124 少しくらい強引な方がいい
「「はああああああああああああああああああああああああああああっっ!!」」
「――ッ!?」
――ずがあああああああああああああああああああんっ!
流星の如く飛来した俺たちの一撃が、大地に巨大なクレーターを穿つ。
さすがのアガルタも直撃はマズいと思ったみたいで、背の翼を羽ばたかせ、急ぎ空へと離脱していた。
「ちっ、外したか。存外素早いやつだ」
「でもやつを動かすことには成功したし、これで竜人たちの洗脳が解けてくれれば……」
そう期待を込めて見上げた先では、アガルタを守るように飛竜化した竜人たちが壁を作っていた。
やはりこのくらいではダメらしい。
「さて、どうする? やつらごと貫いても構わないというのであれば話は早いのだが……」
「まあな。それが出来れば苦労はしないんだけど……でもまああの人たちも戦士なわけだし、この際一人ずつ殴って昏倒させるってのはどうだ?」
俺がそう何気なしに答えると、アルカは吹き出すように笑って言った。
「あははははっ! そうだな。実にいい案だと私も思う。むしろ日頃からそのくらい強引でもいいくらいだ」
「そ、そうか?」
「うむ。分かりやすくて実にいい。私好みの作戦だ。ならば早速ぶん殴ってやるとしようか」
ごうっ! とアルカのやる気に呼応するかのように身体中の炎が滾る。
割と適当に言ったのだが、とりあえず気に入ってくれたようで何よりだ。
「よし、じゃあ行くぞ!」
「ああ!」
――どぱんっ!
地を蹴り、俺たちはアガルタを守る竜人たちに向けて真っ直ぐに空を翔上がる。
「「「「「グオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」」」」」
――どごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんっっ!!
当然、竜人たちは俺たちを撃ち落とすべく、揃って異なる属性のブレスを吐いてきたのだが、俺のスキル――《不死神鳥》は〝火属性無効〟である。
「グガッ!?」
ゆえに火属性のブレスにそのまま突撃した俺たちは、まさにやつの眼前でブレスから飛び出すと、
「「――グランドダイヤモンドブレイクッッ!!」」
どがんっ! と超硬度の一撃を、その脳天に全力で叩き込んでやったのだった。
「――」
その瞬間、ぐらりと火属性の竜人が体勢を崩し、声も上げずに落下していく。
そして頭から地面へと激突した彼は、巻き上がる砂煙の中、元の人間体へと戻っていた。
「う、ぐ……」
だが微妙に呻いているところ見る限り、どうやら死んではいないらしい。
そこだけが唯一気がかりだったのだが、さすがは竜の強靱さを持つ亜人である。
「うむ、これはいい。よし、残りのやつもどんどん行くぞ」
「おう!」
頷き、俺たちは次の獲物に狙いを定める。
――がんっ!
「ガアッ!?」
――ずがんっ!
「ギギャッ!?」
――どごんっ!
「グギッ!?」
そうして五体のうち四体の飛竜を昏倒させ、元の竜人へと戻した俺たちは、最後の飛竜へと向き直る。
――そう、竜人たちのリーダー格とも言うべき白銀の飛竜だ。
身体の色もほかの竜人たちより神々しい感じがするし、何より体格が今までのやつらよりも一回りほど大きい。
よほどの一撃でなければ昏倒させるのは難しいだろう。
となれば、まずは翼を貫いて動きを――。
と。
「――おい、イグザ」
「ああ、分かってる」
俺は警戒しつつ背後を見やる。
「グルゥ……ッ」
そこにいたのは、漆黒のオーラを纏う闇の化身――アガルタだった。
「ふむ、どうやらここからは二対一らしいな」
「ああ、望むところだ。――両方まとめてかかってこい!」
「「グオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」」
――どごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんっっ!!
その瞬間、左右同時の極大ブレスが俺たちを襲ったのだった。




