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転生家庭教師のやり直し授業◆目指せ!教え子断罪回避◆  作者: ナユタ
◆第二章◆

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*13* 家庭教師の教師。


 春の陽射しが降り注ぐカフェテラスの一角の丸テーブルを囲み、三者三様休日の装いに身を包んで向かい合う。集まった人物は私、アグネス様、ホーエンベルク様の三人。


 人間というのは不思議なもので、同業者が集まっているとそこから一種独特の匂いを感じることがある。今日であれば言わずもがな。関係性は三人共に上級貴族の子息と令嬢を教え子に持つ家庭教師だ。


「それでは揃ったところで改めまして、本日はお二方ともこの勉強会にお集まり頂いてありがとうございます」


「うふふふ、同年代の家庭教師同士で集まるなんて初めてで緊張しますけれど、憧れのベルタ様に教えを乞えるだなんて楽しみですわ~。本日はどうぞよろしくお願いしますね~」


「こちらこそせっかくの休日にこのような場を設けて頂いたことに感謝する。今日は是非ご教授頂きたい」


 前回アンナと出席した夜会でホーエンベルク様に見つかってしまい、そこで教え子との距離の詰め方を教えて欲しいと頼まれた。


 断っても良かったのだけれど、変に避けてこれ以上興味を持たれるのは下策ということで引き受けたのはいいものの、いくらなんでも結婚する予定もつもりもなかろうが、世間的に見れば私はまだ婚前の令嬢。


 男性と……しかも身分の釣り合わない人物と二人きりでいるところを誰かに見られでもしたら、あっという間に社交界のお嬢様や奥様方の噂の的になってしまう。


 妹の周囲で青春の気配を感じている今、ただでさえ変人と噂されている身としてそれは何としても避けたい。私は今世でできた可愛い妹の幸せを見届けたいのだ。そのためには誰かに見られても疚しくない関係の人間が必要不可欠。


 そこで白羽の矢を立てたのがアグネス様だった。彼女なら同じ階級の子女で、同業者。おまけに教え子の階級もピタリと合うので、ホーエンベルク様の目からアウローラの存在を隠すのにも有効だ。


 似た年頃の子女が二人いるとなると、見極め対象が散って結局どちらも選ばれないということもままある。今回はそれを狙っての策だ。


 しかし二人とも私とは面識があるもののお互いに面識はない同士なせいか、アグネス様は通常運転であるけれどホーエンベルク様の表情がやや固い。


「それでは一応自己紹介から始めましょうか。私はエステルハージ子爵の長女でベルタ・エステルハージと申します。お二人のどちらとも面識がありますから、こちらからの紹介は以上とさせて頂きますわ」


 両者から余計な詮索が入る前にサックリと自己紹介を終えて微笑み、次の自己紹介を促すと、本日もお忍びにしては目立つ立派な縦ロールをしたアグネス様が小さく挙手した。


 そんな彼女を見たホーエンベルク様が頷き、彼女の方も軽く会釈を返す。何となく前世の新学期にあった塾講師同士のミーティング風景を思い出すな……。


「わたしはスペンサー子爵家の長女でアグネス・スペンサーと申します。教え子との関係性は良好だけれど、授業が途中で脱線しがちなのが悩みかしら~? 時間内に一つの分野に集中させるにはどうしたら良いのか、今日はその辺りの対処法を教えて頂けると嬉しいわ~」


 のんびりと小首を傾げてそう微笑む彼女に頷き返し、視線でホーエンベルク様を促すと、彼も律儀に小さく挙手してから口を開いた。


「俺はホーエンベルク伯爵家の当主でヴィクトル・ホーエンベルクだ。元はお二人と同じ子爵家の出身だから家格は飾りだと思ってくれ。今日は授業態度に問題はないのだが、どうにも教え子との距離を感じているので、それを詰める方法をお二人にご教授頂きたい」


 流石にホーエンベルク様もアグネス様も自身の欠点というか、足りない部分の洗い出しはしてきているようだ。二人は互いに現在困っている点を簡潔に述べ合うと、再びこちらに注目した。


 見つめられる私はといえば、塾の主任講師にでもなった気分だ。ちなみに前世の職場では最もなりたくない立場でもあった。給金は多少上がるけれど責任を背負わされる割に権限が少ない。きちんとした塾ならそうでもないのだろうけれど、私のいた塾では実質一つ上の社畜である。


 当時を思い出して身震いしつつも、教えを乞われては教育者としての血が騒ぐ。まだまだ古い考えを根底に抱えた指導方法が根強いこの世界(ゲーム)では、前世で私のとっていた方法は邪道と受け取られかねないけれど、取り入れるか取り入れないかは各々の判断だ。


「成程、お二人の苦手としておられる分野は大体分かりました。それでは僭越ながらこれより個別に対処方法について教授させて頂きますので、ペンとノートのご用意をどうぞ」


 つい前世の授業開始の癖で軽く両手を打ち鳴らすと、二人が一斉にテーブルにノートを広げたものだから、思わずその素直さを褒めようと教え子にするように二人の頭に手を伸ばしかけ――。


 直後に正気に戻り、手を引っ込めて「では始めます」と誤魔化した声が少しだけ上擦ったことが、どうか二人にはバレていませんように。

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― 新着の感想 ―
[一言] 撫でてあげたらよかったのに…… (/ω・\)チラッ 顔真っ赤にして喜びそうな人がいるのに…… (/ω・\)チラッ
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