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爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第4章 二人の召喚者と迷宮の都市

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第113話 爆弾魔は無謀な召喚者に呆れる

「召喚者……まさかこんな場所で会うとは予想外ね」


「俺もだよ。運命のいたずらってやつさ」


 神妙な面持ちのアリスに、俺は肩をすくめて応じた。

 バイクは依然としてついてくる。


 一体どういうことなのだろう。

 こんな場所で再会するなんて、待ち伏せされていたのか。

 今回は突発的な遠征なので、その線は少し考えにくい。

 やはり純粋な偶然と捉えるべきだと思われる。


(決め付けるには早いが、帝国の新勢力や参謀とは関係なさそうだな)


 とりあえず、距離を取って観察したい。

 今回の召喚者は相手は、かなり好戦的だ。

 こちらの正体を掴んでいるかは不明だが、迂闊に近付くのは危険だろう。


 召喚者はどんな能力を持っているか分からない。

 それが反則すれすれの強力なものであることはほぼ確定している。

 俺を含めると四人のスキルを知っているがどれも一筋縄ではいかない類であった。

 後方の彼女も、そういった能力を有する可能性は非常に高い。


 俺はサイドミラーを確認する。

 バイクで追跡してくる女は、おもむろにライフルを構えた。


「おっと、ヤバいな」


 俺は咄嗟にハンドルを右に切る。

 銃声が轟き、車体後部で金属音がした。

 弾丸が命中したらしい。

 位置からして、タイヤを狙われたようだ。


「ははは、いい腕をしている」


 俺は窓から腕を出す。

 手には拳銃を握っていた。

 サイドミラーを見ながら狙いを定めて発砲する。


 女はバイクを左右に振りながら回避してみせた。

 その間、片手でライフルを再装填を行う。

 弾丸が掠めようとお構いなしだ。

 散発的に発砲しながら、彼女は加速して距離を詰めてくる。


(……随分と戦い慣れしているじゃないか)


 向こうの立ち回りを目にした俺は、少なからず感心する。


 バイクの女は、今までに殺してきた召喚者とは違うようだ。

 ミハナの【未来観測 A+】のように、偶然を繋ぎ合わせたような動きではない。

 純然たる実力で俺と対抗していた。


 あのライフルも特注品だろう。

 よく見ると形状が通常のものとは異なり、片手で操作できるような機構に改造されている。

 つまりこういった戦闘スタイルが得意で、そのための装備を整えているということだ。


 バイクとの距離は三十ヤードほどとなっていた。

 徐々に縮まりつつある。

 ゴーレムカーのスピードを上回るとは、かなりのモンスターマシンだ。

 助手席のアリスも、心なしか悔しそうにしている。


 発砲をやめた女はライフルを下ろすと、空いた手を掲げた。

 手のひらに赤々とした火球が生まれる。


(今度は魔術かよ)


 女は火球を投げ付けてきた。

 かなりの加速でゴーレムカーに迫ってくる。

 まるでミサイルのようだ。


「アリス、頼んだ」


「任せて」


 返答に併せて、車体後部に魔術の盾が張られた。

 そこに火球が炸裂し、軌道が大きく逸れる。

 火球は前方の樹木にぶつかって、派手に爆炎を巻き上げた。

 幹が大きく抉れた樹木は、軋みながら傾いていく。


 ゴーレムカーはその下を潜り抜ける。

 直後、樹木が半ばほどで折れて横倒しになった。

 女はバイクで樹木に乗り上げ、華麗なジャンプを披露しながら追ってくる。


「しつこいな。熱心なファンでもここまでしないぜ?」


「どこまでも追ってくるようね。どうするの」


「殺すしかねぇな」


 俺は即答する。


 このままチェイスを続けても、引き離すのは難しい。

 かと言って、車を停めて正面戦闘を行うのはリスクが高すぎる。

 それこそが女の作戦かもしれない。

 初見で対応できないタイプの能力なら最悪だ。

 場合によっては、ここで死ぬことになってしまう。


 判断材料が少ない現状、ゴーレムカーを走らせ続けながら始末するのが最善だろう。

 あの召喚者は危険だ。

 今までの連中とはわけが違う。

 洗練された動きを見れば明らかであった。

 殺しの中に身を置いた者のそれだ。


 拳銃のリロードをアリスに任せていると、女が片腕を後ろへ向けた。

 次の瞬間、彼女の手から爆発的な勢いで火炎が放射される。

 その様は比喩抜きでジェット噴射だ。

 強烈な推進力を得たバイクは、ウィリー走行で一気に接近してくる。


「ハッハ、嘘だろおい」


 一直線に突進してくるバイクに、俺は思わず笑う。

 減速や調整の気配はない。

 何をするつもりなのか分かったが、さすがにクレイジーすぎる。

 こちらのアクセルは既に踏み込んでいた。

 躱そうにもタイミング的に間に合わない。


「備えろ。来るぞ」


 アリスに忠告したと同時に、ゴーレムカーの後部から強い衝撃が襲ってきた。

 激しい揺れに耐えながら、俺はサイドミラーを確かめる。


 ――バイクがクラッシュして宙を舞い、乗り手である女の姿が消えていた。

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