32 謁見
G4とフィナさんと一緒に陛下にお呼ばれして、王宮へ向かう。
馬車は三台分、待っていた。
一台にヴィンセント殿下。二台目にG4他三人。
三台目に私とフィナさんだ。男女で分けてくれるらしい。
「……聖女と、マロット公爵令嬢が一緒ですか?」
「ああ、そうだよ、ジーク。何か問題があるのかい?」
「問題は……」
ある。そう言いたげなアイゼンハルト卿。
今のところ私に対する敵意は、彼が一番ある状態だ。
そんな彼は担当イベントを一つ、確実に私に潰されているのである。
下手したら最初の合同授業の時も『ジークヴァルトくんって、強くて格好いい!』なシーンだった可能性がある。
だから、都合二つのイベントが私の手でぶっ潰されている計算だ。
ヒーローなのに可哀想。ウキキッ。
「私は問題ありません!」
「……っ! 人がいいな、聖女は」
フンス! と鼻息を荒くするフィナさん。
人がいい、で済ませようとするアイゼンハルト卿。
G4他二人は我関せず。ヒロインちゃんにまだ興味は芽生えてないのかしら。
「カーマイン嬢はどうしたい?」
「どう、と言いますと?」
「馬車に同乗していいかどうか決めるのは、セラフィナ嬢ではない。公爵令嬢であるカーマイン嬢だろう。ジークがそれに口を出す権利はないし、セラフィナ嬢が許可したからいいわけでもない。カーマイン嬢の許可があって、初めてセラフィナ嬢の同乗が許される」
「……!」
あらまぁ。どういう心変わりかしら。
ヴィンセント殿下のそれはアイゼンハルト卿の態度への叱責だ。
公爵令嬢、侯爵令息、子爵令嬢、その序列を弁えろというお達し。
珍しいことをする。側近三人の振る舞いには口を出さないものかと。
そして怒られたアイゼンハルト卿は屈辱と羞恥で渋い顔をしている。
やーい、怒られてやんの、ウッキッキー!
「私は別にフィナさんと一緒で構いませんよ」
「……そうか」
あら。認めたのに不満そう? お年頃かしら、ヴィンセント殿下。
そして、私とフィナさんは三台目の馬車に乗り、王宮へ出発した。
「ヴィンセント殿下は、マイン様と一緒の馬車に乗りたかったのではないですか?」
「……ああ、そういうことかしら、さっきの微妙な間は」
「だと思います」
私から殿下と一緒の馬車がいいと言わせたかったのか。
珍しくアイゼンハルト卿を窘めると思ったら、そんなまわりくどい。
さては殿下、面倒くさい性格をしているわね。
将来、彼の伴侶となる人は大変だろうな。
「がんばってね、フィナさん」
「え? 何をでしょう……」
「貴方はそれでいいのよ」
「???」
しかし、陛下からの呼び出しとはいったいなんだろうか。
この面子を呼ぶ以上、ギフト絡みだとは思うのだが。
でも、まったく想像できないわね。
生徒会選挙が終わったことには関係ある?
理由もわからないまま、私たちは王宮へ訪れ、謁見の間の方へと案内される。
もしかして、ここから勇者パーティーの旅立ちイベントだろうか。
なくもなさそうなのが嫌よねぇ。
実は乙女ゲームはまだ始まっていなかったとか。
私以外のメンバーは役割分担ができてそうだし。
それを言ったら私も別に前衛ユニットとして使えるのかもだけど。
問題は何と戦うのかである。
いや、別に勇者パーティー路線とは決まっていないのだが。
待機場所で一旦、待機してから謁見の間への入場となる。
おそらく私たちが王宮に来た時点で、陛下に報せが入っているのだろう。
まさか、ずっと玉座で待ち構えているはずもないので、時間がどれだけかかるか。
なお、G4たちは王宮に慣れた様子で、フィナさんはどこもかしこも珍しそうに視界をうごかしている。
私も別に王宮に慣れてはいないが、そこまで感動はない。
これは今世の私が公爵家で育ったせいなのだろう。
どこまでも前世基準だったら王宮そのものに感動していたに違いない。
なにせ一般人だったはずだから、前世の私。
「陛下のご準備が整いました。謁見の間へお進みください」
私たちは謁見の間へと移動する。
玉座には国王陛下が座っていた。
ヴィンセント殿下を先頭にして、私たちは少し下がった場所に並ぶ。
陛下の御前に来たところで、それぞれの礼を尽くす。
「顔を上げよ」
そう言われて、全員が顔を上げ、玉座を見上げる。
「今日、お前たちを呼び出したのはギフトについて、伝えておくべきことがあるからだ」
やっぱりギフト関係の呼び出し。
でも、わざわざ呼び出すようなことが? なんだろうか。
「お前たちの世代でギフトを授かる者が六人も出た。一人、二人ではなく六人、しかも全員が同じ年齢だ。これは王国史の記録にもないことだ。ゆえに、この先、王国に何かが起きるのではないか。そのように考えている者も多い」
そうなんだ! そこまでのことだったか。確かにギフトを授かること自体がレアケースなはず。
それなのに同世代、全員が同じ年齢で、そのなかに王子がいる。
そんな者たちがギフトを授かったのだ。さらにギフトのうちの一つは『聖女』。
これはいったい、どういう事態なのかと思うのも無理はなかった。
「そのような状況ゆえ、お前たちのことを特別視している者は思いの外多い。まず、そのことを理解しておくがいい」
私たちは無言のまま、動作で承知の意を示す。
「先日、アスティエール子爵令嬢が誘拐されかかる事件が起きたそうだな。幸い、マロット公爵令嬢の協力もあり、無事に救出されたそうだが」
ここでも無言のまま、肯定。
「アスティエール嬢を誘拐しようとした連中が、ある道具を持っていた」
ある道具?
「それは、洗礼水晶によく似ているものだった。……持って来い」
洗礼水晶。私たちがギフトを授かったときに用いていたあれだ。
陛下の命令で、誘拐犯が持っていたらしい道具が運ばれてくる。
なるほど。確かに水晶っぽい。
でも、私たちが受けた儀式の時より、かなり小さいわね。つまり別物だ。
「捕らえた男たちを尋問し、その目的と、また道具の用途などを聞き出した。すると奴らはこう答えた。その道具は『ギフトを複製し、誰でも使用可能にするもの』だと」
「「「「「……!?」」」」」
ギフトの複製!? 誰でも使用可能に!?
「奴らがアスティエール嬢を誘拐した目的は、彼女のギフト『聖女』を複製するためだったようだ。幸い、未然に防がれたようだがな」
あまりにも想定外の方向から大問題が発生した。
私のギフト『斉天大聖孫悟空』は、悪人の手に渡すことなどできない。
悪人の手に渡った孫悟空の力など、それは魔王そのものだ。




