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爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第5章 魔王再臨と送還魔術

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第161話 爆弾魔は国境を越える

 城塞都市を脱出した俺達は、ゴーレムカーで街道を走っていた。

 あれから数多の刺客に襲われたが、特に問題はない。

 一人の例外もなく殺し尽くしてやった。

 都市の修繕費がとんでもないことになっていそうだが、こればかりは仕方あるまい。

 最近はずっと黒字だったので何とかなるだろう。


 道中、俺はホットラインでエウレア代表の片割れであるネレアと連絡した。

 彼女のスタンスを確認するためだ。

 ネレアはアリスに次ぐ権力や戦力を備えている。

 予め釘を刺しておくのは重要だろう。


 連絡の結果、ネレアは俺には敵対しないと宣言した。

 こちらが何か言う前に、食い気味で主張された。

 ただ静観に徹するそうだ。

 彼女の支配下にある暗殺教団も動かさないらしい。


 実に賢明な判断である。

 ネレアは俺とアリスの恐ろしさを知っているから敵対したくなかったのだろう。

 そんなことをすればどうなるかは、過去に死んだ三人の代表が示している。

 現在のネレアが生きているのは、ひとえに俺達と結託したためであった。

 さもなければエウレア代表はアリス一人となっていただろう。


 ネレアが協力してくれるのなら心強かったが、さすがにそこまで頼むわけにもいかない。

 それとなく仄めかしたものの、やんわりと断られてしまった。

 彼女にも立場があるのだ。

 大々的に俺に協力すると、各国から敵と見なされてしまう。

 エウレア代表としてやっていく以上、そういった不利な立場になることは避けたいのだろう。


 まあ、この件に関してスルーしてくれるだけでも十分である。

 どのみち世界は滅ぼすつもりだが、それについては黙っておく。

 知れば最後、さすがのネレアでも俺達を止めるに違いない。

 それだけの悪行だと思う。


 現在、俺達が向かう先は旧魔族領だ。

 いくつかの国を突っ切り、海を渡って上陸する。

 言うまでもないが、かなりハードな道のりが予想される。

 どの国も俺を狙っている状況だ。


 そもそも旧魔族領という情報自体が罠という可能性もあった。

 居場所を明かした時点で、俺達が向かうことはシュウスケも承知のはずだろう。

 そのリスクを抱えてまで映像で居場所を明言した理由が分からない。


 俺達を始末するための罠でも仕掛けているのだろうか。

 或いは、居場所を晒しても問題ないほどの自信があるか。


 まあ、どちらにしても方針は変わらない。

 俺達は旧魔族領へ向かうしかなかった。

 現状、他に手がかりもないのだ。


(シュウスケの能力が分かればいいのだが……それも難しいな)


 半年間、エウレアの情報網から逃れ続けた人物だ。

 相当に狡猾で慎重な性格だろう。

 やはり一度戦ってみて暴くしかあるまい。

 そのまま押し切って勝てるのがベストだが、それが困難であるのは知っている。

 俺は過去に殺した召喚者達との戦いを振り返る。


 【完全反射 A+】のコージ。

 【時間停止 A+】のミノル。

 【未来観測 A+】のミハナ。

 【幻想否定 A+】のトオル。

 【無限再生 A+】のアヤメ。


 基本的に能力を知らなければ絶対に勝てないタイプが多い。

 本当に反則レベルの奴らばかりだった。

 こうして五体満足で生きていられるのが不思議なほどだ。

 シュウスケがそのパターンでないことを祈るばかりである。


 まあ、もしものことを考えて逃走手段も用意している。

 俺だってこの半年で成長した。

 よほどのことがない限り、為す術もなく殺されるようなヘマはしない。

 周到に準備をしているのはシュウスケだけではないということだ。


 そうして追っ手もなく街道を走ること暫し。

 間もなく国境というところで、俺はブレーキを踏んだ。

 小高い丘の頂上から、前方に続く光景を注視する。


 そこには揃いの軍服を着た人間が整然と並んでいた。

 彼らは銃を携えて待機している。

 合計で数千は下らないだろう。

 もしかすると一万人を超えるかもしれない。

 そんな規模の軍が前方に控えており、しかも俺達のことを見ていた。


「隣接する共和国の軍隊のようね」


「わざわざ出迎えてくれるなんて、気が利くじゃないか。嬉しくて涙が出そうだぜ」


 俺は煙草をくわえたまま笑う。


 あの様子だと、穏便に通してくれることはないだろう。

 返事の前に鉛玉を撃ち込んでくるに違いない。

 陰湿な暗殺戦法はやめて、堂々と殺しに来たらしい。

 たぶん国境の各所に同じような軍を展開して、俺達のことを待ち伏せしていたものと思われる。


「どうするの? 迂回してもいいけれど」


「もちろん正面突破だ。誰に歯向かったのか教えてやらねぇとなァ……」


 俺は獰猛な笑みを浮かべ、気分よくエンジンを吹かす。

 迂回すると時間がかかる。

 火力に任せて直進するのが一番だ。

 何よりその方が楽しい。

 一国の軍を蹴散らすのはさぞ愉快だろう。


「やっぱりそうなるのね」


 アリスはやれやれと首を振る。

 この流れは予想していたらしい。

 さすがは相棒である。

 意思疎通は完璧のようだ。


「行くぜ。しっかり掴まってろよッ」


 俺はゴーレムカーを発進させた。

 車体が激しく揺れながら、猛烈な勢いで丘を下っていく。

 アクセルをベタ踏みにして、共和国の軍を前にさらなる加速を行う。

 怒涛の勢いで放たれる弾丸のシャワーをものともせず、ゴーレムカーは居並ぶ連中の只中に突っ込んだ。

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