平穏な日 6
もう一人の運命の人だった彼女との再会
修練場に着いた僕とアルーラは、二人で軽く準備運動をこなしていた。
「アルーラ、フェル君、ちょっとこっちに来てちょうだい」
修練場の入り口の方から、ラリーア様の声が聞こえたので、二人でそちらに向かった。
「お婆様、何?」
僕とアルーラが、呼ばれラリーア様の前に二人で並んだ。
「それでは今日からフェル君も魔導師としての修練を開始しますので、アルーラもお願いするわね」
「はい! よろしくお願いいたします!」
「任せといて! フェル君の為なら一肌脱ぐわよ!」
とにかく魔法をもう一度習えるのが嬉しくて、つい大きな返事をしてしまっていた。
と意気込んでいると、
「アルーラ! 服を脱がない!」
「え? 一肌脱ごうかと・・」
「それは違う!」
「え~、フェル君のやる気が出るかと思って」
「余計に気が散るからやめて!」
「ぶ~ぶ~!」
「元気があってよろしいですね。見る限り体調も良い感じですし、この調子で体調を万全に戻して、魔法の習得に励んでください」
ラリーア様、アルーラに突っ込んでください!
「はぁ、がんばります」
僕の返事にラリーア様が淡々と頷く。
「それではさっそく、フェル君を指導してくれる先生を紹介するからね」
「・・・・・・・・」
ん?
「あのう、その先生ってどこにいるの?」
アルーラが、なかなか現れない、その先生とやらを探しあちこちを見回すが、影も形も無いので不審がり始めた。
ん~、アルーラは感じないのか? 確かに気配を完全に遮断しているし、隠形系の魔法か、姿自体もかなり希薄になっている。けど・・・
僕は、集中して周囲に薄く水平に膜を張るように意識を魔力に乗せて飛ばしてみる。
これが限界か。まだ20メートル先くらいまでしか飛ばせないや。でも感触はあった。
僕はその感触のあった方向、ラリーア様の真横に視線を変えると、そこに居るだろう人物に集中する。
「ほう、さすがじゃのう。ラリーアがわしにお願いしてくるわけじゃ」
え? どこから声が聞こえた?
僕は、自分が確認した位置とは違うところから、女性の声が聞こえて来たのでビックリして身構えてしまった。
アルーラも驚きながらも、声のする方に剣を抜き自然と身構えていた。この辺はさすがだな。
ちゃんと訓練してないと、咄嗟の行動にここまで自然に立ち振る舞えないからね。
それは上空だった。
僕と、アルーラはその声の方向に一瞬意識を集中した。その瞬間、アルーラ様の横から大きな魔力が発生し、人の頭程の大きさくらいは有るだろう炎の塊が数個発生し、僕とアルーラへと向かってきた。
奇襲のつもりだったんだろうが・・・
「「え?」」
二つの驚きの声が同時に聞こえた。
アルーラはそのまま上空へと向かい斬撃による衝撃波を投げ飛ばし、僕は向かってくる炎を結界障壁を作り出し、簡単に防いでみせた。
でも、この炎、幻影だ。精神魔法か?
たぶん驚かせるだけの意味しかないものだったみたいだ。
「魔力探知ならいざしらず、まさか結界障壁まで作り出せるなんて、驚きです」
ラリーア様が立つ横の空気を揺らめくと、そこから人の姿がゆっくりと浮き出るように現れ始めた。
たぶんこの方が僕の魔導の先生になる方だろう。
そして現れたその姿は、とても綺麗な女性だった。
スレンダーな体つきのせいもあるのだろうけど、背が凄く高く見える。薄い感じの茶色の髪に、ルビーの様な赤い瞳が特徴的だ。
ただ、短めのスカートに黒い皮の足の殆どを隠すロングブーツにやはり同じような黒い皮のジャケットと魔導士特有の黒い外套を羽織っているので、ちょっと威圧感を感じる。
しかし、中身の彼女自信は、俯き加減の顔もありどこかおどおどとした雰囲気をもつ、か弱い感じがして、服装とのギャップを感じてしまう。
「フェル君、この方がこれから1ヶ月、君の魔導士としての基礎を教えてくれる、ルールディ・ディファイよ」
「初めまして。フェルと申します。この度は僕の為にわざわざご足労いただきありがとうございます。精一杯、魔導士としての勉強に励みたいと思いますのでご教授お願いいたします」
僕は、とにかくこれからお世話になる方に、印象を少しでも良く持ってもらう為に、なるべく丁寧に挨拶した。
うん、これくらいしておけば、問題ないだろう。
「え、え? えー? は! はじゅめまして!! あ、あなた! 様の指導役と、な、なら、なり? えっと、ならさせて? もりゃいます! ルールディ・ディファイともうしゅます! ふ、ふつちゅかな者でしゅけどどうか! 可愛がってもらえましゅでしょうきゃ!」
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
「あ~、完全にフェル君に飲まれてしまったわね」
えらく、緊張しているみたいだな? 噛み噛みだし、顔が真っ赤だぞ? だいたい挨拶の内容が特に後半、おかしなことになっているぞ? これじゃ僕が嫁さんを、貰うみたいじゃないか。
「ルールディ様! 私のフェル君に手を出すつもりですか!!」
いや、ややこしくなるからアルーラは黙っていてね? って知り合いなのか?
しかしおどおどしている彼女をどうしたらいいんだ?
「こらー!! あたいのルールを虐めるんじゃない!!」
僕がどうしたら良いか、悩んでいたら頭上より、大きな怒鳴り声がし、急激な圧迫感を感じたので、直ぐに頭上に視線を移した。
「あ、女の子が降ってくる」
僕の目には、フリルがついた柔らかそうなスカートに黒のいかついジャケットを着こんだ、金髪ウェーブの美少女が僕、目掛けて急降下してきていた。
「あ! あのこ、まさか、サリダ・・なのか?」
僕は見覚えのある顔に、思わず名前を呟いていた。
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