表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
亡国の歌姫と琴の騎士  作者: 九JACK
fin.騎士
24/31

退屈しのぎ




 ──fin.騎士──





 カッカッ

 そんな音で、姫は目を覚ます。何だろうか。何か、塔の壁を突くような音。

 顔を上げて、目が眩んだ。数秒固まり、それからゆっくりと目を開けていくと、南の小窓からさんさんと光が射し込んでいる。だいぶ日が高く昇っているようだ。

 随分と眠ってしまったな、と思いながら、姫は窓から身を乗り出し、辺りを見回す。今日は門番が来る予定だったはず。まだ来ていないだろうか、と姫は焦る。

「ああ、姫様。お目覚めになられたのですね」

 すると案の定、塔の下方から聞き覚えのある声。

「お、おはようございます、門番様。いらしていたのですね」

 姫は慌てて応じた。姫の焦りを知ってか知らずか、先程来たばかりです、と門番の老人は応じる。

 気を遣っての発言なのだろうが、姫は頬が火照るのを止められない。穴があったら入りたい気分だ。

 そんな動揺を抑えるために塔の中に顔を引っ込め、深呼吸を一つ。少し落ち着くと、カッカッという音が耳についた。

「そういえば、先程から何やら妙な音がするのですが何なのでしょう?」

「どのような?」

「塔の壁を固いものが突くような音です」

 姫が告げると、門番はああ、と得心したように頷く。

「それはきっと、鳥ですよ。姫様に会いたくて、気を引こうとしているのでしょう」

「鳥が? 何故?」

 ふふ、と門番は目元を和らげ、微笑んだ。

「きっと、姫様の歌が聴きたいのですよ。鳥も歌が好きですからね」

「まあ」

 塔を小突く小鳥たちの姿を想像して、姫の顔も自然と綻ぶ。

「と、それはそうと、門番様、今日はどういったご用で?」

 姫が問うと、門番はそうでした、と切り出す。

「実は姫様が非常に退屈しておられるかと思いまして。家の書棚を整理しておりましたら、面白い物語が出てきましたので、姫様にお聞かせしようかと」

「どのようなお話なの?」

「おとぎ話です。この辺りの古い伝承なのだとか」

 門番はそう言って衣服の懐から本を取り出す。姫の位置からではよく見えないが、絵本のようだ。

 門番がすう、と息を吸い、その題を読み上げる。

「"ことのきし"」

「!?」

 姫がそれを聞き、息を飲む。門番が静かに語り出す中、塔にはカッカッという音が響いていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ