表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
爆弾魔な傭兵、同時召喚された最強チート共を片っ端から消し飛ばす  作者: 結城 からく
第3章 裏切り者と致死の凶弾

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

109/200

第109話 爆弾魔はさらなる野望を胸に秘める

 数日後、俺は樹木都市にいた。

 今は亡き賢者の本拠地であり、彼の努力の結晶とも言える場所である。


 現在、ここでは大規模な停電が発生していた。

 都市全体が闇に包まれている。

 ぽつぽつと灯りが見えるのは、誰かが自主的に光源を用意しているからだろう。


 俺は中央部にある魔術学園のバルコニーにいた。

 同じテーブルを囲むのはアリスとネレアだ。

 言うまでもないが、リボルバーや弾入りの缶といった物騒な物は並んでいない。

 あるのは紅茶とクッキーくらいである。

 本当は酒とジャーキーが良かったが、女性陣の希望でこのラインナップに決まったのだ。

 多数決に負けた形ではあるものの、彼女達には世話になっている。

 ティーパーティーも嫌いではないので、特に反対することもなかった。


 さて、なぜこんな場所で優雅に寛げるのかというと、この都市を丸ごと占拠したからだ。

 娯楽都市を出発した俺達は、ネレアの私兵を引き連れて樹木都市を強襲した。


 占拠までの過程に大きなトラブルは無かった。

 まずは都市の上層部――賢者の直属の配下達に降伏するように告げる。

 賢者の死体を手土産にするのも忘れない。

 反対する奴らは即座に抹殺し、繰り返し降伏だけを要求する。

 それを何度か実演すると、素直になってくれた。


 反発した魔術学園にも被害が出ていた。

 パワードスーツを着たアリスが空中から爆撃し、見せしめとして塔のいくつかを崩壊させたのだ。

 俺も陰ながら破壊工作と暗殺を行って助力させてもらった。


 随分と派手にやったが、仕方のない処置だった。

 誰が新しい支配者なのかを教えなければいけない。

 これを怠ると、長期的に抵抗される恐れがある。

 今後も反発はあるだろうが、当分は黙認するつもりだ。


 統治には手を出さず、勝手に都市の運営をしてもらう。

 時間経過で従順になるのなら、それでいい。

 便利な土地として有効活用させてもらう。

 叛逆を目論むような連中なら、まとめて爆殺するだけだ。

 大した労力ではない。

 それを実行するだけの備えはあった。


 いずれ他の都市も同様に手に入れる予定だ。

 暗殺王の支配領域はネレアに譲渡するのであまり関係ない。

 今回の一件で代表のいなくなった支配領域は、俺達とネレアがそれぞれ引き継ぐ。

 だいたい折半だ。

 当分は大きな混乱があるだろうが、もたらされる富と権力は大きい。


「なんだかんだで、すべてが順調に進んでいるな」


「ジャック様のご活躍のおかげですわ! わたくし、感謝が尽きませんもの」


 ティーカップを手に呟く俺に、ネレアはここぞとばかりに称賛を送ってくる。

 目的だったエウレアの変革を成功させたことで、彼女はご機嫌なのだ。

 俺と手を組んだことで、それが最速で達成された。

 喜ぶのも無理はない。

 今後も張り切ってエウレアを盛り上げてくれるだろう。


「私も頑張ったわ」


 アリスは少し不服そうに挙手をする。

 俺ばかりを褒めるネレアに異議を唱えたいらしい。

 すると、ネレアが申し訳なさそうに頭を下げる。


「もちろんアリス様のお力添えも忘れておりません。同じ代表として誇らしく思います」


「そう。私も嬉しいわ」


 アリスは満足した顔で応じる。

 その表情から察するに、不服そうなリアクションは冗談だったらしい。

 少し前まではそういったことをしないタイプだったのだが、意外な変化である。

 誰かの影響でも受けたのかもしれない。


 それにしても、女性陣は思ったより仲が良い。

 性格はまるで違うのに、たまに雑談しているのを見かける。

 こういった席でも険悪な感じが無かった。

 互いに過度な干渉をしない性質なので、そこが良い関係を築いているのだろうか。

 何はともあれ、気が合うのは悪くないことである。


「ふむ、そろそろやっておくか」


 甘さ控えめのクッキーを齧りつつ、俺は手元のスイッチを弄ぶ。

 赤いボタンの表面にはドクロマークが描かれている。

 あからさまなビジュアルであった。


 俺は視線を動かす。

 その先には発光する大樹がそびえ立っていた。

 この都市のシンボルである培養された世界樹だ。


 手元のスイッチを入れると、あの世界樹が爆破される。

 世界樹の機能は、都市核と酷似している。

 アリス曰く、カテゴリ的には親戚みたいなものらしい。

 そこの最深部に爆弾を設置した。

 ただ損傷させるのではなく、世界樹のエネルギーを利用できる形にしておいた。

 さぞ愉快な爆発を見せてくれるはずだ。


 ただし、二次被害はそこまで大きくならないように調整している。

 接続設定を弄り、都市全体への魔力供給を遮断したのだ。

 これによって各地の連鎖爆発を防止している。


 樹木都市を瓦礫の山にするのは惜しい。

 俺を裏切るまでは支配領域の一部として活かしたい。


 ただし、都市のシンボルは破壊する。

 賢者の時代は終わったと宣伝する必要があるのだ。

 圧倒的な力を披露しておけば、反乱する気も起きにくいだろう。


 樹木都市の人々とは、なるべく良好な関係を築きたい。

 例えるなら隣人だ。

 祝日のランチで庭先のバーベキューに誘うような仲が理想である。


 ちなみに世界樹関連の資料は回収済みだ。

 城塞都市に帰還したら、さっそく研究を開始する予定である。

 世界樹の培養を再現してみたかった。

 賢者が積み重ねてきた偉業は無駄にしない。

 俺とアリスの目的のために、有効活用させてもらう。


 起爆ボタンに指を添えた俺は、アリスとネレアに確認をする。


「準備はいいか?」


「できているわ」


「ええ、わたくしも大丈夫です! とても楽しみですわ!」


 二人とも即答だった。

 これから何が起こるかも知っているというのに躊躇いが無い。

 どちらも目的のためなら一切の罪悪感を覚えない性格をしている。

 だから協力者として好ましい。

 それに加えて彼女達は有能だ。

 実に貴重な人材であった。


 俺は興奮を抑えながら、ゆっくりとボタンを押す。


 ぐらぐらとバルコニーが揺れる。

 いや、都市全体が地響きに襲われていた。


 世界樹が青白い光を放つ。

 枝の一本に至るまでが激しく輝いていた。

 七色のスパークを発し、それらを天高く光を放出する。


 端々が破裂しながら、世界樹が燃え上がっていった。

 枝から散った葉の一枚一枚が弾ける。

 様々な規模の爆発がまるで花火のように夜空を彩った。


 世界樹は凄まじい勢いで朽ちていく。

 生命力を絞り出すように、光の嵐を起こしているのだ。

 やがて大きな爆発が空に打ち上げられた。

 世界樹に亀裂が走り、縦に割れて倒壊を始める。

 カラフルな火花を飛ばしながら、儚くも枯れていった。


「綺麗ね」


「ああ、最高だ」


「素晴らしいです……」


 想像を絶する光景に、俺達はそれぞれ感想を洩らす。

 余計な言葉はいらない。

 それほどの感動だった。

 視線は釘付けとなり、瞬きの一つすらできない。

 完全に魅入られている。


 賢者が言っていた通り、エウレアという国は変革の時代に至った。

 三人の代表が死に、アリスという新たな代表が加入した。

 これからも怒涛の勢いで状況が変わっていくだろう。

 国の行く末などに興味はないが、後ろ盾として機能してもらうつもりだ。


 召喚者は残り三人。

 固有の能力を持つ彼らなら、どこかで生きているだろう。

 必ず見つけ出して始末してやる。


 改めて決意を固めながら、俺は世界樹が朽ち果てる様を見届けるのであった。

今回で三章は完結となります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ