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侯爵夫人の嫁探し~不細工な平民でもお嫁に行けますか?  作者: ひよこ1号


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爵位で殴り返しますね

「レオナ様、わたくし、ハンナ嬢とリーディエ嬢を虐めておりましたかしら?」


私の問いに、可笑しそうにレオナ様が笑う。


「いいえ。元平民だと罵って、見下していたのはハンナ嬢とリーディエ嬢の方でしたわね。その件で侯爵夫人に失格と判断されて、一番早く脱落したのではなかったかしら?」


「お二人は美しくていらっしゃるし、わたくしより身分が高いのに、どうやって虐められたと仰るのか不思議で。二人きりになった事もございませんから、暴力なども振るえませんし……」


ちら、と様子を見れば、ハンナ嬢とリーディエ嬢はわなわなと身体を震わせている。

だが、それよりも顔を真っ赤、というよりはどす黒く染めているのはドミニク王子だ。


騙されていたのに気づいたのかな?

それとも頭越しに会話された屈辱?

でも話しかけてはいけないと言ったのはドミニク王子ですし。


「ロンネフェルト公爵令嬢のレオナ様と、ファルネス侯爵夫人の証言があれば、心強いですわ」


身分や立場を持ち出すなら、爵位で殴り返すまでですわ。

伯爵令嬢二人と、どっちが強いかは分かりきっている。


「それに、先ほどアルヴィナ様にもご質問差し上げたのですけれど、国王陛下と王妹殿下の決定を、第二王子殿下が許可もなく勝手に反故にするのは許されるのでして?わたくしまだ貴族社会に慣れていないので、教えて頂けると嬉しゅうございます」


「正当な申し出ならば、通常、国王陛下と王妹殿下にまずは話を通しますわね。ですから、今のは完全に越権行為であり、名誉棄損でもありますわ」


レオナ様の言葉に、今度は第二王子ともどもハンナ嬢とリーディエ嬢の顔も青くなる。


「どうやら私が言い過ぎたようだ。聞き流してくれ」


は?

何を仰ってるか分かりませんね。


「レオナ様はグラーヴェ家に抗議文を送られるのでしたよね?」

「ええ、送りますわ」


こくり、とレオナ様は頷く。

実に楽しそうに。

私も笑顔で頷いた。


「わたくしも義両親と侯爵家に許可を得ましたら、その抗議文とやらを送らせて頂きとうございますわ!何事も初めての事は緊張いたしますわね!」


「ええ。日々勉強でございますわね」


傲慢なドミニク王子の言葉はぬるっと無視して、レオナ様と会話を続ける。

耐えきれなくなったように、ドミニク王子は声を荒げた。


「おい!話を聞け!余計な事はするでない!」


私は王子の方へ向き直る。

けれど、王子には話しかけない。


「ハンナ嬢、リーディエ嬢、お久しぶりでございます。王族を騙し、わたくしと侯爵家の名誉を貶めた事につきましては、貴女がたの責任も重うございます。正式にお二人のご実家にも抗議させて頂きます」


二人は何かを言い返そうと口を開くものの、どう言い返していいのか分からないらしい。

虐め自体がでっちあげなのだから仕方がない。

というか、分かり易い嘘をつくなんて子供じみている。

ドミニク王子がこんな行動に出るとは思わなかったのだろうか?


「王族を無視するとは、何と無礼な女だ!」

「……………」


じっと憤慨する王子を見つめる。


「不敬罪だ!」

「……………」


無視はしていないので、そのままじっと見つめ続けた。


「平民風情が生意気な!!」


無視するなというので話を聞いていたが進みそうにないので、ディオンルーク様を振り返った。


「あの、ディオ様。直答を許可されていない場合は、どうすれば宜しいのかしら?」


「何もしなくていいよ、アリーナ嬢、いや、アリーナ姫」


そこに颯爽と現れたのは、王太子チェストミール殿下だった。

優秀な第一王子だ。

皆が無言で頭を垂れる。


「え……姫?何を仰っているのです、兄上」

「アリーナ姫は市井には下っていたが、血筋は正当なる貴族だ。わが国の伯爵家の直系であり、サラセニア王国の王族の血が流れている。婚約の前に正式にサラセニア王国の王籍に名を連ねられたのだ。愚かなお前は、他国の姫君に偉そうに怒鳴っていたのだよ」


さあっと、再びドミニク王子は顔色を失くす。

青を通り越して白い色だ。

ハンナ嬢とリーディエ嬢も信じられないというように、口をあんぐりと開けていた。


まあ、驚きますよね。

平民と罵っていた相手が、王族になって戻ってきたら。

そんな事滅多に起きないと思うけれど、起きたのだから驚いても仕方ない。

つまり、抗議文は他国の王族から届くことになるのだから、実家にとっても宜しくない結果となる。

実家に打撃を与えた令嬢がどうなるのか。

大体は修道院行きとなるだろう。


「兄として、この国の王太子として正式に謝罪する」

「いいえ、王太子殿下。謝罪には及びませんわ。この場を収めて下さって感謝いたします」


私は淑女の礼を執る。

実際、これどうしようかな、と思っていた。

わたくしだって王族よ!などと叫ぶわけにもいかないし。

平民だったのも確かだし。


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