137 豊満なる地下の里
「こ、これは……っ!?」
そうしてミノタウロスの里へと辿り着いた俺たちは、まさかの光景に愕然としていた。
――ぼよよーんっ。
そう、ミノタウロス族の女性には巨乳しかいなかったのである。
もちろん上空から眺めているだけなので、全ての女性を確認したわけではないのだが、それでも見渡す限り巨乳爆乳のオンパレードだ。
さすがは牛の特徴を持つ亜人と言ったところだろうか。
実にけしからん限りである。
ただまああれだ。
エルマとポルコさんを連れてこなくて本当によかったぁ……。
俺が内心そう胸を撫で下ろしていると、女子たちが興奮気味に言った。
「うお、すげえな。あたしよりでけえやつがごろごろいるぜ」
「驚いたわね。里の位置を知るためにちょいちょい覗いてはいたけれど、まさか幼子を除いたほぼ全員が巨乳以上だなんて思いもしなかったわ」
はえ~、と三人揃って食い入るように里の様子を窺う。
体格も人より恵まれている分、一番豊満なオフィールですら通常の巨乳サイズに見えたくらいだ。
「って、おっぱいに気を取られてる場合じゃなかった……」
いかんいかんと俺はかぶりを振る。
なお、乳のインパクトが強すぎてまったく目に入ってこなかったが、地下の大空洞に造られたミノタウロスの里は、精巧な装飾が施されていたドワーフの里とは違い、無骨な石造りの建物群で埋め尽くされていた。
地下なのに割と明るく見えるのは、恐らくこのほのかな輝きを放つ白い岩壁のせいだろう。
「とりあえずミノタウロスたちに事情を説明して避難してもらおう。話はそれからだ」
女子たちにそう告げた後、俺は彼女たちを抱えたまま、里の広場へと降下していったのだった。
◇
「――なるほど。そなたらの話は理解した。急ぎ里の者たちに避難指示を出そう」
意外にもすんなりとそう頷いてくれたのは、族長だというとても胸の大きな女性だった。
腹筋もばきばきに割れており、胸のでかさもさることながら、引き締まったいい体つきである。
「あ、あの!」
「うん? なんだ?」
ともあれ、あまりにも簡単に俺たちの話を聞いてくれたので、思わず俺は尋ねてしまう。
「その、本当にいいんですか……? まだ俺たちが味方かどうかも分からないのに……」
「ああ、確かにそうなのが、不思議とそこの娘からは同族のような親しみを覚えていてな。信じてもよいのではないかと考えた」
くいっと女性が顎で指した先にいたのは、「あん?」と不思議そうな顔をしているオフィールだった。
「ああ、なるほど……」
確かに二人とも淡褐色の肌に薄着なパワー系と、どことなく雰囲気が似ている気がする。
――たゆゆんっ。
だがたぶん一番の要因はあの大きなおっぱいだろう。
本当にエルマを連れてこなくてよかったなぁ……、と俺が色々な意味で泣きそうになっていると、族長の女性が声を張り上げて言った。
「というわけだ、皆の衆! 悔しいが今の我らでは女神フィーニスの力を得たボレイオスには敵わぬ! よって大至急子どもらを守りつつ、地上へと退避せよ!」
「「「「「――」」」」」
女性の指示にミノタウロスたちが揃って頷く。
そして各々が行動を開始する中、女性が確認するように言った。
「これでよいのだな?」
「ええ、ありがとうございます。あとは俺たちに任せてください」
「ああ。では頼むぞ、人間たちよ」
そう頷き、女性もまたお連れのミノタウロスたちとともにその場を去っていく。
すると、オフィールが何やら楽しそうにこう言ってきたのだった。
「なあなあ、今度ここにあの乳無し聖女を連れてこようぜ!」
「いやいやいや……」
それはやめてあげなさいな。




