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139 やっぱり脳筋は気持ちがいい


 オフィールにババア呼ばわりされているシヴァさんが、不老とはいえ、もうすぐ28度目の誕生日を迎えようとしていることはさておき。



「――グオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」



「「!」」



《スペリオルアームズ》を発動させた俺たちに対抗するかのように、ボレイオスもまた幻想形態へと進化する。



 ――ずずんっ!



 それはとにかく大きく、そしてとても力強い進化だった。



 身長は10倍近くまで肥大化し、身体中が比喩なしで鋼のような筋肉に覆われている上、さらには――。



「……アス、テリオス……ッ!」



 ――ぴしゃーんっ!



「「――なっ!?」」



 雷すらをもその身に纏い始めたではないか。


 まさに攻防一体。


 これはなかなか骨が折れそうな相手である。


 でもな! と俺たちは神々しい輝きの戦斧を大きく振り回して構えた。



「今の俺たちに打ち破れないものはない!」



「おうさ! このクソ漲る力で一発かましてやろうぜ!」



「応ッ!」



 吼えるように頷き、俺たちは雷の巨人と化したボレイオスへと特攻する。



「ウグオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」



 ――ずがああああああああああああああああああああああああああああんっ!



 すると、ボレイオスが凄まじい勢いで神器を地面に叩きつけ、衝撃波が斬撃となって一直線にこちらへと向かってくる。



「「しゃらくせえッッ!!」」



 ――どぱんっ!



 それを正面からぶち破った俺たちは、そのままボレイオスへと肉薄する。



 確かに触れれば感電するであろう雷の鎧を纏ってはいるが、そんなものは俺たちにとってなんの関係もなかった。



「「おらあああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!」」



 がきんっ! と全力で振りかぶった一撃が、ボレイオスの頬を横からぶっ叩く。



「グゲアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!?」



 ――ずずんっ!



 衝撃で地面へと倒れ込んだボレイオスに、オフィールが「くぅ~!」と歓喜の声を上げた。


 なお、俺たちの身体はしゅ~と湯気を上げながら再生中だ。



「堪んねえな、おい! やっぱ戦いはこうじゃねえとな!」



「はは、そうだな。今なら君の気持ちが分かる気がするよ。確かにこれはなかなか気持ちのいいもんだ」



「だろ? ちまちま避けるのも別に悪くはねえさ。だがな、あたしはこういう肉を切らせて骨を断つ戦い方が好きなんだ。なんか〝生きてる〟って感じがするだろ?」



「ああ。とくに俺は不死身だからな。一体化している以上、無茶の幅も無限大だ」



「おうよ! だからあたしは今楽しくて仕方がねえ! やっぱりあんたは最高の旦那だぜ、イグザ!」



「はは、ありがとな。君も最高の嫁だよ、オフィール」



 オフィールの言葉にそう相好を崩しつつ、俺たちは再び上体を起こしつつあったボレイオスへと視線を向けたのだった。



      ◇



 一方その頃。



「――シャイニングクロスブレイド!」



 ざんっ! と光属性の高位武技で攻撃を仕掛けている一人の男性がいた。


 20代半ばくらいの精悍な顔立ちをした男性だ。


 彼は《剣鬼》のスキルを持つ冒険者で、光属性の剣技を得意としていることから、〝光の英雄〟の異名を誇っていた。


《剣鬼》は《剣聖》の一つ下のスキルであり、通常のスキルの中ではもっとも剣術に長けたスキルだった。


 男性にはパーティーを組んでいる仲間たちもおり、彼が一撃を放つにあたって最大限の補助術技をかけたりもした。


 にもかかわらず、



「――無駄よ……。それじゃ私を傷つけられないわ……」



〝彼女〟にはまったく通じなかった。


 ただかざしただけの手に、このパーティー最大級とも言える一撃が難なく受け止められたのである。


 ゆえに男性は武器を下ろし、〝彼女〟に問うた。



「あなたの目的はなんだ? 何故僕たちを襲う?」



 すると、〝彼女〟はその血色の悪い顔を大きく歪め、男性を指差してこう言ったのだった。



「あなたの力と身体をちょうだい……。私ね、それが今とっても欲しいの……」


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