《聖女パーティー》エルマ視点44:盗み聞き禁止ー!
「――きゃっ!?」
ミノタウロスの里から帰還して早々、イグザに押し倒されたあたしは、潤んだ瞳で彼を見つめる。
その顔はいつにもなく真剣で、言わずとしてあたしのことを求めているのが分かった。
このまま何も言わなければ、あたしは彼に抱かれてしまうだろう。
だがあたしにはそういった経験が一切ない。
不安もあるし、恐怖もある。
「お願い……シャワーを浴びさせて……」
だからせめて少しだけ時間が欲しいと懇願するが、こんな極上の肉体が目の前にあるのだ。
当然、健康な男子に我慢など出来るはずもなく……。
「エルマ!」
「だ、ダメぇ!?」
強引にもあたしに覆い被さり、その手があたしの胸に触れ――。
――すかっ。
「……?」
――すかすかっ。
「???」
何故か胸の手前で虚空をにぎにぎしているイグザに、あたしは何をしているのかと小首を傾げる。
すると、イグザがすっとあたしから身体を離して言った。
「――ごめん。俺、巨乳が好きなんだ」
「えっ?」
「だから君のことは抱けない。それじゃ」
「ちょ、ちょっと待って!? これはまだ成長途中なの!? これからぼいんぼいんになるんだってば!?」
それに、とあたしは去っていくイグザの背に手を伸ばしながら、精一杯声を張り上げて訴えたのだった。
「ティルナだって貧乳じゃなーい!?」
◇
がばっとベッドから飛び起きたあたしは、肩で大きく息をしながら呼吸を整える。
「って、夢か……。よかった……」
と。
「――全然よくない。というか、わたしは貧乳じゃない」
「げっ!?」
窓際に腰掛けながら半眼を向けてくるティルナに、あたしはぎょっと両目を見開く。
「てぃ、ティルナ!? あ、あんた、起きてたの!?」
あたしが驚いたようにそう言うと、ティルナは相変わらず半眼のまま「もちろん」と頷いて言った。
「今はわたしが見張り番。起きていて当然」
「そ、そう……。それはご苦労さま……」
それじゃ……、と再び横になろうとするあたしに、やはりティルナは半眼でこう言ってきた。
「一応言っておくけど、たぶんこれからぼいんぼいんになることはないと思う」
「……ぷっ」
「ちょっと今笑ったの誰よ!? てか、あんたでしょアルカディア!?」
毛布にくるまり、床に立て膝で就寝していたアルカディアをこれでもかと指差す。
あたしはティルナと、マグメルはザナとベッドを共有していたため、アルカディアは床で寝ていたのだ。
なお、豚は隣の部屋である。
「いや、すまんすまん。お前の寝言がなかなかに面白くてな。ぼいんぼいんにしてもそうなのだが、よもやあんな口調で〝シャワーを浴びたい〟などと――」
「ぎゃーっ!?」
思わず絶叫するあたし。
〝あんな口調〟って絶対そういう口調じゃないのよーっ!?
ひぎぃっ!? とあたしが一人頭を抱えながら悶絶していると、
「まあいいじゃない。はじめてなんてそんなものでしょう?」
「そうですよ。可愛らしくていいじゃないですか」
――ぎいっ。
「確かに。年頃の女性らしくて実にいい感じだとおぶわっ!?」
次々に皆が起き上がり始めた上、神妙な顔の豚まで現れ、あたしは高速で枕を投げつけてやったのだった。
てか、なんで全員起きてるのよおおおおおおおおおおおおおっ!?
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