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爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第4章 二人の召喚者と迷宮の都市

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第115話 爆弾魔は召喚者との再会を望む

 女の爆発を見届けて、ゴーレムカーはその場を走り去る。

 爆風が血肉を花火のように散らしていた。

 とてつもなくグロいものの、俺にとっては見慣れた光景である。

 いちいち顔を顰めることもない。


 ボンネットに腰かけた俺は、破損した車体を一瞥する。


「あーあ、こりゃひでぇな」


 アームが切断されて、フロントガラスにもヒビが入っている。

 走行には支障ないものの、どこかで軽く修理した方がいい。

 素材が素材なので、簡単には手に入らないのが難点か。

 まあ、アリスなら何とかできるだろう。


 俺はボンネットから運転席へ移り、さっそく煙草をくわえた。

 火を点けて吹かし、しばらく沈黙する。

 現在のゴーレムカーは自動運転だ。

 カーチェイス中ならともかく、今はハンドルを握らずとも事故は起きない。

 エンジン音を聞きながら、俺は思考を巡らせる。


「うーん……何かおかしい」


 俺は呟く。

 隣に座るアリスが反応した。


「ジャックさん、どうしたの?」


「どうにも納得がいかなくてな。論理的な話じゃない。第六感ってやつさ」


「さっきの召喚者のことかしら」


「ああ。引き返した方がいいかもしれない」


 どこか腑に落ちないものがあった。

 胸に引っかかりを覚える。

 何の根拠もなく漠然としているが、気のせいだと無視できないレベルだ。


 確かに女は爆殺した。

 俺がこの手でやってやった。

 目の前の出来事だったので、見間違えるはずもない。


 ただ、なんとなく殺した実感が湧かない。

 こういう感覚はスルーすべきではなかった。

 直感に従うことで、過去には幾度も助けられてきた。

 今回もその類に思う。


 俺はハンドルを握ってゴーレムカーをUターンさせた。

 そのまま来た道を戻っていく。

 ものの数分もしないうちに、女が爆発した地点に到着した。

 広大な草原のうち、そこだけが赤く染まっている。

 空気が血生臭い。

 慣れない者は吐くのではないだろうか。


 ゴーレムカーを降りた俺は、辺りを注意深く眺める。

 そして、すぐに違和感に気付いた。


(血痕しか無いな。肉片が消えている)


 つまり爆散した死体が無くなっていた。

 人体の一部も見つからない。

 あれだけの爆発だ。

 弾け飛んだ破片が見つかりそうなものだが、綺麗に無くなっている。


 そこから俺は一人で走って移動する。

 クラッシュしたバイクも消えていた。

 割れた部品がいくつか転がっているだけだ。

 肝心の本体が、忽然と行方不明となっていた。


 俺は思わず悪態を吐く。


「クソッタレ。悪い予感が当たっちまった」


 まんまとしてやられた。

 召喚者の女は何らかの手段で生き返り、見事に逃走したのだろう。

 第三者が肉片とバイクを回収した可能性も考えられるが、ここを離れてからごく短い時間しか経っていない。

 タイミング良く誰かがやってきて、颯爽と回収を済ませたとは考えにくい。


 仮に怪しい者の接近があれば、アリスが感知できるはずだ。

 やはり女が自力で復活して逃走したと考えた方がいい。

 何より俺の直感がそうだと告げている。


 ナイフが首に刺さろうと、ショットガンで撃たれようと女は平然としていた。

 爆破でミンチにしてやれば死ぬと思ったのだが、想像以上にしぶとい。

 やはり召喚者は厄介だ。


 ただ、今はどうしようもない。

 追跡は不可能で、仮に足取りを掴めたとしても殺害手段がない。

 木端微塵になっても死なない相手を、どうやって殺すというのだ。


 拘束するにしても、相手の得体が知れない間はリスクを伴う。

 能力が特定できない状態で無闇に接触するのは危険だ。

 相手が逃走したのなら、こちらも無理に深追いすべきではない。


 俺とアリスは諦めて車内へ戻った。

 運転する俺は考え事をする。


(あの女は、帝国の新勢力の関係者なのか?)


 このタイミングでの遭遇から連想しがちだが、なんとも判断し難い。

 本当にただの偶然という可能性が十分にある。

 ネレアとコンタクトを取っていた参謀は、少年の声だったという。

 さっきの逃走した女とはおそらく別人だろう。


(或いは、二人の召喚者が共謀しているのか……)


 だとすれば厄介すぎる。

 本格的な調査と対策が必要だ。

 迂闊に近付けば、召喚者特有のスキルで痛い目に遭ってしまう。


 もっとも、あの女とはいずれ再会するだろう。

 今回は逃げたが、あいつは俺達を殺すつもりだった。

 まだ機を見て襲撃に来るはずだ。

 これまでの召喚者の中でも群を抜いて好戦的だったので間違いない。


 再会するまでに、俺達も相応の備えをしておこう。

 今度は確実に仕留めてやる。

 目を離して復活させるようなヘマもしない。


「やれやれ、楽しい帝国旅行だ……」


 俺は肩をすくめて苦笑する。

 此度の遠征も、安穏なスケジュールは望めないようだ。

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