表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第4章 二人の召喚者と迷宮の都市

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

150/200

第150話 爆弾魔は秘密兵器を使用する


「ひあ、ふひぃっ、あはは、はっ!」


 不規則な呼吸と笑いを織り交ぜながら、アヤメは存分に槍を振るってくる。

 時には刺突も繰り出してきた。

 風を切る腕はかなりのスピードだ。

 見切るのが難しくなってきた。


 苛烈な攻撃を躱しつつ、俺はアヤメの顔面に爆弾を押し付ける。

 そこから宙返りで距離を取りながらピンを引き抜いた。


 アヤメの顔面で大爆発が起きる。

 黒煙が晴れると、炎に炙られるアヤメの顔面が見えた。

 額が破れて頭蓋と脳漿が露出している。

 しかしそれも瞬く間に修復された。


「あ、ハハッ!」


 アヤメは嬉々として槍を振るってくる。

 踏み込みは鈍く、まるで素人同然の動きだ。

 スピードだけが冗談のように速い。


 それを紙一重で凌いだ俺はナイフを一閃させた。

 がら空きだったアヤメの両腕の関節を切断し、さらに側頭部を蹴り飛ばす。

 アヤメは地面をバウンドした末に壁にぶつかった。

 彼女は数秒もせずにむくりと起き上がる。


 捩れた首がボキボキと音を立てながら回転し、元の位置に戻る。

 アヤメは口を膨らませると、勢いよく何かを噴き出した。

 回転しながら飛んでくるのは白い小さな物体。

 すなわち彼女の歯だった。


 俺はナイフで弾いてガードする。

 まるで弾丸のような速度だった。

 外れかけた歯を咄嗟に噴き出してきたのだろう。

 ユニークな遠距離攻撃である。


「ははは、多芸だな。次は何を見せてくれるんだい?」


 俺は欠けたナイフの刃を見て苦笑する。


 アヤメは依然として元気だった。

 圧倒的なタフネスを発揮している。

 彼女は何度となく死のうと、平気で起き上がってくる。

 再生能力は絶好調みたいだ。


 それどころか、だんだんと修復速度が上がっている気さえする。

 おまけに完全に気が狂っているせいで、精神的な限界が存在しないのだ。

 普通なら、これだけの苦痛を受ければ心が先にやられる。

 それを考慮しない彼女の戦い方は、非常に厄介だった。


 アヤメとの死闘が始まってから、どれほどの時間が経過したのだろう。

 数分か、はたまた数時間か。

 集中しすぎて時間感覚が失われていた。


 俺は身体の調子を確かめる。

 全身に細かい傷がある。

 アヤメから受けたもの。

 どれも掠り傷で致命傷は一つもない。

 既に塞がりかけているものが大半であった。

 まだまだ戦うことはできる。


 アヤメは変幻自在な攻撃を連発してくる。

 再生能力に任せて、次々と肉体改造しているのだ。

 今のところは対処できているが、それもいつまでも持つか怪しい。


 アヤメは【無限再生 A+】によって際限なくパワーアップしている。

 このままだと、いずれ身体能力で凌駕されてしまうだろう。

 そうなれば俺では敵わなくなる。

 しばらくは戦闘技術でカバーできるだろうが、さすがに限度があった。


(そろそろ来てくれればいいが……)


 俺が考えたその時、地面に開いた穴からひょこりとアリスが顔を出した。

 まさにベストなタイミングだ。

 彼女は俺を見つけると、自信ありげに頷く。

 ついに準備が完了したらしい。

 さすがは俺の相棒だ。

 抜群に仕事が早い。


「ジャックさんっ」


 アリスが声を発した次の瞬間、アヤメが首を動かす。

 彼女はアリスを凝視すると、這うような姿勢から疾走を始めた。

 骨の槍で地面を擦りながら突進していく。


「させるかよ」


 俺は横から両者の間に割り込んだ。

 突き込まれた骨の槍を掴んで止め、アヤメの顔面にエルボーを炸裂させる。

 僅かに仰け反るアヤメ。

 見開かれた両目に、俺は指を刺して眼球を抉った。


「ひぁっ、はははははっはははははははッ!」


 何がおかしいのか、目から血と粘液を流しながらアヤメは大笑いする。

 彼女は骨の槍を離すと、両手を力任せに振り回した。

 伸びた爪が当たり、俺の全身が切り裂かれていく。


「こいつがお気に召さないか? 残念だが止めねぇよ」


 俺は指は突っ込んだまま、負傷も気にせず彼女に圧し掛かる。

 指が刺さっているので、眼球が再生されることはない。

 さらに全力でアヤメを押し倒して動けないようにする。


 純粋な膂力はまだ俺の方が上だ。

 だが、長続きはしないだろう。

 仕留めるなら今だ。

 これが最大のチャンスである。


「アリス!」


「はいっ」


 彼女が何かを投げてきたものをキャッチする。

 それは金属の棒だった。

 先端が平たくなっており、そこだけが赤熱している。


 こいつは焼きごてだ。

 烙印を押すための道具である。

 この焼きごてこそ、アヤメを殺すための秘密兵器だった。


 アヤメの上に馬乗りになった俺は、彼女に視線を戻す。

 突き出された爪は、俺の脇腹を深々と抉っていた。

 喉奥から込み上げるものを感じる。

 しかし、もう関係ない。


「――チェック・メイトだ」


 口端から血を垂らしながら、俺は焼きごてを振り下ろす。

 赤熱した部分が、アヤメの胸部に押し付けられた。

 焼ける音を立てながら白煙が発せられる。

 そして、頃合いを見て焼きごてを引き剥がす。


 焼け爛れた胸部には、円形の魔法陣が刻み込まれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ