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転生家庭教師のやり直し授業◆目指せ!教え子断罪回避◆  作者: ナユタ
◆第三章◆

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*5* 日々、鋭意製作中!


 ――水色のヒツジ、赤いクマ、紫のネコに、橙色のリス。


 いったいフェルディナンド様はどこで購入するのか、日に日に増える色彩豊かな縫いぐるみ達。そんな縫いぐるみ達のデッサンに、時折混じる顔を隠した私のデッサン。


 またある日は、オルゴールのバレリーナのように華奢な身体で基礎のステップを踏む教え子に、フェルディナンド様と一緒に完成形を踊って見せた。


 初期の頃より芸術と体力が上がりやすい手応えを感じたのか、教え子は勿論のこと、飄々としているフェルディナンド様ですら教育者の顔になり始めている。


 そしてそんな最近の休憩時間のすごし方といえば、フェルディナンド様の『これも広域では芸術の授業』という鶴の一声で決定した、教え子と一緒に女の子向けの遊戯盤に使用するドレスのデザイン選定だ。


 当初は家庭教師を勤めている身で始めた副業に、この試みに手を出す切欠となった教え子を巻き込むつもりはなかった。けれど、フェルディナンド様からかけられた『いまは人手がいるし、隠し事ってバレたときの方が面倒だよ?』の言葉から踏ん切りをつけたのだ。


 ――無論、この副業のことは雇い主には内緒である。


 あとは王都のホーエンベルク様から届いた遊戯盤の感想の中に、父の名前とヴァルトブルク様の名前を見つけて苦笑したり、残りの二十九枚の遊戯盤が届けられた家からの感想を読んだり。


 二十九件に関しては資金援助の申し出と、そのうち数件の家から女の子向けの遊戯盤の完成を心待にしているとの声も頂いている。滑り出しはなかなかに順調だ。


「先生、見て下さい。こちらのドレスも素敵だけど、こちらのドレスも可愛らしいですわ。先生はどちらのドレスがお好きですか?」


「私はこちらの方かしら。落ち着いた色味でどんな場面でも着やすそうだわ」


「こちらですね? 先生の好きなドレス……憶えておきますわ」


 いつも通りのそんなやり取りをしていたら、横からフェルディナンド様の手が伸びてきて、私が選んだ山吹色のドレスを描いたカードを取り上げてしまった。


「あ、ごめん。このデザインは没案のやつだ。最初に弾き忘れたかな」


「まぁ……このデザインはそんなに駄目ですか?」


「駄目って言うかさ、この遊戯盤は女の子向けだよ? 大きくなるにつれて美意識は変わるけど、小さい頃は可愛らしくないと女の子は食いつかない。落ち着いた色味のドレスは必要ないと思うね」


 そう言われてもう一度取り上げられたカードを見てみると、確かに他の可愛らしさを前面に出したドレスよりも大人びている。やや“女の子向け”の範囲から外れているかもしれない。


 そこで「それもそうですね」と応じかけたそのとき、横から今度は細い教え子の手が伸びてきて、フェルディナンド様の手からおずおずとカードを引き抜いた。


「わたくしは、この先生の選んだドレスも着てみたい、です」


「ふぅん……でもさ、地味じゃない?」


「“たようせい”が、大事だと思います。色んなドレスがあった方が、楽しいです」


「たよう……あー、はいはい。多様性ね。いいけど、例えばどんなの?」


 珍しく自身の意見を口にしたのに問い返されることを考えていなかったのか、教え子が急に不安そうな視線をこちらに寄越す。頑張ったけどここまでか。でも意見を口にするようになれたのは進歩だ。


「そうですね……一般的な意見ではないのであてになるか分かりませんが、私は領地だと乗馬服をよく着ていましたわ」


「へぇ、ベルタ先生って乗馬するんだ?」


「はい。領内の視察にできた方が便利だったもので。収穫期なんかはほぼ乗馬服でしたわ。そういえば女性用でも可愛らしいものは少なかったかもしれません」


「成程ね、うん。女性用の乗馬服か。意外性があって面白いね」


 思い付きで出した案があっさりと受け入れられて拍子抜けしていると、教え子からキラキラとした瞳で「乗馬ができるなんて、素敵です」との評価を受けた。家族と領民以外からはあまりいい顔をされなかっただけに、ちょっと照れ臭い。


「それにしても、ごめんな二人とも。こんなに大量のデザイン選ぶのに付き合わせて。この件で名義貸すって言ったときの一族の女性陣が予想以上にはしゃいでさ」


「人気があるカードのデザインは、商品化するんですよね?」


「そーだよ。お姫様も気に入ったのがあったら教えてくれれば、直接オレから製造元に発注かけられるから一番早く入手できるぞ」


 身を乗り出した教え子に向かい、彼がニヤリと笑う。


 遊戯盤での売り上げの取り分はこちらの方が多いけれど、これならフェルディナンド様側も損はしない。こんなことができるのも、偏に彼の一族が芸術関係に明るいからこそだ。


 ふと頬杖をつく彼の髪に輝くガラスビーズが視界に入った。今日は赤いスグリのような中に金色の粒が泳いでいる。冬場に見ると暖炉を思わせる色使いだ。


「そういえばフェルディナンド様の髪に飾ってあるガラスビーズも、季節ごとに色が違いますね。これも一族の方のデザインですか?」


 何の気なしにそう言葉をかければ、彼は教え子に向けていた視線をこちらへ向けてヘラリと笑った。


「お、気付いてたの? なんか照れるなー。これはオレの趣味の一つ。工房借りてデザインも製作も自分でやる。本来は他人に作ったりあげたりしないんだけど、ベルタ先生になら作ってあげてもいいよ」


 得意気にそう言った彼があまりにも楽しそうだったので、普段はまったく装飾品に興味のない私でも思わずその場で注文してしまったわ。

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