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転生家庭教師のやり直し授業◆目指せ!教え子断罪回避◆  作者: ナユタ
◆第二章◆

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*4* あ(一方的に)知ってる人だ。


「ほう【大陸百年戦後史】か……なかなか渋いな。他には【開戦前夜】【国庫崩壊】【国を興した男達】か。これは貴方の趣味か? それとも――、」


 尋問されているわけでもないのにその微笑みに含みがあると感じるのは、前回逃げるように別れたせいだろう。まだ変態(ロリコン)かも確定してないのに逃げたからね。根に持っているのか。持ってるよね、普通。


 通路も狭いし真後ろにいるのだから、今回ばかりは簡単には逃げられまい。でも敵か味方かすら分からない状態で、この変態(ロリコン)(仮)に教え子のことを話すのは嫌だ。でもだからってどうすればいいの、これ?


 自分の上に覆い被さるように落ちてくるホーエンベルク様の影に、ゴクリと喉を鳴らしたそのときだ。


「おい、ヴィー、真面目に【南国極彩色事典】探してくれよ。急に後ろからいなくなるから、全然知らない人に話かけて恥かいただろーが……って、誰この人? まさかお前がナンパしたのか?」


 ひょこっとホーエンベルク様の背後から顔を出した人物は、私を見るやあきらかに“この程度のを?”という目をして不躾なことを言い放った。思わず“そっちこそ誰だよ”と言いたいところだけど、この場面では救世主だ。


「女性を前に品のない発言は慎めエリオット」


「いや、だってお前が急にいなくなるからだろー? だったら好みの子でも見つけたのかって期待するから。そんな体勢だし」


「どういう発想なんだ。お前と一緒にするな」


「ま、どっちでもいいけど。怖がってるっぽいよその子。連れがゴメンね?」


「ええと……多少驚かされただけですから、大丈夫ですわ」


 探している本の題名を体現したような彼は、オレンジがかった茶色の髪を色とりどりのガラスビーズで複雑に編み込み、翡翠の瞳でこちらを注視している。顔立ちは綺麗めでやや女性的なのに、口調が壊滅的に品を損なっている人だ。


 とても軽薄そうな雰囲気だけれど、着ているものの質感から結構良いお家の出身者だろう。前世で人気だった“個性を大切にする自由な教育”を推すご家庭なのかもしれない。あれ、学校とか教育現場はだいたい言われても困るやつだから。


 ――で、塾で言われても困るやつ。塾は学校教育を下敷きにしてるから、むしろ家庭教師の方がまだ自由がきくんだよね。まぁ、今はそんなことよりも早くこの人をここから連れていって欲しい……って、あれ? 気のせいか何かどこかで見覚えがある気がする。それに彼が探している本の題名なら――。


「あの、その本ならこの棚の三つ隣の筋にあるのを見ましたよ。背表紙からは極彩色も南国も感じられない地味な装丁でしたけど」

 

「嘘だろ、何その裏切り。南国って言ったら普通赤とか黄色だと思うよね?」


「それは私も思いました。本体は焦げ茶色ですし、そもそも置かれてる棚の分類からしても選別間違いだと思いますよ。料理本の棚の隙間にありましたから」


「……聞いただけだと見つけられなさそうだな」


 何てことはない大きな書店あるあるだ。分類しようと思ってた担当店員が定時に追い立てられて帰ったあとに、他の棚の担当者が分類が終わってるものだと思い込んで、気をきかせて棚に入れておいてくれるやつ。優しい悲劇。


 そしてこの世界には便利な書籍検索システムを搭載した端末がない。一度見失うと見かけた時間の倍以上の時間を使って探さねばならない地獄。男性陣の間に絶望感が漂う。


 ――この隙をついて逃げようかと思った。思ったんだけど……検索システムがない中を探すことに多少同情の念が沸く。


「あの、私も見かけてから結構経つので大体の場所しか憶えてませんけど……案内しましょうか?」


 我ながらとんでもなく気乗りしていない声が出たものの、そこは勘弁して欲しい。本当なら即刻この場を去りたいくらいなのだから。するとエリオットと呼ばれていた彼は、流れるように私をホーエンベルク様の囲いから救い出し、いつ掴んだのか私の手をとっていた。早業か。


「目つきが悪いのに優しいお嬢さん。無事に本が見つかったらさ、あとでお礼にお茶を奢らせてよ」


 そんな現金で無礼極まる発言と共に私の手の甲に口付けを落とした直後に、ホーエンベルク様から頭に拳骨を落とされて悶絶していたけれど、自業自得だ。


 けれどそんな中学生男子のようなやり取りをする二人を眺めていたら、いきなりピシャーンと前世のゲーム画面と、目の前で涙目になっている残念な美青年の姿が重なった。


「……エリオット・フェルディナンド?」


 思わず零れたその呟きに「あれ、知ってくれてるんだ?」とヘラリと笑う彼と、対照的にムスリとするホーエンベルク様がおかしくて。悪いとは思ったけれど笑ってしまった。

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