いつしかの日のランドセル
私は、絶賛小学生だ。ランドセルは毎日のお供。
でも、このランドセルも来年になったら使わなくなっちゃう。
あまり実感が湧かないけれど、もうランドセルを見なくなる日が来るのかな。
──おじいちゃんが亡くなった。
正直に言うと、私はおじいちゃんが嫌いだった。
いつも自分の自慢しか頭にない。一度喋り始めると自分話が止まらなくて、無視していると聞いているのかと怒り出す。かといって褒めると余計に自分話が長くなる。
面倒で、嫌いだった。だけど、おじいちゃんが亡くなったと聞いて少しだけ寂しくなった。
でも、どっちかって言われたら「あのうるさいおじいちゃんが亡くなってせいせいした」っていう気持ちの方が正しいのかもしれない。
そう思う自分も気に食わない。
かといっておじいちゃんの死を心から悲しめない。
お葬式でみんな泣いていた。そんな中私だけ泣けなかった。それが、なぜか悲しかった。
特におばあちゃんが一番泣いていた。
だっておばあちゃんにとっておじいちゃんは最愛の人だから。
小学校の頃から二人は友達だったから。
お葬式が終わった後、おじいちゃんの部屋でおばあちゃんは何かしているのか物音がした。
そっと部屋を覗くと、おばあちゃんはランドセルを見ていた。
たぶん、おじいちゃんの。今より革が黄ばんでいる古いランドセル。
おじいちゃんが私と同じぐらいの年だった時もあったんだ。
あんな老いたおじいちゃんが私と同じ年だった時はどんな人だったのかな。
そう考え事をしていると、おばあちゃんが私の方を見た。
「あら……りえちゃん。このランドセル、おじいちゃんのだよ。りえちゃんとおんなじ年だった頃の」
おばあちゃんは悲しそうに、しかし懐かしそうに顔を崩した。
「あたしがおじいちゃんと会ったときもこんぐらい。おじいちゃんは小学生の頃やんちゃだったんよ。成人になったら真面目になって仕事してたなあ。今はお喋りが多くなったねえ、もうそのお喋りも聞けないのだけど」
あのおじいちゃんがやんちゃだったなんて考えられない。
人ってそんなに変わるものなんだ。私もそうなるのかな。
そんな私の考え事を見透かしたようにおばあちゃんは微笑んだ。
「でも、変わらんものもあったよ。あたしのこと大切に想ってくれるとことか」
それを聞いて私の目に何かがジワリと溢れた。




