《追章》その37:モテる男は辛い?
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それはあたしのお腹が臨月に入りかけたある日のこと。
最近姿を見せなかった豚がふとしたり顔で現れたのが全ての始まりだった。
「お久しぶりです、聖女さま。お元気でしたか?」
「まあね。そういうあんたはどうなの? なんか最近忙しそうにしてたみたいだけど」
「ええ、実は色々とありまして。今日はそのご報告に訪れた次第です」
「ふーん。あんたも大変なのね」
ずずずとお茶を啜りつつ、あたしは豚に促す。
「で、最近はどうしてたわけ? まさかまたミノタウロスの人妻たちにちょっかいを出してたわけじゃないでしょうね?」
「いえいえ、そのようなことは。私も今や〝彼女持ち〟ですからね。そんな浮ついたことはできませんよ」
はっはっはっ、と笑う豚に、あたしも「まあそうよね」という感じだったのだが、
「……え、ちょっと待って? あんた、今なんて言ったの?」
何やら聞き捨てならない話を耳にし、豚にそれを問う。
すると豚はあからさまにとぼけたような口調で言った。
「おや、なんのことでしょうか? 私はただ彼女持ちなので浮ついたことはできないなと」
「いや、そういうのいいから。え、あんたマジで彼女できたの?」
「ふっふっふっ、大マジですとも。しかも私好みの癒し系エロエロ巨乳美女です。言うなればマグメルさまにシヴァさまを足して二で割ったような感じでしょうか」
「え、なんでそんなのがあんたと付き合ってるの……」
信じられないとばかりに言葉を失うあたしだが、そこでふと考える。
もしかして変な女に騙されているのではなかろうかと。
いや、むしろその可能性しかないのだが、まだ確証を得ているわけではないので慎重に豚に尋ねる。
「まあいいわ。それでその彼女さんはどこの種族なの? 人間? それとも亜人?」
「もちろん人間です。名前は〝アイ〟さんと言いまして、まさに彼女に相応しい愛に溢れたお名前だなと」
「ふーん。愛に溢れたアイさんねぇ……。ちなみにその人とはどこで知り合ったわけ?」
「オルグレンの酒場ですな。フレイルさまにフラれてしょんぼりしていた私を見かねてという感じです」
「なるほどねぇ。てか、その前にあんたフレイルさまに何してんのよ? 未亡人だから押せばイケるとでも思ったんじゃないでしょうね?」
「い、いえ、そのようなことは……」
すっと気まずそうに視線を逸らす豚に嘆息しつつ、あたしはさらにその〝アイ〟なる女の情報を探る。
お節介なのは重々承知しているのだが、もし騙されているのならこれ以上傷が深くなる前に別れさせるべきだと考えたからだ。
「まあそれはいいわ。とにかくそこで出会ってデートを重ねたってわけね」
「ええ。しかしモテる男というのは辛いですな。あんなに好き好きオーラ全開でおっぱいを押しつけられたらもうなんでも買ってあげたくなっちゃいますよぉ~」
……うん?
「え、一応聞いておくけど、あんたその人におねだりされるがまま貢いでるんじゃないでしょうね?」
「はっはっはっ、何を仰いますか。〝貢ぐ〟というのは夜のお店の方々にするものでしょう? 私の場合は〝彼女〟ですからね。愛ゆえのプレゼントですな!」
「……」
あ、これ騙されてるやつだ……。
しかも説得を聞かないタイプのダメなやつ……。
「おっと、そろそろ行かなければ。いやはや、デート代を稼ぐのも一苦労ですな。まあモテる男ゆえ仕方ないのですが……」
ふふっとしたり顔の豚を、あたしは「そうね、モテる男だものね……」と黄昏れたように見据えていたのだった。
◇
その後。
「ねえ見てダーリン♪ これ可愛いでしょ♪」
「うん? お、どうしたんだ? そのドレス」
「ふふ♪ もちろんダーリンに〝可愛い〟って言ってもらうために面倒だったけど頑張って働いて手に入れたの♪ ほら、あたし《超擬態》で相手の最も求める姿っていうか、そういうのになれるでしょ?」
「ああ、なるほど。それでお客さんに満足してもらって買ったってわけか。うん、凄く似合って可愛いよ、アイティア」
「うふふ、ありがと♪」
むぎゅっ、とその下品な脂肪の塊をイグザの腕に押しつける〝アイ〟ティア氏の姿を見ながら、あたしは思ったのだった。
経済ってこうやって回ってるんだなぁ……、と。
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