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《追章》その21:打倒救世主!2


 勝者には〝なんでも願いを叶える〟――そう救世主は言った。


 世界中に向けてあれほど大々的に宣言したのだ。


 である以上、たとえ彼が敗れたとしても、その約束を反故にすることは出来ないだろう。


 何故なら彼は救世主。


 今、この世でもっとも信頼を得ている人物なのだから。


 ゆえに〝彼〟はあのにっくき救世主を必ずや打ち倒すべく、己が持てる力の全てを以てやつに抗うことを決めた。


 最初に目をつけたのは、〝終焉の女神〟と呼ばれている現状最強の女神――フィーニスだった。


 彼女に黒人形化された聖者たちは、皆通常の数倍の力を発揮し、当時の救世主でさえも聖女武装を用いなければ勝てなかったからだ。


 だから〝彼〟はフィーニスに接触し、彼女に助力を求めた。



「ええ、わかったわ……。あなたに力を貸してあげる……」



 フィーニスの助力を得るのは容易かった。


 何故救世主の嫁である彼女が〝彼〟に力を貸したのか――その秘密については後ほど言及することにしようと思う。


 ともあれ、フィーニスの力だけでは救世主に勝つことは不可能だろう。


 ゆえに〝彼〟はほかの強者たちにも力を借りた。


 本人たちの希望により名は伏せるが、間違いなく全員が全員最強クラスの実力を持つ者たちである。



「ふむ、いいだろう。ならば我が槍の極致――全て受け切ってみるがいい!」



 ある者は槍術に優れ、



「はっ、おもしれえ! だったらせいぜい気張ってみせやがれ!」



 またある者は斧術において並ぶ者なく、



「言っておくけれど、これで負けたらわかってるわよね?」



 そして弓術に優れたある者には割と素で脅かされ、



「あなたはもう少し痩せた方がいい」



 近接格闘術に優れたある者には太っていると言われた挙げ句、



「ところであなた、最近お風呂入ってる?」



 防御術に優れたある者には臭いと言われ、



「てか、あんた鼻毛出てるわよ?」



 なんか鼻毛まで出ていたらしい……。


 と、まあそのような辛い試練を多々乗り越え、今まさに〝彼〟の力は完成を見たのである。


 全てはあのにっくき救世主を倒すため。


 そして彼に囚われている愛する女性を救うために。



「――シールドバッシュ!」



 ――どばんっ!



「ぐわあっ!?」



 いざ――本戦へ!



      ◇



「って、あなたたちは一体何を考えているんですか!?」



 そう声を荒らげるのは、もちろんマグメルである。


 そして彼女に怒られていたのは、ほかでもない聖女たちとフィーニスさまであった。


 というのも、とある予選会場にめちゃくちゃ強い小太りのおっさんがいる的な話を聞き、一体どんな人なのかと様子を見に行ってみれば、「待っていてください、私の女神さまー!」とシールドバッシュ無双を繰り広げているポルコさんの姿があったのである。


 しかも彼の手にはどこか禍々しい感じの盾が握られていた上、そもそもあの人あんなに強かったっけという話になり、何故か女子たちが揃って視線を逸らしているのをマグメルが不審に思い……まあ協力していたのがバレたわけだ。



「いや、だってよぉ、なんか面白そうだったし」



「〝面白そう〟で仲間を売ろうとするなんて一体どういう了見ですか!? 万が一にもイグザさまが負けてしまったら、私はポルコさんに娶られてしまうかもしれないんですよ!?」



「そうね……。だから力を貸してあげたの……。そうなったらイグザと一緒にいられる時間が増えるって彼が言ってたから……」



「ちょ、フィーニスさま!?」



 ぎょっと顔を強張らせるマグメルを、しかしアルカが「まあ落ち着け」と宥める。



「女神フィーニスは元々ああいう感じゆえ気にするなとしか言いようがないのだが、我らも別に本気でお前にいなくなってほしいと思っているわけではない。むしろイグザが必ず勝つと信じているからこそのお遊びなのだ。そうだろう? お前たち」



「おう」「えっ?」「うん」「そうね」「ええ」



「なっ?」



「いや、〝なっ?〟じゃないですよ!? 今、あきらかにザナさんが〝えっ?〟って仰っていたじゃないですか!? 絶対〝あわよくば〟と思っているでしょうこの人!?」



「ふむ、まあそういうこともたまにはある」



「〝たまにはある〟で済ませないでください!? い、イグザさまぁ~!?」



 泣きそうな顔で胸元に飛び込んできたマグメルを、俺はよしよしとしばらくの間優しく慰めていたのだった。


 まあ俺も彼女を渡すつもりはないし、ここのところ身体も鈍ってるからな。


 久々に全力で迎え撃たせてもらうとしよう。


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