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第35話 荷物を?


 野宿のための道具などを持って、旅の準備を終えて二人がテオたちの家に戻ってきた。


「というか家を浮かせて持っていくのって、すごい目立つよね。大きいし」


 先程浮かしたときにヒビ割れた地面を見ながら、ジーナが言った。

 背中には大きなリュックサックを抱えていて重そうだが、何も背負っていないかのように歩いている。


「そうね、私たちの後ろにずっと家が浮き続けているのは、なんだか滑稽だわ」


 セリアもジーナほどではないが、大きな荷物を背負っている。

 やはり旅の野宿となると、大きな荷物が必要なのだ。


「テオ君、食料とかは? 準備まだ終わってないの?」


 ジーナは家に入って周りを見渡しても、それらしい荷物がない。


「いえ、終わりましたよ」

「じゃあ荷物は?」

「その、なんというか……」


 テオはうまく答えられずに、ヘルヴィの方を見る。

 つられてジーナとセリアも見て、問いかける。


「荷物はどこなの?」

「ああ、ちょうどいい。外へ出て、荷物を下ろしてくれ」


 ヘルヴィは質問には答えず、二人にそう指示をした。


 不思議に思いながらも二人は外に出て、背負っていた荷物を地面に置いた。


「これでいいの?」


 ジーナは家から出てくるヘルヴィの方を振り向いてそう言った。


「ああ、それでいい」

「で、いったいどうする……」


 問いかけようとしたが、背後で何かが浮かび上がった気配がした。

 振り返ると、自分とセリアの荷物が浮いていた。


「先程の、家をどうやって運ぶつもりだったのかという質問。答えは、こうだ」


 ヘルヴィがそう言った瞬間、二人の荷物は空へと飛んでいった。

 勢いよく上がっていき、目が良いジーナですら見えなくなってしまった。


「え、ええっ!? な、なんで、どこに飛ばしたの!?」

「こ、これも重力魔法よね……や、やっぱり凄いわね」

「セリア、冷静になってよ! 凄いけど困るよね!?」


 自分たちの荷物が飛んでいった現実が受け入れられず、セリアは苦笑しながら空を見ていた。


「落ち着けお前ら、荷物は雲の上に浮かんでいるだけだ。下ろそうと思えばすぐに下ろせる」

「ほ、本当?」

「ああ、私ならあのくらいの荷物をずっと浮かせてられる。これで重い荷物を持たなくて済むだろう」


 そう言われて安堵のため息をつく。


「よ、よかった、いきなり空に飛んでいくからビックリしたよ」

「そ、そうね。食料が入った荷物も浮かんでいるってことね?」

「はい、そうです。僕もいきなり荷物が飛んでいったときはビックリしましたよ……」


 しかしよく考えると、やはり荷物を持たないで旅ができるというのはとてもありがたい。

 ヘルヴィにはずっと魔法をし続けてもらわないといけないが、彼女の魔力量ならこのくらい苦にもならない。


「家も空まで浮かせれば、滑稽なことにはならないだろう」

「家が空まで飛んでいくところを眺めている僕たちの姿が、滑稽になる気がしますけど……」


 先程の重い荷物を飛ばされたときよりも、大きな衝撃を受けそうだ。



 ということで四人は旅の準備を終えたが、何も手には持たずにギルドへと出発の報告をしに行く。


「えっと、お荷物はどうしたのですか?」

「空に飛ばした」

「はい?」


 何も知らないフィオレからは当然のごとく質問を受けたが、ヘルヴィが説明になってない説明をした。

 テオがその後詳しく説明をして、納得してもらった。


「さすがですねヘルヴィさん……キマイラを倒した、と言われたときの方が驚きましたが」

「どちらも特に難しいことではないがな」


 普通の人ならばどちらも不可能なことを、簡単だと言うヘルヴィに頰をヒクつかせながら笑うフィオレ。


「えっ!? ヘルヴィさんがキマイラ倒したんだ!?」


 今のフィオレの言葉を聞いたジーナとセリアが、目を見開いていた。

 キマイラが倒されたというのは噂になっているが、誰が倒したというのは一部の人にしか知られていない。


「……ああ、そうだ。だからそんな大きな声を出すな」

「あっ、ご、ごめんね。誰が倒したって噂になってないってことは、隠してるんだよね?」


 ジーナが口を押さえながら周りを見渡す。

 幸運にも、傭兵ギルドは今ほとんど人がいないので受付嬢たち以外には聞かれていなかった。


 そして受付嬢たちは、ヘルヴィとテオがキマイラを倒す依頼を受けたことを知っている。


「そうだったのね。なら私たちがヘルヴィさんに勝てるわけないわね、キマイラみたいな化け物を倒せるのだから」


 二人はこの世界でも強い方だが、さすがにキマイラを二人で倒せるというほど自惚れてはいない。

 どうやっても負けることは確かだ。


 キマイラ以上に強いヘルヴィに負けるのは、当然のことだった。


「ヘルヴィさんがいるなら、今回の旅はどう考えても安全だろうね。山賊でも悪魔でもなんでも来いって感じ!」

「そうね、楽しくなりそうだわ」


 二人は楽しそうにそう言ってギルドの出口へと向かう。


「ヘルヴィさん、それにテオ君。気をつけて、怪我をしないようにね」

「はい、頑張ります!」


 テオはとても良い笑顔でそう答える。

 そして出口へ駆け出そうとしたが、振り向いてヘルヴィの方に手を伸ばす。


「へ、ヘルヴィさん、行きましょう……!」


 自分から手を繋ごうとするのは初めてなので、顔が少し赤くなっている。


 それを見たヘルヴィはキュンとしながらも顔には出さずに、「……ああ」と言って手を繋いだ。


「ではフィオレ、行ってくる。安心しろ、私は最強だ。傷を一つも負わせずに帰ってくるさ」


 手を繋いだままフィオレにそう伝え、二人は出口へと向かった。



「……傷を負わせない、って、テオ君を本気で守る気満々だなぁ、ヘルヴィさん」


 その様はカッコいいけど、テオにベタ惚れしている感じが可愛いと思うフィオレだった。



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