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爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第4章 二人の召喚者と迷宮の都市

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第121話 爆弾魔は相棒の冗談に笑う

 俺とアリスは、地上を目指して迷宮を上がっていく。

 途中、生き残りから情報を抜き出して捨てる。

 持ち運ぶのも面倒だ。

 荷物にしかならない。

 人質としての価値もないだろうし、最低限のことだけ吐いてもらった。


 新勢力からの妨害は無い。

 自然発生した魔物と遭遇するくらいだった。

 たまに出会う冒険者も、特に不審な動きをする者は紛れていない。


 さすがに増援くらい来ると思ったのだが、不気味なほど安全な帰り道であった。

 俺を連行しようとした七人だけで、言うことを聞かせるつもりだったのか。

 だとすれば認識が甘すぎる。

 あいつらが殺された時のパターンを想定していなかったのだろうか。

 俺が大人しく従うと本気で考えていたのかもしれない。


 そういう愚か者はどこにでもいるのだ。

 元の世界にだって数え切れないほどいた。

 選択を誤った彼らは、最終的に悲惨な死を遂げる羽目になる。

 今回もそのパターンだろう。


 そのまま何事もなく俺達は迷宮を出た。

 一般の冒険者の中に紛れ、何気ない風を装って宿屋へと向かう。

 まずはゴーレムカーを確保したかった。

 それからどこかへ移動したい。


 宿屋の目前まで着いた俺達は、寸前で足を止める。

 ゴーレムカーを包囲する者達を視認したからだ。

 彼らは殺し屋のような雰囲気を纏っている。

 新勢力の連中だろう。

 俺達の拠点を特定して見張っていたらしい。


 まあ、妥当な動きだろう。

 迷宮内では襲撃してこなかったが、こちらは警戒していたようである。

 彼らはゴーレムカーをこじ開けようと努力していた。


「おいおい、誰に断ってメンテナンスしているんだ?」


 俺が声をかけると、すぐさま一斉射撃が始まった。

 街中だというのにお構いなしである。

 アリスを抱えた俺は、近くの物陰へ転がり込んだ。


 辺りで悲鳴と喧騒が沸き上がる。

 突然の銃声に街の通りはパニックに陥っていた。

 恐怖する人々が右往左往し、やがて付近から逃げていなくなる。


「ははは、連中は派手に殺り合うのが好みらしい」


 俺は拳銃を取り出すと、物陰から腕だけを出して発砲する。

 小さな呻き声に合わせて、誰かが倒れる音がした。

 新勢力の人間が脳漿をぶちまけたのだ。

 目覚ましのアラームより聞き慣れたシチュエーションなので、間違えるはずもない。


「ここで戦うの?」


「ああ、やりたい放題で暴れてやろうぜ」


 アリスの言葉に応じつつ、今度は爆弾のピンを抜いた。

 それを宿屋の方へ投げる。


 数秒後、爆発と断末魔が聞こえた。

 俺は少し顔を出して覗き込む。

 濛々と上がる白煙に、炎上する宿屋。

 新勢力の何人かが、血だらけになって倒れていた。

 反応が遅れて、爆破の直撃を浴びたようだ。


 そんな中、新勢力の一人が鉈のような剣を掲げて迫ってきた。

 仲間の犠牲に焦ったのだろう。

 直進スピードは大したものだが、動きが単純すぎる。

 狙ってくれと言わんばかりの姿であった。


「ハッハ、要望通りにしてやるよ」


 俺は男の額に照準を合わせて拳銃を発砲する。

 剣を掲げるその男は、唐突につんのめって倒れた。

 風穴の開いた後頭部を晒しながら、彼は無様に地面を滑って動かなくなる。


 再び物陰に身を戻しつつ、俺はアリスに相談をする。


「連中にもダメージを与えた。増援が寄越される前にずらかろう」


「全滅させないの?」


「俺がそんな野蛮なことをする人間に見えるかい」


 おどけた調子で尋ねると、彼女はこくりと頷いた。


「安心して。ジャックさんには揺るぎない実績があるわ」


「……まったくその通りだ」


 俺は顔に手を当てて笑う。

 アリスのストレートな物言いがつい癖になってしまう。

 徐々に口達者になっている辺りもいい。


 相棒のノリの良さに笑っていると、宿屋の方角からエンジン音がした。

 見ればゴーレムカーのヘッドライトが点灯している。

 次の瞬間、唸りながら車両が発進して連中を撥ね飛ばした。


 ゴーレムカーは俺達の前で急停車し、乗れと言わんばかりにドアが開く。

 一連の動きはアリスが命令したのだろう。

 彼女はある程度の遠距離からでもゴーレムカーを操ることができる。

 こういった場面において、その能力は破格の使い勝手の良さであった。


「オーケー、ドライブの開始だ」


 俺は助手席にアリスを放り投げた。

 続いて俺自身も運転席へ乗り込み、ハンドルを握ってアクセルを踏む。

 そのままゴーレムカーを勢いよく発進させた。


 後方から連中が射撃を行う。

 弾丸は車体の装甲部に命中し、火花を散らして弾かれた。

 ゴーレムカーに損傷はない。

 何百発と浴びようが平気だろう。


「一瞬だけ自動運転だ」


「了解したわ」


 俺はハンドルを放して車体上部をノックした。

 すると、ルーフが折り畳れて展開される。

 俺は車外に上半身を出した。

 後部座席からロケットランチャーを掴み、肩に担ぐようにして構える。

 狙いはもちろん新勢力の野郎共だ。


「別れの挨拶だ。しっかり受け取りやがれ」


 ロケットランチャーのトリガーを引いて発射する。

 一直線に飛んだ弾は連中の只中に飛び込み、青い炎を伴う爆発を起こした。

 衝撃で連中の大半がミンチになり、辛うじて原形を留める者もズタズタに引き裂かれている。

 下手に避けようとした者に至っては、青い炎に炙られて苦悶していた。


 なかなかなの大惨事に、俺は指笛を鳴らして歓喜する。

 それからロケットランチャーを置き、再び運転席に戻った。


「さすがジャックさんね。容赦がないわ」


「常に全力で生きているからな。見習ってくれてもいいんだぜ?」


「……あなたを見習うと、色々と悪影響だと思うの」


 真顔で言うアリスに、俺はまたもや爆笑する。

 やはり彼女との会話は飽きることがない。

 サイドミラーで青い炎を眺めながら、俺達はその場から走り去った。

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