平穏な日 10
フェル君がんばる
アルーラが慌てて止めようとするが、ルールディさんは聞く耳持たずせっせと支援強化の魔法と、荷重魔法をアルーラに掛けると、今度は攻撃系魔法の中の爆炎系を発動し始めた。
凄い! 同時に三つの魔法を発動させるなんて、普通なかなか出来る魔導士なんていないはずだ。
「ルール! ちょ、荷重掛けすぎ! 体が重い! これじゃあ支援魔法が有っても動けないよ!」
「アルーラ様なら大丈夫です」
「何が大丈夫なのよ!? それにその頭上に浮かんでる幾つもの爆炎球をどうするつもりよ!」
「あら、分かってらっしゃるでしょ?」
ルールディさんの笑顔がとても冷たく見えたのは気のせい? 性格変わってない? アルーラにスカートめくられたのが相当に腹が立ったのかな?
「ひぃいぃいぃいい!!」
悲鳴と共に、アルーラの姿がその場から消えた。と思ったら、ルールディさんもその場から消えてしまった。
「ぎゃあぁああ! 止めて!!」
「ほほほほ! さあ ドンドン行きますわよ!!」
ああ、かなり遠くで悲鳴と奇声が聞こえてくる。
アルーラ~頑張って~。
「さて、フェル君」
「は、はい!」
二人が居なくなって、僕とサリダ様との二人っきりになった。
「フェル君は今日一日、あたいと一緒に訓練じゃ」
「え? でも僕は魔導の勉強を」
「ああ、じゃからこの魔力精錬蓄石を君に授ける」
「これは?」
なんだこれ? 昔はこんな魔法石、無かったはず。一般的な魔法石は色が赤や緑や属性によって色が分かれ、それを触媒に魔法を発動させると、威力強化になったり、魔道具の燃料にしたり出来るはずだけど、この魔法石は無色透明だ。
「分からないか・・これはの、自分の魔力や、空気中に漂う魔素を取り込み中で精錬できる、人工的に作り出した魔法石じゃ」
なんと! 今の世は魔法石を人工的に作り出せるのか? それにこの魔法石の使い方は初めて聞いた。
「つまりこれで純粋で濃度の高い魔力を作り出せるのですか?」
「そうじゃ! なかなか頭が良いの? それだけで魔力操作の訓練にもなるのじゃがな、それに加えて、その魔力を自分の体内に戻し、魔力魂の成長に役立てる事ができるのじゃよ」
凄い! 人の体内にある魔力魂と言われる核は、その核が大きく濃度が高い程、その人の魔力の強さが変わると言われているのだけど、その魔力魂の成長というのがなかなか難しいのだ。
しかしこれがあれば、純粋な魔力を取り込むことが容易に出来るという訳だ。
「じゃが、センスが無い魔導士では、一日の魔力精錬度はたかが知れておるからの、いくら魔力精錬蓄石を使っても、簡単には成長出来ないのじゃ。だが上手く精錬出来る者は飛躍的に成長できるからの、頑張ってみるが良いのじゃ」
これは、助かる。この体では中々魔力魂を成長させるには時間がかかると思っていたけど・・
「はい! ありがとうございます! 成長出来るように頑張ります!」
「うむ、良い返事じゃ。それとな」
「はい?」
「魔力操作と精錬の合間に、支援魔法の訓練も行うのじゃが、とり合えず今の段階でどれだけできるか、この、あたいに支援強化を掛けてもらいたいんじゃが?」
「そうですか。それじゃあ・・・って! いきなりですか?!」
「そうじゃ」
「いやいや無理でしょ!」
「何故じゃ?」
「何故って、支援魔法は魔法が扱えれば誰でも使えますけど、相性というものがありますし、それに僕はまだ5才ですよ? 魔力操作も安定していないのに、下手をすると支援強化した相手の体を傷つけることだってあるんですよ?」
「ふむ、よく勉強しておるではないか」
サリダがそんな事すら分からない事なんて無いはずなのに、ちょっと無茶じゃ・・
「あたいは、昨日今日と君を見ていてそう問題ないのでは? と思っておるのじゃがな? なに、支援強化を掛けてみて違和感があったらすぐに言うから止めれば良いだけじゃよ」
簡単に言うけど・・・まあ、まだ魔力も小さいし、体に影響が出る程の力は出せないとは思うけど、でも僕も知っておきたいのは確かだしな、やってみるか。
「分かりました。でも違和感があったら直ぐに言って下さいよ?」
「分かっておる。一応一線からは退いた身とはいえ、これでも国の重要人物じゃからの、簡単にはくたばれんのじゃよ」
はぁ、そう言えば昔から、無謀なところがあったよな。やっぱり吸血鬼族は基礎体力が強いから、その辺は結構無頓着なのかもしれないな。
「それでは、さっそくやってみてくれ」
そう言って、サリダは無駄な力を体から抜き、体勢を整えだした。
僕も、魔力操作に集中し、サリダの体内に回る魔力の流れを把握する。
うん、昔と変わらないな。これなら・・・
更に集中すると、サリダの体が淡く光り出し、全体に広がっていった。
読んでいただきありがとうございます。




