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爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第4章 二人の召喚者と迷宮の都市

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第141話 爆弾魔は召喚者達を追う

 俺は屋根の上を跳んで進む。

 背中にはアリスを、空いた片腕は狙撃銃を保持する。

 ひとまずは物陰に隠れたトオルと皇帝を見つけるのが最優先だ。


「武器を呼び寄せるわ」


 アリスがそう言うと、後方からパワードスーツが飛んできた。

 倒壊した洋館の巻き添えになったはずだが、無事だったらしい。


 俺達と並走を始めたパワードスーツからアームが伸び、ひょいとアリスを掴み上げた。

 機体の前面が展開して、そこにアリスが収納される。

 展開部分がロックされると、より人間的な動きで飛行を始めた。

 ものの数秒足らずで、彼女はパワードスーツを装着した状態になってしまった。


 一連の動きを目撃した俺は、思わず苦笑する。


「随分とハイテクだな。いつの間に改造したんだ?」


「暇な時にちょっとね」


 アリスはさも当然とばかりに答える。

 もはやファンタジーというよりSFじみた機能だが、便利なことに違いはない。

 ゴーレムカーに積んでいた武器も使えるので良いこと尽くめだ。


 いくつかの屋根を飛び越えた俺達は、前方にトオルと皇帝の姿を発見する。

 彼らは、巨大な半透明の狼の背にしがみついていた。

 狼はかなりの速度で疾走している。

 通りの人々を驚かせながら、風のように駆けていた。


「おいおい、どこの動物園から脱走したんだ?」


「クガ・トオルの魔力が減っているわ。あの生物は彼が魔術で生み出したようね。傷も止血されているみたいだし、回復魔術も使ったんだと思う」


「なるほどな……」


 アリスの解説を聞いて納得する。

 今まで手の内を見せていなかっただけで、トオルは様々な魔術を習得していたらしい。

 召喚されてから既に数ヶ月が経過している。

 別に不思議なことでもないだろう。


 あれだけの身体能力を持ちながら複数の魔術も扱えるとは、トオルはオールラウンダーなタイプのようだ。

 すべてが爆弾に特化した俺とは大違いである。


 俺とアリスは、トオル達を眼下に収めながら追跡する。

 狙撃銃を構えると、瞬時に察知した狼が回避体勢を取った。

 あれでは発砲しても当たらない。

 それくらいは感覚で分かる。

 弾の無駄遣いができない以上、まだ撃つ時ではないだろう。


 屋根からは下りず、必要以上には近付かない。

 気を抜けば【幻想否定 A+】の射程に入ってしまうためである。

 ここで一発逆転されても困る。

 優位な状態をキープしつつ、確実に仕留めてやらねば。


「あはははっははははは!」


 その時、後方から聞き覚えのある笑い声が響いてきた。

 通りを爆走するのはアヤメだ。

 彼女は見知らぬバイクに跨っている。

 どこかの兵士から強奪でもしたのだろう。


 というか、やはり生きていたらしい。

 トオルが離れたことで【無限再生 A+】が復活したのだ。

 あのまま死んでくれても良かったのだが、意外としぶとい。

 まあ、欲張りすぎるのもいけない。

 彼女は後ほど殺そうと思う。


 アヤメは手から火炎を噴き出して加速した。

 彼女は前方を突き進む狼に追い縋ると、その後脚をナイフで切り付ける。

 しかしナイフは、狼の体表を滑るだけだった。

 武器の質が悪かったようだ。


 次の瞬間、伸び上がった狼の後脚がアヤメを蹴り付けた。

 衝撃で彼女の上半身が消し飛ぶ。

 残骸がバウンドした末に露店に衝突し、辺りを血みどろにした。


「相変わらずだな」


「そうね」


 俺達はそれをスルーして追跡を続行する。

 アヤメなら大丈夫だろう。

 放っておいても復活するはずだ。


「ロケットランチャーを貸してくれ」


「はい、どうぞ」


 俺はアリスからロケットランチャーを受け取り、それをすぐに発射した。

 弾はトオル達の進路上に炸裂し、地面を抉って大きな穴を作り出す。


(躓いて転倒すれば儲けものだが……)


 俺の望みとは裏腹に、狼は地面にできた穴を飛び越えていった。

 そして、通りを曲がって路地へ隠れる。

 都市の門からは離れる方角だった。

 てっきり外へ向かうものかと思ったのだが、どうやら違うらしい。


(これは、もしや……)


 軽快な動きで進む狼を見ているうちに、俺は彼らの目的地を察する。

 このルートはよく知っている。

 一度、俺達が使った道だ。

 路地の先に何があるかも分かっていた。


 やがて前方にレンガ造りの巨大な塔が見えてくる。

 そこは俺達が潜伏していた迷宮であった。

 俺の予想した通りだ。

 狼に乗るトオル達は、そのまま塔の内部へ逃げ込んで消える。


 俺達は迷宮の前で足を止めた。


「ハッハ、以前とは立場が真逆だな」


「皮肉な話ね」


 もちろんここで追跡を中断するなんてことはない。

 冷徹な殺人マシーンのように、連中を地の底まで追い詰めてやろう。

 そして息の根を止める。

 絶対に逃がさない。


「待ってー! わたしも行くよーっ」


 声のした方向を向くと、半壊したバイクに跨るアヤメがやってきた。

 彼女はノーブレーキで迷宮内に突っ込んでいく。

 内部から激しいクラッシュ音と爆発が聞こえてきた。


「頼りになる助っ人だぜ、本当に」


 肩をすくめつつ、俺は意気揚々と迷宮内へ踏み込んだ。

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