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私、曇りの聖女と呼ばれたけれど! ~転生悪女が授かったトンデモギフトの正体は何?~  作者: 川崎悠
第1章 悪役令嬢は暴れん坊

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24/40

24 事件は連続する

「わっ!」


 ヒロインちゃんと街歩きを続けていた。

 従者たちは少し離れたところを歩いていて、馬車は教会前に置いてある。

 そんな時だ。

 ぶつかりおじさん、もとい、ぶつかりチャイルドが発生。

 ヒロインちゃんにぶつかったかと思うと、謝りもせずに走り去っていく。


「大丈夫? フィナさん」

「は、はい。ただ、びっくりしました……」


 勢いよくぶつかったうえで、服を引っ張られたのか、ヒロインちゃんは転んでしまった。

 彼女を助け起こして埃を払ってあげる。


「あ、ありがとうございます、マイン様」

「いいのよ」


 その時点で。おや? と思わなくはなかった。

 それは孫悟空の勘というより、前世の記憶からくる既視感だ。


「あれ? ない、ないです」

「何がないの?」

「私のお財布です!」

「財布」


 ……スリ? フィクションの世界でありがちなイベント。

 いや、現実世界でも治安によっては充分に発生しうる事件。

 でも、問題はそこじゃなくて。


「あ、さっきの男の子!」

「フィナさん? その、ちょっと待って……」

「私、追いかけます!」

「ああ! フィナさん!?」


 ヒロインちゃん猛ダッシュ開始! 止める暇もない!


「なんか嫌な予感!」


 これ、たぶんアイゼンハルト卿が一緒にいるのが前提のイベントじゃない!?

 ヒロインダッシュは高速ダッシュ!

 駆け抜けるその足に、追いつける者はなぜかいない! これもギフトかしら!?


「きゃあああ!」

「うわぁあ! 絶対さらになんか起きた!」


 私は路地裏に向かって走り、ヒロインちゃんの声がした方向へ向かう。

 すると、そこには倒れているヒロインちゃんと、怯えている少年の姿!

 さらに複数の男性たち!


「……!」


 私は咄嗟に、立ち止まって、バックステップで引き返し、建物の影に飛び込む。


「あ? 誰か来たんじゃねぇのか?」

「この女の連れじゃねぇか?」


 まっずい! 絶対これ、なんかのイベント引き当てた!

 しかもヒーロー不在のまま! ヒロインピンチ!

 建物の影に入り込みながら、私は右目を押さえる。


「──火眼金睛(かがんきんせい)


 自覚はできないけど、私の左眼に色の変化が生じる。

 すぐにヒロインちゃんを対象にして視る。

 普段はオフにしている聴覚・嗅覚もギフトオン状態に。


「あっちの女も上玉だったろう。一緒に連れていきてぇんだが」

「ヤバいって気づいて逃げたんじゃねぇか?」

「チッ! だとしたらすぐに誰か呼んできやがるか……?」

「さっさと連れていくぞ。この女だけでも充分だ」

「ああ、連れていけ」


 男たちは気を失った彼女を背負い、近場に置いてあった荷車に乗せて、布を被せて隠す。


「あ、あの……」

「ああ? なんだ、ガキ」

「その人、どうするの……」


 さっき彼女からスリをしたと思わしき少年が震えた声でそう尋ねる。


「お前の知ったことじゃねぇだろ」

「で、でも」

「なんだ? 文句でもあんのか」


 男に凄まれて、ビクリと震える少年。無言のまま激しく首を振る。


「だったら黙ってろ。ああ、お前の取り分か? そうだな」


 男が取り出したのは可愛らしいお財布。彼女の物だ。

 そこから銅貨を一枚だけ取り出し、少年に投げ捨てる男。


「これでいいな」

「……!」


 足りない、と言いたそうな少年。でも、文句も言えないのだろう。

 泣きそうな、悔しそうな表情で押し黙る。


「じゃあな」


 そうして男たちは彼女を乗せた荷車とともに去っていく。


 私はバクバクと鳴っている心臓を、深呼吸してどうにか落ち着かせる。

 火眼金睛を一度解き、深く息を吐き出した。

 そして建物の影から出ていき、少年のところへ行く。


「……あ」


 近づいてきた私に気づいた少年が顔を上げる。


「彼女の行き先は? どこに連れていかれたの?」

「……!」


 少年は首を横に激しく振る。知らないのか、言えないのか。


「そう」


 私が歩み寄るのを黙って待つ少年。泣きそうな、すがりたそうな表情。

 彼には私がどう見えているのか。それはわからない。ただ。


「僕は」


 バチン!


「!?」


 私は、問答無用で少年の頬を引っ叩いた。


「貴方は悪いことをした。だから私に叩かれた。彼女がこれからひどい目に、……死んでしまったら貴方のせい」

「……!」


 私がそう告げると少年は涙を流す。

 少年と目を合わせるようにしゃがみ、まっすぐに見つめる。


「……泣けるのね。まだ救いがあるわ。いい? 貴方にこれから役割を与える。表通りに行って騎士を探しなさい。そして、ここで見たことを言うの。『金髪の、綺麗なお姉さんが男たちに連れていかれた、助けて』って。他のことは言わなくていい。私のことも、彼女の財布を盗んだことも言わなくていい。言うなら男たちが『聖女』と言っていたことだけ。ほら、行きなさい。それで貴方は許されるはずよ。彼女のことは……私が助けるから」


 少年は、泣きそうな顔のまま、コクンと頷いてみせた。


「騎士は表通りにいるわ。短い髪の、背の高い、強そうな騎士を探して、助けてって言うの」

「……わかった」

「よし、行きなさい」


 私は少年の手を取って立たせ、表通りに走らせた。

 見るからに困窮していそうな少年だったが、その足取りは確かだ。


 ……あの少年も〝イベント〟に含まれているような気がする。

 フィナさんが無事に救われたあとで、彼女に謝る機会があれば救われる。

 そんな気がしてならない。


「……ふぅ」


 私のギフトで、パワーで解決できるならいいけど。

 仮に強制力があって起きた事件なら、ヒーローの手助けは必須になるかもしれない。

 だからこそアイゼンハルト卿はこの事件に巻き込ませてもらう。

 あらゆる手段で事件の解決を目指さないといけない。

 むざむざ目の前でフィナさんを誘拐された私の責任だ。


「……お釈迦様」


 私は手を組み、天に祈る姿勢を取る。そして宣言した。


「全力、解禁します」


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― 新着の感想 ―
 曇りの聖女とかいって曇らせるどころか晴らす方向に行動の結果が出ている公女様。  何か既に徳を積み始めているような。  それはそれとしてオラウキウキしてきたぞ!
おおおぉぉ……! オラ、わくわくしてきたぞ!
キター! 活躍の予感にワクワクです! 主人公がお猿系ならヒロインちゃんは猪系ですね~。一旦止まって欲しかった……
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