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転生家庭教師のやり直し授業◆目指せ!教え子断罪回避◆  作者: ナユタ
◆第八章◆ 

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★19★ 昼に飛ぶ蝙蝠。


 天幕に戻るとすでに顔見知りの姿がいくらか見受けられたが、皆一様に表情は固い。こちらに気付いて目礼を返す者はまだ良いものの、こんなときだというのに叩き上げの俺を目の敵にする一部の貴族達から睨まれた。


 本来の爵位では作戦を練るために天幕に入ることも難しかっただろうことを思えば、いまはフランツ様の教育係を受諾することで得た伯爵位がありがたい。彼女のために僅かでも助力ができる。


 唯一話せそうなハインツ侯爵家とコーゼル侯爵家の私兵を束ねる者達は、まだここに集合していないようだ。


 周囲を見回しても誰も彼も自領から連れてきた副官と話し込んでいるため、こちらから声をかけるにはもうしばらくかかりそうだと判断し、せめて漏れ聞こえる内容だけでも拾おうと端により耳をそばだてることにしたのだが――。


 ふと天幕内で俺と同じように端に寄って誰と話す風でもなく、周囲の会話に耳を傾けている兵士が一人いることに気付いた。しかしどこにでもいそうなその風体に奇妙な違和感を感じて、その違和感の正体を見極めようと彼を観察していると、相手側もこちらの視線に気付いたのかこちらに視線を寄越す。


 肩までの金髪に緑色の瞳に白い肌。特別取り立てて何かが珍しい色味ということもない。視線がぶつかったと思うと兵士は微かに驚いた表情を浮かべ、そしてすぐに薄く笑った。そのまま視線を天幕の外に一瞬向けて“ついてこい”とでもいうようにその場を離れる彼を追い、少し遅れる形で天幕から出た。


 外に出たところでヒヤリとした空気が肺を締め付け、初めて天幕内の熱気が凄まじかったことを知る。


 温度差で一瞬鎧の下の肌が粟立ったが視線を巡らせ、いつの間にかかなり離れた場所に立つ彼の姿をみとめてそちらへと歩を進めた。近付くにつれ大きくなる違和感は、彼の目の前に立つ頃には確信に変わっていた。


「すまない……こう呼ばれることは不快だろうが、貴殿は白い蝙蝠だな?」


 尋ねたところで答えることはないだろうと思っての言葉だったが、意外なことに相手は一つ頷く。白い蝙蝠とはガンガル達リベルカ人と他民族……とりわけ白人種の色が強く肌に出た者達を指す。言い方はあまり良くないが要は混血児だ。


 ただ、彼等のような血はどちらの人種からも迫害される。片方からは普通に他民族に紛れて生きられることを妬まれ、もう片方からは自分達の姿形を利用して土地に潜り込んでくる異端として疎まれるのだ。それは呼び名にも現れており、鳥にも獣にもなれないことを揶揄する蝙蝠が使われていた。


 目の前の彼のようにこうして表の世界に出てくる者もいる。ミステル座にも一人女性がいるにはいたが、ここまで肌の色素は白くなかった。先の戦争で白い蝙蝠を見たことがないわけではなかったものの、彼に至っては瞳の色すらリベルカ人の特色を持っていない。


「どうして俺を外に呼び出したのか尋ねても構わないだろうか」


 相手は再び頷く。しかしそれでも何故か口を開くことはせずに、小さなメダルらしきものと手紙を一枚懐から取り出してこちらに差し出してきた。反射的に受け取ったものの、それを見て今度はこちらが驚かされる。


 メダルには王家の紋章。それもフランツ様やマキシム様の使う略式のものではない。顔を上げると相手は視線で手紙を開封するよう促してくる。言葉での説明がないのは、人前に姿を見せるだけでも充分に譲歩しているということだろう。


 封蝋のない封筒の中に入っていたのは二枚の便箋で。そこに書かれていた内容に思わず溜息をついてしまった。


「……影は名前を明かせないと聞く。無理にその名を聞こうとはしない。だが貴殿が彼女達の伝言を一度王都に持ち帰ることなく、()に報せに来てくれたこと。そして彼女達の身柄を見守り続けてくれたことに、深く感謝する」


 メダルを返して目の前に立つ一兵卒の格好をした青年に騎士の礼を捧げれば、彼はメダルを大切そうに懐にしまい、踵を鳴らして手本のような敬礼を一つ残して去って行った。影は見える。影しか見えない。それでも王家に絶対の忠誠を誓う影ですら動かす彼女の存在に言い様のないものが胸に湧く。


 彼の立ち去った方角を見つめる俺の背に、ハインツ侯爵家とコーゼル侯爵家両陣営の私兵が揃ったことを報せる部下達の声が届いた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] かっこよ……!!(*´艸`*)
[一言] う、うおぉぉぉぉ…… か、かっこいいい…… もう、ああ、もう…… 語彙力がなくてすみません 5話ほど一気読みした結果、某絵描きさんに対して 「わかるけどもう少しロマンチックなアプローチを………
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