さすが、吸血鬼族の王国ラグスウィル国境に近いし幾つかの街道が交わる場所だから、人が物凄く多いな。

いや、そうじゃなくて!


「アルーラ、駄目だよ。ラリーア様が先に教会で準備されてるんだから、早く行かなきゃ行けないよ」

「え~! まだ大丈夫だよ! お婆様もゆっくりしておいでって言ってたんだし!」


顔が見えづらいせいか、僕の鼻の先にくっつく程に近づいて頬を膨らませて駄々をこねる。


「ち、近いよ! 鼻がくっつくよ!」

「・・・・私じゃ嫌?」

「!!!」


と、突然何を言い出すんだこの子は!?

自分でもハッキリ分かる。たぶん顔が真っ赤になってるし耳だって火照って熱い! 心臓ももバクバクいってる。こんなのアルーラに見られていると思うと、すっごく恥ずかしい!!


「私と、お店に入るの嫌?」

「へ?」

「だから、私と女性物が多く売ってる店に入るのは恥ずかしい? って聞いてるの?」


~~~~~~~!! ち、力が抜けたあ~。


「そ、そういう事ね」

「ん? 何だと思ったのよ?」

「ううん!! 何でもない! 大丈夫! 全然問題無いよ!」

「そう? やったあー!! じゃああの店入ろ!」

僕の腕を掴んで嬉しそうに、店へと向かって走り出すアルーラ。気付いてないようで良かったよ・・・・そうじゃない!! 教会に行かなきゃ・・・はあ、まあ良いか。こんなに喜んでいるんだから大目にみよう。

これ以上抵抗することも無く、僕はアルーラと一緒に暫しの街中デートを楽しむ事にした。


・・・・・・フェル君も、意識していた。私の事、ちゃんと意識してくれていた・・・チャンス!! 


と、心の中で握り拳を高らかに掲げているアルーラだった。


読んでいただきありがとうございます。また来てください。

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