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私、曇りの聖女と呼ばれたけれど! ~転生悪女が授かったトンデモギフトの正体は何?~  作者: 川崎悠
第1章 悪役令嬢は暴れん坊

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33/40

33 疑惑

 これは推定乙女ゲームの規定路線シナリオなのだろうか。

 この六人が、わざわざ陛下の前にまで呼び出されたのだ。

 しかも正体のわからない悪党たちは『聖女』のギフト持ちを狙っていると判明した。


 そうなれば、推定ヒーローの彼らはヒロインちゃんを守りたくなるはずだ。

 だって彼女は狙われているのだから。

 そこで交流が増えていって、ドラマが展開される?


 ……そんな王子や彼らに守られるヒロインちゃんを横に見ながら、相手にもされないハズレギフトの私は、どんどんヒロインちゃんに嫉妬の炎を燃やしていく?


 うわぁ、ありそう!

 そうか、そう来たか。もしかして、ここからがシナリオの本番なのでは?

 いや、この推理が正しいかはわからないけど。

 ここに来て、ぐぐっと乙女ゲーム感が強まってきた気がする。

 私が悪役令嬢になり得る要素も色濃くなった。


 それはそうと一大事だ。

 まさかギフトを複製する技術なんてものが存在するとは。


 複製が可能としてもギフト『斉天大聖孫悟空』を十全に活かせる人間なんて、この世界にはいない?

 現にギフトで解析しても、ろくな情報が出てこなかったのだから、余計に。


 でも、パッシブで発動する能力だけでも厄介だし、何かの技術で、孫悟空が使える術など解析されて使いこなされても厄介だ。

 私以外の転生者が他にいて、孫悟空について詳しい者だって現れるかもしれない。


 何より、よくないのが『七十二(しちじゅうに)変化(へんげ)』である。

 これを悪用すれば、国王のふりでも、高位貴族のふりでもできてしまう。

 顔を変えての犯罪だって可能だし、他人を陥れる手段など、いくらでも思い浮かぶ。

 冤罪のし放題だし、潜入のし放題。

 文明社会で世に放たれていい能力ではない。

 それは今の私もなのだけど!


 その他にも考えるだけで危険な能力がある。

 たとえば、孫悟空は巨大化(・・・)もできるのだ。

 普通に、物理的に王都を大破壊できてしまう。


法天象地(ほうてんしょうち)』、孫悟空の体を巨大化する術。


 私はするつもりはないが、破壊を目論む者の手に渡るのは絶対にだめだろう。

 いや、巨大化の術が使えるかの検証はまだしていないのだけど、他の様々な能力が備わっているので、おそらくできると思う。


 ……あと、笑い話のように聞こえるかもしれないけど。

 仮に日本人の転生者が他にもいて、このギフトを授かった場合。

 その人物が、西遊記について詳しいとは限らないのは確かだ。

 孫悟空の細かい能力なんて万人が知っているとは思えない。


 けれど、とんでもなく困ったことに『孫悟空が巨大化する』ということについて、原典を知らなかろうと、そのように考える者は、かなりの数がいるはずだ。

 それはもう世界的に有名な、あのアニメのせいで。


 そう。原典を知らなくても、日本人の多くが、孫悟空は『大猿になって大暴れ!』ができると考えてしまう可能性が高いのだ。

 そして、それは実際に実現してしまう。

 できることに気づけば、それはもう大量破壊兵器に等しい。

 一人だけ進撃する巨人である。都市破壊なんてお手のもの。危険レベルがわかるだろう。

 今の私も、実はその『危険物』なのよねー……。


 もちろん、そんな知識待ちが現れるかもしれない、というのは、私の他にも転生者がいる場合の話なのだが。

 私という前例がいる時点で除外できない懸念だ。

 つまり、どう考えても、このギフトが他の者の手に渡るのはアウトである。



「聖女のギフトを奪う、いや、複製しようとした、ですか。恐れながら陛下、それについて詳しく聞いてもいいでしょうか」


 ヴィンセント殿下は、父上とは言わずに陛下と呼び、問う。

 国王も鷹揚に頷き、応じた。


「質問があるのなら聞いてみよ。それについてわかっていることを答えた方が早かろう。ヴィンセント以外の者たちにも直答を許す」


 私たちは互いの顔を少しだけ見合う。私はフィナさんとだ。


「では、まず私から。その複製されたギフトは、決して消えないものなのですか? 一度、複製されてしまえば、その者もまたギフテッドとして生涯、その力が使える?」

「複製されたギフトは授かるものではないようだ。その道具を保有している間だけ使える。生活魔法の力を込められた魔道具と同じ類のようだな」

「……なるほど」


 生活魔法は、普通にちょっとした火とか水とかを出せたりできる。

 その力の込められた魔道具は、前世の家電みたいなものだ。

 つまり、この世界には『超常の力を道具に込める』という概念が元から存在する。

 ならばギフトだっていけるだろう、と。そういう発想で作られたのだろうか。

 いや、本当。孫悟空の存在感のせいで、せっかく魔法が使える異世界なのに魔法の影が薄いわね。


 次に質問したのはジュリアン氏だ。


「道具ならば、その水晶は壊せるのでしょうか?」

「それはもちろん、そのはずだ」

「では、複製されたギフトを使い続ければ、それは壊れるのですか? 耐久性はどれくらいですか?」

「その検証はできていないが、連中を尋問した答えとしては、無尽蔵に使える物ではないようだ。ただ、それは今の技術の問題であって、いずれはもっと長期的に使えるものになる可能性はある」

「……わかりました」


 技術としては革新的ねぇ。

 『聖女』のギフトは悪用が難しいものばかりのはずだ。

 善行に使うことが前提ならば、悪くはない技術なのだけど。

 しかし、誘拐なんかして、強引にギフトを複製しようとした連中の目的が善行とは思えない。


 次の質問はベネディクトさん。


「聖女を誘拐した者たちが何者なのかはわかっているのでしょうか? そのような技術を持っているのならば、裏に相応の組織がいるかと思いますが」

「それはまだわかっていない。どうやら捕まえた連中は末端の者だったらしいからな。その背景にまで、まだ手は届いておらぬ」


「そうですか……。ギフトの複製は、神への冒涜に等しい行為かと思います。王家はこの件を、どのように判断されていますか?」

「まだ何も定まってはいない。ただ、そういう技術が、我らの知らぬ間に確立されていたのが事実であり、対応はこれからだ。それには教会も関わってくることだろう。ギフトの複製が〝異端〟と見なされる可能性は大いにある。無論、神に直接ギフトを授かったであろう、お前たちは別だがな」

「……承知しました」


 異端か。そりゃあそうよね。

 現代日本の一般人的には、そういう話ってちょっと遠い印象だけど。

 この世界は普通に王都などの都市部に大々的に教会があるし、大司教もいる。

 異端認定や破門といった言葉が、すぐそばにある世界観だ。


 次の質問はアイゼンハルト卿。


「王家は、聖女を誘拐した目的は、なんだと考えておられますか?」

「目的? 聖女のギフトの複製以外にか?」


「はい、陛下。仮に自分が、他者のギフトを奪えるとして。なぜ、それが『聖女』なのかという話です。それは犯人、黒幕につながるものかと思います。たとえば、自分の『不落の守護者』を奪えれば、兵を強化できます。それが目的ならば『聖女』ではなく、自分のギフト『不落の守護者』を狙うはずです」

「……そうかもしれないな」


「であれば『聖女』を狙った理由が気になります。聖女のギフトは人を守り、人を癒すギフト。破魔などもありますが、現状はそれが役立つ機会はないと聞いています。つまり、そのような技術を生み出した者たちは、力強くなれる『不落の守護者』でも、他の有用なギフトでもなく、『聖女』を狙う必要があった。そうではないでしょうか」


「他の者は狙いにくかっただけかもしれぬぞ。アスティエール嬢は子爵家の娘だ。王子であるヴィンセントを狙うよりは、よほど楽な相手であろう」


「確かに陛下のおっしゃるとおりです。しかし、その一件には自分も関わりましたが……。当時、アスティエール嬢のそばには、マロット公爵令嬢もいたはず。ならば、公爵家の護衛もついていたはずであり、標的とするには、むしろ困難な対象であったと思います。それなのに彼女をわざわざ狙った」


 アイゼンハルト卿は、そこで私に体を向けた。


「『聖女』のギフトを欲する動機があり、また当時のアスティエール嬢のそばにいて、むざむざと彼女を誘拐させた。公爵家の護衛は意図して遠ざけられ、そのあとは都合よく、アスティエール嬢と無事に帰還。まるで何もかもが、たった一人の企みのようではありませんか? アスティエール嬢が解放されたのは、彼女のギフトの複製がすでに済んでおり、用済みとなっていたからではないでしょうか」


 その場にいる者たちの、何より国王の視線がすべて私に集まった。

 アイゼンハルト卿はこう言っている。


 カーマイン・マロットこそが犯人だ、と。


「無価値」と捨てるのは結構ですが、私の力は本物だったようですよ? ~離縁された転生令嬢、実は希少魔法の使い手でした~

https://book1.adouzi.eu.org/n5050ln/

本日、こちらの書籍版、発売です!

よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
 は? そろそろ鬱陶しいぞ、こいつ。
脳筋キャラはサッパリしているからアリなんだぞ? 陰湿粘着質自分の思い込みこそ正義負けを認めない脳筋なんて、どこに需要が……?というか、どこが騎士なん?
欲しがってないし、むしろ否定してるw カーマイン様、既に王子の婚約者候補に入ってるしギフトも持ってる上に公爵令嬢。 他から見ても動機が無さすぎて笑える^ ^ さっき王子が身分制度を説明したばっかりなの…
感想一覧
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