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転生家庭教師のやり直し授業◆目指せ!教え子断罪回避◆  作者: ナユタ
◆隙間編◆

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◉1◉ 仕事と趣味友。

その頃領地では……みたいな(*´ω`*)

これからたまに章と章の間に挟むかもです。

本編には出てこない設定なので箸休めとして2、3話くらいずつ。

箸休めが嫌いな読者様は箸置きに箸を置いてお待ち下さいませ~。


 いつからか忘れてしまったけれど、わたしにとって紙とインクの匂いはお姉さまの香りだった。


『次に会えるのは来年の社交シーズンになるでしょうけど……それまで領地の皆と元気にしていてね。何かあったら手紙で教えて頂戴。どこにいてもすぐに駆けつけるわ。私の可愛いアンナ』


 そう言ってあの香りごと抱きしめてくれたお姉さまと別れて領地に戻ってから、早いものでもう二ヶ月。執務室の窓の外に見える木々は生命力の深緑から一転、どんな絵の具にも再現することが難しいような艶やかな色に染まっていた。


 書類の山を目を通しやすいよう用件別に纏めて島を作る。


 内容は農地と牧草地の話に、家畜小屋の修繕や教会の整備、領地を訪れる商人が増えたことで馬車の通る道の補修に割く人手の確保や、領内で上演する舞台の設営など。


 季節柄決めることは多いけれど、お姉さまの残していってくれた知識(もの)が、人が、まだ半人前のわたしを助けてくれた。それに資金もお父さまだけでなく、お姉さまの仕事先から援助を受けられるから、余程馬鹿な計算間違いでもしない限りは何とかなる。


 だけど一番嬉しいのは資金の心配をしないでいいことではなくて。お父さまに似て大の心配性のお姉さまが、毎週一通は手紙と本を送ってくれることだった。当然のようにお父さまも分厚い手紙を送って下さるから、たまに一日に読む書類の量と同じような分量になる。


 そんな嬉しいけれど悩ましい家族の愛情に加えてちょっと心配なのは、このままだとそのうち書庫を建てなければならなくなることかもしれないけれど……それはそのとき考えればいいわね。


 わたしからはそのお返しになるかは微妙だけれど、翻訳をして同人誌の形で発行された本を送っている。でもお姉さまは毎回その感想を返してくれるから、やっぱりこちらがもらってばかりだわ。


 二人からの他に送られてくる手紙は大抵気持ちの悪い詩や、しつこい求婚の手紙なので、それらは一纏めにしてお父さまに転送する。


 ――……例外は、そう。


「そろそろ感想を書いて送らないと駄目ね」


 書類をめくる手を止めて、先日王都のお父さまの手紙と一緒に届いた封筒を手に取る。差出人は一年前にデビュタントで知り合った、ヨーゼフ・ヴァルトブルク様。第一印象はぽっちゃり体型なのに背が大きくて、存在感が凄いのに気弱な人。


 第二印象は酷く絡まった黒髪の隙間から、赤みがかった琥珀色の瞳でビクビクとこちらを見ていたくせに、急にわたしの翻訳本のファンだと叫ぶだけ叫んで逃げ出した変な人。


 第三印象はお姉さまとわたしを姉妹と認識できないなんて、目が節穴にもほどがあると思ったけれど、誰も彼も一方的に同じ言葉でしか話かけてこなかった社交場の中では、一番強く印象に残った人。


「今回はヴァルトブルク様にしては珍しく恋愛ものだったし……もう一回最初から読み直そうかしら」


 そんな独り言を呟きながらも、胸が踊る。封筒から薄い小冊子を取り出して執務机の上に開くと一番最初に目に入るのは、中に挟まれた彼の手紙。


“前回の雪の女王を題材にした翻訳も、繊細でとても素晴らしかった。君の翻訳した本を読んでいたら、僕もどんどん話を思い付けるんだ。今回の作品は苦手を克服したくて書いたので自信はあまりないけど……次の脚本の公募に出してみようかと思ってる。忌憚のない意見を聞かせてくれると嬉しい”


 わたしは翻訳で、彼は脚本。どちらも貴族らしくない同人誌書き(シュミ)仲間。彼とのこうした意見交換は日々の仕事の癒しだった。


「……手紙だとこんなにお喋りなのに、社交場では全然だなんておかしな人ね」


 思わず漏れた笑いを堪えてめくる頁のその先は、笑いがなりを潜めるような、甘く切ない恋物語。

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― 新着の感想 ―
[良い点] この二人いいなぁ...(*´ー`*) ヴァルトブルクさん、応援してます(`・ω・´)
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